鍍金事業所と土壌汚染問題

著者: 鈴木 秀男、西島 信一  /  講演者: 山本 王明 /  講演日: 2016年4月18日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2016年05月20日

 

公益社団法人 日本技術士会近畿本部(登録) 環境研究会 会員講演会 要旨

日 時:平成28418日(月) 午後650分~830
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール

演題1:鍍金事業所と土壌汚染問題

講師:山本王明 技術士(環境部門)
    土壌環境管理士、土壌汚染技術管理者、作業環境測定士、化学物質アドバイザー 

1.調査方法を知ろう

1.1 調査対象の物質の選定

調査対象物質は僅かでも取り扱いがあれば調査対象物質にする必要がある。

1.2 調査地点の配置方法

1.3 ボーリング調査

2.土壌汚染事例(事業活動による)

H21年の法改正前は猶予措置があり基準適合するケースもあったが、改正後は調査物質選定などがより厳格になった。H24ガイドライン改正以降はピットも対象になり、深刻な汚染が見つかるケースが増えた。
基準値は
ppmオーダーである。
有害物質が僅かでも含まれた液が土壌に接触すると、すぐに汚染土壌となる。

2.1 汚染物質によって拡散速度が異なる。

2.2 A工場(六価クロム、ふっ素)

2.3 B工場(六価クロム、シアン、鉛、ほう素)

2.4 C工場(六価クロム、ふっ素、鉛、ほう素)

2.5 D工場(六価クロム、鉛、ふっ素)

このうちB工場について詳細な事例説明をしていただいた。

3.土壌汚染事例(事業活動以外による)

3.1 原因不明の表層鉛汚染

原因不明であるが、工業地域や一部都市部の一部地域で、地表面の鉛濃度が高くなっていることがある。
一方、鉛電極が使われたクロム鍍金工場では、使用量が僅かでも、鉛が調査対象となる。鉛の取り扱い場所と汚染場所が違うこともよくあり、事業所以外に起因していることも考えられるが、取り扱いがあるので、行政では事業所が原因と判断される。

3.2 海成粘土層の自然由来汚染

大阪平野や河内平野の海成粘土層では、砒素、鉛、ふっ素の項目について基準値を超過する場合のあることが知られている。

3.3 盛土・埋土汚染等

土地の造成時によく盛土・埋土施工が行われているが、これに用いた土が自然由来で砒素、ふっ素、鉛等について基準を超過する可能性がある。
汚染の可能性が考えにくいにも拘われず、基準値10倍未満の基準不適合が広く分布する場合は、盛土・埋土汚染の可能性を疑う必要がある。
鍍金事業のように僅かでも有害物質の使用がある場合は自然由来盛土汚染とは認められない。また盛土の搬入先が不明でも認められない。

4. 区域指定の種類と土地利用制限

4.1 区域指定の種類

4.2 一般管理区域での形質変更時の制限

飛散を防止するために必要な措置を講じ、汚染土壌が帯水層に接しないようにすること、変更後、措置が講じられない場合と同等以上に人の健康被害が生ずるおそれがないようにすること。

4.3 埋立地管理区域での形質変更時の制限

4.4 自然由来特定区域での形質変更時の制限

4.5 区域指定解除の条件

5. 汚染除去可能性の検討<ケーススタディ>

5.1 汚染除去が可能なケース

地下水汚染がなく、汚染土壌が地下水に接していない場合は、汚染除去が比較的容易である。

5.2 地域によっては汚染除去が可能なケース

地下水汚染がなく、汚染土壌が地下水に接している場合は、地域によって汚染除去の可能性が大きく異なる。

5.3 汚染除去が困難なケース

地下水汚染があり、汚染土壌が地下水に接している場合は、汚染除去費用が高額になり、汚染除去が困難である。

6.提言

6.1 早い段階から取り組む

有害物質使用特定施設が廃止されたときに、法3条調査が必要となる。
工場廃業時に予期せぬ汚染が見つかり工場廃業後の計画に影響を与えることも少なくない。
操業中等早い段階から時間をかけて土壌汚染問題に取り組むことにより、より良い対策方法が見つかり、調査対象費用が縮減される場合もある。

6.2 調査の進め方に工夫を

6.3 汚染の原因を良く考えて取り組む

H25度に指定された重金属等に係る要措置区域等393件のうち195件が原因不明と報告されている。
汚染の原因としては、事業者漏えい、過去の事業者の漏えい、盛土・埋土由来、もらい汚染、自然由来等が考えられる。
汚染が発見された場合、当該地の土地利用履歴調査にとどまらず、周辺地域の情報から総合的に汚染の原因を推察することが重要である。
汚染原因の仮説が的外れだと、詳細調査や対象に悪影響を与える。

6.4 汚染除去一辺倒から汚染土地の有効利用へ

① 汚染土地利用に関するリスク管理の徹底

② 周辺住民とのリスクコミュニケーションを推進する

③ 汚染土地利用に関する技術開発の推進

Q&A

Q:工場のせいだけではなく特に淀川右岸(伊丹台地も含めて)に自然由来の汚染のケースがある。工場が原因か自然由来かの、区別と行政判断をどのようにお考えか?

A:自然由来特例区域に指定されているのが現在のところ大阪駅周辺で、今後自然由来汚染の検討と実態の把握が必要と考える。実際に自然由来による事例があるので今後検討整理されていくものと考える。

コメント

本日は、貴重な講演をいただきありがとうございました。
山本王明さんは、土壌汚染対策法が出来る以前から、私ども有志で土壌診断コンソーシアムを立ち上げて、その時から加わっておられ、したがって土壌汚染対策法が出来る前から、土壌汚染対策に関わってきておられます。              

(作成 鈴木秀男 西島 信一  監修 山本王明)