北九州エコタウン事業所見学

著者: 竹下 常四郎 講演者:  /  講演日: 2008年09月29日 /  カテゴリ: 北九州エコタウン・山口  /  更新日時: 2011年03月03日

 

北九州・山口研修旅行報告  080929

 

北九州エコタウン事業所見学

竹下 常四郎  技術士(機械)

 

本年7月横浜市と並んで大規模環境モデル都市に認定された北九州市北部に位置する、北九州エコタウン事業所の見学を去る9月29日に行った。
ご存知のように北九州市(小倉市、門司市、戸畑市、八幡市、若松市の5市合併)は、1901年 旧八幡製鉄所設立以降、「ものずくり」の街として発展してきたが、1960年代になって産業公害が発生し、その後「市民・企業・行政」が一体となって公害を克服し、北九州方式を確立した経緯をもっている。

ここで取り上げた食品廃棄物エタノール化(リサイクルシステム)実験事業は、我々の生活で日々恒常的に発生する食品廃棄物(生ごみ)の有効活用の一つの方向を示している。この課題は地域レベルで対応を求められていると同時に、全国の市町村が抱える共通の問題でもある。

1.エコタウン事業の内容

工場種別
①リサイクル工場(ペットボトル、家電、OA機器、廃プラ、廃木材、非鉄金属等)
②リサイクル・リユース工場(発泡スチロール、OA機器等)
③地元中小企業・ベンチャー企業 
④風力発電、食品廃棄物エタノール化施設、大学・企業等実証研究エリア(エコタウン内に設置)

2.食品廃棄物エタノール化(リサイクルシステム)実験事業の概要

本実施事業はNEDOバイオマスエネルギー地域システム化実験事業7種(森林、草本系、木質、メタン発酵、食品廃棄物エタノール化、他等バイオマス)の中の一つである。

(1)実験システム及びフローの概要

① 実験システム:実験プラントは、新日鉄エンジニアリングがNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託を受け設置し、平成17年2月より5年間実験運転を行い、この間収集した食品廃棄物10/日を利用し、395L/日のエタノールを製造する。

② 実験プラントフロー:分別・収集・運搬 ⇒エネルギー転換・利用(前処理:生ごみと夾雑物分離)→ 糖化→ 固液分離)⇒ 濃縮 エネルギー転換・利用(発酵)⇒ 蒸留・膜分離(無水エタノール製造量397L/日)⇒ 搬出 ⇒  エネルギー製造(=E3ガソリン製造)。

(2) 分別・収集活動

生ごみの分別排出・収集を推進するため、市では環境パスポート事業(NPO法人)と協働し実施している環境パスポート事業とは、環境保全に登録した市民を対象に

排出者識別バーコードを収集袋に貼付(カンパスシール)
収集時にバーコードリーダーで排出者を認識
排出者に地域通貨ポイント(カンパスカード)を付与」している。回収に際して、分別収集

拠点まで委託業者が、小規模排出事業者・モデル小学校・病院・商店街及び家庭生ごみの回収を実施し、大規模事業者食品廃棄物分別収集については分別した食品廃棄物と可燃物等を区分けし同時に運搬できる「2室分別収集車」を作り回収を実施。

① 分別・収集の課題
エタノール化は、お米や小麦などを原料とするパン、うどんなどが理想的だが、可燃ごみの約3分の1を占める生ごみは、魚や果物など時間経過により腐敗して悪臭が発生し易いものが多いことから、分別作業を素早くシンプルなものにする必要がある。
生ごみを効率よくエタノール化するためには、食品以外のものとの分別(例:貝殻、骨類等)をより厳しくすることが求められる。

② 成果
収集した生ごみでエタノールの製造・成分評価を行い、このエタノールとガソリンを混合し製造したE3ガソリンの有効利用を計る。今後E3ガソリンはカーボンニュートラル特性をもつため、市公用車及び新日本製鉄の関連車両などに試験的に使用する予定。

備考:E3ガソリン=「ガソリン+エタノール比率3%」をラインミキサーで混合し製造する。


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