環境モデル都市の説明を聞いて

著者: 渡邊 雄一 講演者:  /  講演日: 2008年09月29日 /  カテゴリ: 北九州エコタウン・山口  /  更新日時: 2011年03月03日

 

北九州・山口研修旅行報告    080929

 

環境モデル都市の説明を聞いて

渡邊 雄一 理学博士 環境カウンセラー
キーワード 環境、モデル都市、北九州。産業廃棄物、風力発電

 

環境モデル都市に選ばれた北九州市の活力を探ろうと思って、今回の研修旅行に部外者にも拘らず参加させて頂いた。このようなモデル都市構想を提案書にまとめるということ、それが採用されたということ、その裏にどのような経緯があるのだろうという興味と今私が属している「エコ三木」という小さな団体がやろうとしている「まちづくり計画」の参考になるかもしれないという期待をもって説明を聞いた。その反面、人口100万の日本を代表する工業都市北九州と僅か8万の金物産業を看板とする農村都市三木市を比べることができるだろうかという不安もあった。

はたして、第一に歴史が違った。公害の歴史があった。「甚大な公害の歴史と苦しい経験を、市民、産業界、行政が一体的に取り組み克服した」という北九州市役所の説明を聞いてなるほどと思った。熊本県水俣市も水俣病をきっかけに環境教育や省エネなどを進めるという構想でモデル都市に選ばれた。その他、牛糞を灯油代替燃料として活用する帯広市森林の保護育成政策を掲げる北海道下川町、公共交通機関の利用促進を図る富山市、市民の省エネ製品購入を促す「環境ポイント制度」を導入する横浜市の合計6自治体が平成20年7月22日に環境モデル都市に選ばれた。

地域が内蔵する諸資源、諸問題と居住する市民の問題意識とそれをまとめた行政の手腕、企業の活力が見えてくる。計画は計画として、私はそれを実行する組織と、組織をどのように運営するかに特に関心があったので質問した。環境首都推進室太田係長の答えは「5年間のアクションプランと2050年のイメージ作りのための関係部署をすべて入れ込んだ地域推進会議をこれから作っていく」ということであった。このような組織がどのように機能していくかを私は是非見たいものだと思う。とかく計画の達成にはハードウエアーと数字による報告が多く、本当に地域が活性化されたかどうか、数字や形に現れないエネルギーが見えてこないことが多いように思う。

北九州エコタウン事業はさすが工業都市と思わせるものがあった。しかし廃棄物を有価物に変えるという事業は総合システムが伴わなければ実現困難なのだという感を新たにした。食品廃棄物エタノール化リサイクルシステムでは、工場の見学はできなかったが、担当者の説明を聞く限り技術的にはうまくいっているように感じた。この事業の問題点は原料である「生ゴミ」にあることは容易に推察できる。原料の品質管理が極めて難しい。ゴミを出す市民の問題意識に大きく依存する。加えて規模を拡大した場合生ゴミを集荷する範囲が広がる。集荷コストが上昇する。筆者が居住する三木市にはコープこうべが自慢する「土づくりセンター・エコファーム」があり、近隣コープこうべ店舗で発生する生ゴミを堆肥化して農園を経営し、収穫した野菜類を店舗で販売していて、大変評判が良い。しかし集荷する生ゴミは限られた店舗からのみで、規模の拡大はいろいろな点から難しいらしい。廃棄物を有価物に変える技術は比較的簡単に開発されるが、規模を拡大するには社会システムの大きな変換が必要であろうと、傍観者ではあるが常々感じている。

出力1,500KWの風力発電機が10基並んだ海岸は迫力があった。1万所帯の電気をまかなっているという説明があったが、帰宅してホームページを見ると年間供給予定量3,500万KWH(約1万世帯分の年間電力消費分に相当)ということで実績ではないということがわかった。風力発電所の発電効率=設備利用率=年間発電量/(発電機出力×年間時間)から計算すると26.6%となり、条件がよほど良いところでも20%位といわれているのに比べかなり高い。年間発電量の実績が知りたいものだ。風力発電所の設備利用率実績は調べてもよくわからない。何ヵ所かの風力発電所を見学していつも疑問に感じながら、今回も同じ疑問を持って風車を仰ぎ見た。

菜の花プロジェクトについても質問した。筆者の周辺にもバイオディーゼル運動に熱心な人が多い。実に頭が下がる思いであるが日本での産業としての見通しに疑問を持っていたが、北九州市の「環境教育のカテゴリーに入れている」という返事に納得がいった。色素増感型太陽電池への取組みがパンフレットに出ていたので聞いてみたが不明であった。大学での研究を掲載したらしいが、化学屋として関心を持っている。いつか模型を作りたいと思っている。

北九州エコタウンが素晴らしいという話は耳にしていた。確かに私の周辺にないものが大きな実体として動いていて、そのエネルギーを感じた。同時に問題点も体感できた。今後の発展を期待しよう。

末筆ながらお世話をしてくださった山本様をはじめ技術師会の皆様に感謝の意を表し、報告書を完結したいと思います。


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