環境技術開発のきのう、きょう、あす
環境研究会 第29回 特別講演会報告 051219
日時:2005年12月19日
演題:環境技術開発のきのう、きょう、あす
講師:松村雄次様
1967年京都大学工学修士修了後、大阪ガス入社、2002年代表取締役副社長、2005年7月より(株)KRI会長。エネルギー資源学会副会長、日中科学技術協会副会長など学協会役員多数。
内容
大阪ガスは1975年から1990年まで環境に優しい天然ガスへの転換を実施した。大阪ガスは「環境行動はエネルギー事業者にとって事業活動そのものという基本的な考え方のもとに推進している。具体的には大阪ガスグループ環境行動指針の3つの柱よりなる。
①事業活動における環境負荷低減
②製品・サービスを通じての環境負荷低減への貢献
③地域および国内外における環境改善
1.事業活動における環境負荷低減
ガス製造所でのCO2発生量は都市ガス1m3当り、1990年から2000年の10年間で燃料を天然ガスに転換することで74%削減した。その後の5年間で、LNGの冷熱利用発電などで更に11%削減した。ガス管の浅埋設化、非開削工法(地中にトンネルを作りガス管を敷設する工法)の開発や掘削土の再利用技術(掘削土に改良剤を加えて再利用、又アスファルトは溶融して回収し再利用する技術)の開発などで、従来工法と比較して最終処分土量を大幅(△97%)に削減し、大部分は再利用している。
2.製品・サービスを通じての環境負荷低減
お客様先でのCO2発生を、コージェネ、空調用、工業用省エネ機器の開発販売により、2004年度126万トン削減した。代表的なものは、高効率ミラーサイクルエンジン(給排気弁の開閉タイミングをずらして効率アップ)コージェネ、バイオガス等低発熱量ガス対応ガスエンジンコージェネ、家庭用の1kwエンジンコージェネ(商品名エコウイル:販売実績1.8万台)、燃焼排ガス中の水蒸気凝縮潜熱回収型給湯暖房機、工業用リジェネレーションバーナ(同一炉にバーナと蓄熱体を2セット取付け、交互に燃焼させ、排気で蓄熱体を温め、吸気に移すことで35%効率アップ)など。又、環境に優しい天然ガス自動車も大型業務用を中心に全国で2.4万台、天然ガス充填所も288箇所となった。
3.地域および国内外における環境改善
天然ガスの特性を生かした技術として、トリジェネレーション(発電、廃熱利用、排ガス中のCO2をアルカリ廃液の中和に利用)、活性炭利用の脱硫触媒。水素関連では、水素供給ステーション、コンパクトな水素発生装置。バイオガス利用技術として、発酵メタンガス利用エンジンコージェネ。海外での貢献としては、豪州での植林やインドネシアで植物の根に寄生し、養分吸収を助けるVA菌根菌による熱帯酸性荒廃地での天然林再生などがある。
4.その他の大阪ガスでの環境関係の 開発中の技術
以下の最新技術開発の状況について説明があった。
①混合が困難なポリエチレン管の廃材とPETボトル廃材の相溶化技術
②マイクロカプセルを利用した潜熱搬送材
③圧縮自着火ガスエンジン
④固体高分子型(PEFC)及び固体酸化物型(SOFC)コージェネ
⑤ジメチルエーテル(DME)燃料電池
⑥バイオガスコージェネで発生するシロキ酸除去技術
⑦生分解性プラスチック(PHP:ポリヒドロキシブチレート)
⑧湿式排水酸化処理技術
Q&A
Q:電気ヒートポンプに比べて、ガスヒートポンプの優位性は?
A:きめ細かい制御ができる点がセールスポイントである。
Q:マイクロガスエンジンのみならず、タービン・コージェネの開発はしていないか?
A:エンジンコージェネに勝てないものは検討していない。
Q:潜熱利用湯沸器の排ガス中のCO2やNOxによる腐食に対する耐久性は大丈夫か?
A:現在ではステンレスで耐久性を確保できる。
Q:コージェネの方式として、エンジンと燃料電池の競争は何時まで続くか?
A:住み分けがあるだろう。熱負荷の高い顧客はエンジン、電気負荷の高い顧客は燃料電池。PEFCは反応温度が低く、温水温度は60度C程度まで。エンジンなら80度CでもOK。
Q:原油が80ドルになった時にガスの価格はどうなっているか?
A:原油に比例して上がるが、上がり方は少ない。家庭の暖房は、北海道では灯油暖房で年間20万円以上。関東関西ではガス暖房で年間5万円程度。家計への負担とコンパクト性、利便性からガスが普及。
所感
ガス業界の環境関係の技術開発の経緯を総括的に説明された後、最先端の開発状況を図解入りで詳しく説明頂いた。又、質疑応答では、参加者から日頃エネルギーに関して疑問に思っていることについて掘り下げた質問が出たが、本音の回答があり、説得力のある内容で、ご満足いただけたと思う。
(文責:末利銕意)