見学・講演会<亜臨界水処理を前提とするメタン発酵>
環境研究会 見学会 050121
(日時) H17年1月21日
(場所) 大阪府立大学構内
(講演名) 亜臨界水処理を前提とする高効率メタン発酵
(講師) 大阪府立大学大学院工学研究科 物理系専攻 化学工学分野 吉田 弘之教授
はじめに
○ H13年産業廃棄物の排出量:4億トン
(業種別) ①電気・ガス:23%、②農業:22.6%・・・
(種 類) ①汚泥:50%(殆どが有機物)、②動物糞尿:22%(合わせて70%強)・・・
プラスチックは僅か1.4%
○ 堺市のゴミ組成――約1㎏/人・日(全国平均並み)
紙:47%、プラスチック:15%、繊維・布:5.5%
○ 産業廃棄物:4億トン/年、一般廃棄物:5千万トン/年 合計:4.5億トン/年
○ 上記の内70数%が有機廃棄物
・ 内大部分が焼却、埋め立て。
・ 大量の重油を使用し、大量の二酸化炭素を発生させている。
・ コンポスト(肥料)にする手もあるが、食料自給率25%の日本では肥料を吸収する農地が絶対的に不足。又肥料の品質上の問題(有害物の混入)もある。
・ これらを資源化すると地球環境が改善される。
○ ゼロエミッションの考え方(ビール業界の例)
別の利益の出るものに変換していくやり方を採用。(既存技術、新技術の組み合わせ)
研究の内容と方向性
○ COEに採択、H14年に有機性廃棄物(3.5億トン/年程度)を無くす有効利用にトライ
○ 有機廃棄物 → 亜臨界水(数分程度で分解)→ 油抽出(残渣は殆どゼロ)→ 分離(コストがかかる)
・ 分離価値のあるもの → 様々な有価物(燃料、潤滑油、薬品等)
・ 分離価値のないもの → メタン発酵(メタン取り出し)→ 残渣(活性炭等)
○ 生体有機物 → 亜臨界水 → 有機物(加水分解により水溶性のタンパク質)+油+骨
○ 鰺(あじ)の亜臨界処理
・ 骨:250℃×10分 → 骨の粉(有価物)+有機物(有価物が多く取れる)
・ 肉:200~400℃ → 油
--- 残るはコストの問題
○ メタン発酵(従来)
・ 固体状有機廃棄物 → 微生物(17~18種程度の微生物の共同作業)→ 低分子化(30~60日)→ 酢酸等 → メタン
・ 消化率:30~50%
・ メタン発酵採択率:26%
・ 他は脱水(高コスト)
(焼却処分はエネルギー回収無し)
○ 亜臨界水処理後にメタン発酵
・ 固体廃棄物 → 亜臨界水(1~30分,通常10分)→ 加水分解 → 低分子有機酸等 →メタン発酵 → メタン
・ 消化率:90%越え
・ 残渣処理不要
・ 排水処理大幅縮小
○ メタン・水素→地域分散型発電システム→エネルギー
○ 魚のあら(市場への入荷の45%)→ 亜臨界水(加水分解)→ 固液分離 → 油水分離 → イオン交換分離
・ 固液分離:骨・リン→カルシウム,ボンチャイナ,電子材料,リン酸製造プロセス
・ 油水分離:油 → 超臨界二酸化炭素分離 → DNA・FIA等の有価物,食料,食用油,石油等
・ イオン交換分離:溶液 → 乳酸(→生分解プラスチック),アミノ酸,タンパク質
○ 亜臨界水について (同じ容器に液体を封入密閉状態で昇温した時の密度)
臨界水 :臨界点以上の高温高圧水
亜臨界水:100℃以上、臨界点以下
○ 水の相について
○ 亜臨界水の性質
① 水のイオン値が250℃付近で最大となる
・超臨界水と異なり、酸化が殆どないため二酸化炭素迄分解しない
② 水の誘電率は温度の上昇とともに小さくなる
・ 油と同じ性質を示す
・ 油分をほぼ瞬時に100%抽出する
③ 臨界点に近づくに従い、加水分解力が衰え、熱分解力が強くなる
→ 上記①②を上手に使いこなすといろんなことが出来る
運用試験
○ 魚あらの試験(費用比較,1年当たり)
焼 却:130万トン×6.5万円/トン=845億円(コスト)
亜臨界水処理:577億円(売上)-110億円(エネルギーコスト)=467億円(儲け)
○ 下水汚泥の亜臨界水処理
汚泥 → 亜臨界水処理 → 分離(有価物)→ 高速メタン発酵(分離後)→ メタンガス →メタンガス発電(日本の電力の0.3% ← 水力発電:1%)
○ 余剰活性汚泥の亜臨界処理
・ 280℃×10分で可溶化
・ リン酸、ピロタミン酸、酢酸が主流(ピロタミン酸、酢酸はメタン発酵へ)
○ 亜臨界処理を行なうとメタン量が亜臨界処理をしない場合(微生物処理)の8倍得られる。しかも約数時間でメタン発生完了
○ 設備
連続処理、スーパーヒートポンプ等
(Q&A)
Q 亜臨界水の定義は
A 温度:250℃以下,圧力:30気圧以下
Q 動物分野の話が多かったが植物の場合はどうか
A 動物だけではなく、植物の分解も可能。但し、植物は固いため300℃で処理。
Q 有機廃棄物分解について実用性についたはどうか
A 安い分離方法を検討していく必要がある。また、高く売れるもののみ分離し、残りはメタン発酵と考えている。
Q 特許についてはどうか
A 大阪TLOより特許申請中(11件)。なお、日本独自(大阪府大独自)の技術である
Q 共同取組み企業は
A 2社(つきあい始め数企業)← 現時点では更に増やしていきたい意向
Q 実用性についてはどうか
A バイオマスは金をたくさんかけているが殆どが研究室単位の取組みである。
なお、研究プラントの設備費は
・ パイロットプラント(4トン/日,亜臨界のみ)のイニシャルコストが数千万円
・ NEDOの補助金で設置
文責 山崎 洋右