北九州研修旅行:SLやまぐち号に乗って
著者: 藤井 武 講演者: / 講演日: 2008年09月29日 / カテゴリ: 北九州エコタウン・山口 / 更新日時: 2011年03月03日
北九州・山口研修旅行報告 080929
北九州研修旅行:SLやまぐち号に乗って
藤井 武 技術士(建設部門)
キーワード 観光、SL、環境、旅行、石炭
山陽新幹線新山口駅に到着して在来線を跨ぐ陸橋を越え、在来線の1番線ホームに下りるとすでにSLやまぐち号は入線していて、その優美な5両の車体を曇天の空の下にゆったりと横たえていた。
先頭の機関車両と炭水車両の周りは記念写真を撮ろうとする家族連れや興奮を抑えきれないような鉄道マニアでごった返していた。何年ぶりかに間近で見る蒸気機関車であった。
C571号機、昭和12年建造、常磐線、東北本線、信越本線をひたすら走り続け、昭和47年に現役引退、その後昭和54年の蒸気機関車ブームの到来と共にSL「やまぐち号」として復活運転を再開、新山口~津和野間63.3kmをシーズン中1日1往復、今も走り続けている。
戦前、戦後そして高度経済成長期とそのパワーで日本の経済成長を支え続けてきた勇姿は、外観上は今も健在との印象を受けた。
発車の時間が近づいて列車の中に入ると各客室は前から大正風、明治風、昭和風、欧州風、展望車風のそれぞれ趣の違った5タイプの客車にしつらえられていて、早くも座席の真ん中にあるテーブルの上に弁当や飲み物やお菓子を広げてはしゃいでいるグループも見られた。
我々3人(石塚・小林・藤井)には、往路は昭和風、復路は欧州風の席があたえられていた。いよいよ定刻がきてあの懐かしい発車の汽笛が鳴り響くとSLやまぐち号は、がくんというショックを残してゆっくりと動き始めた。
薄れかけた記憶に残っている昔乗ったSLの振動といささか違うように感じたのは私だけではなかったようで、しゃくるような進み方は動輪の円運動がスムースに行われていないからではないかという見解を小林先生が述べられた。
しかし、それも乗っていると気にならなくなり、途中の駅について停車時間があるというアナウンスが流れると列車を降りて我先に先頭車両まで走って行って写真を撮っている自分に気がつく始末であった。
炭水車両に近づいて石炭を見たとき、昔見ていた石炭と全く色が違うことに気が付いた。
昔見た石炭は真っ黒で黒光りしていたような記憶があったのだが、目の前の石炭は茶色く、所々黄色のような筋もあって、私の石炭のイメージから遠くかけ離れたものであった。「あれは泥炭ではないか。」という見解を小林先生が述べられた。(駅員に聞いたが不明であった。)
旅行を終えて調べてみると石炭には、品位の高い方から無煙炭、瀝青炭、亜瀝青炭、褐炭、亜炭、泥炭があり、日本では無煙炭から褐炭までを一般的に石炭と呼んでいるらしく、果たして泥炭(らしいもの)で走る蒸気機関車があっていいのだろうかという疑問も浮かんできた。
新山口~津和野間には長さ1.5kmの田代トンネルをはじめいくつかのトンネルがあり、SLの旅につきものの煙が、窓を閉めていても客室に流れ込んできていた。それはそれで旅行者にとっては幾分かの楽しさではあるが、沿線の人たちは1日1往復の運転とはいえ、かなり煙の影響、それも質の悪い煙の影響を受けているのではないかと考えてしまう。
石炭の埋蔵量は多く、これからのエネルギーとして期待されている面もあるというのだから、JRはコスト万能主義ではなく、幾分かでも環境に優しいもう少しましな石炭でSLを走らせてもらえないだろうか。そして、C571号機が沿線の人たちにも愛されながら少しでも長く走り続けられるようにしてもらいたいと思ったSL「やまぐち号」の旅であった。
以上