バイオガスの現状と今後の課題について

著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 久米 辰雄  /  講演日: 2008年11月20日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

【環境研究会第41回特別講演会】★ 081120

日 時:平成201120日(木)

 

テーマ:バイオガスの現状と今後の課題について

講 師:久米 辰雄氏 大阪ガス株式会社 エネルギー技術部エグゼクティブエンジニア

●プロフィール:1978年京都大学大学院化学工学修士課程終了後、大阪ガス株式会社に入社。天然ガス転換の燃焼技術対策、工業炉、バーナなどの技術開発を担当後、廃水処理などの環境技術システムの設計・開発などエネルギー・環境技術システムを担当。

 

1.はじめに

地球の人口は、2030年には、現状の65億人から80億人に増加(23%)し、エネルギー使用総量も66%増となり、CO2の濃度が現状の380ppmから450ppmに増加し、地球の平均温度も現在より1.8%上昇する。そのため、早急にCO2排出の少ないエネルギーへのシフトが必要である。

2.第1世代のバイオ燃料には限界

都市部・農村部でのバイオガスの重要性の背景には、1980年代後半からの各種リサイクル法の制定やダイオキシ特別措置法の制定等により、水分の多い生ごみや汚泥の焼却処分が難しくなってきたことがある。 又、中長期的には、化石燃料の枯渇への対応が必要である。
第1世代のバイオ燃料は、サトウキビ、とうもろこし等の糖やでんぷんから製造するが、耕作面積の制限から、生産量に限界があるとともに食料との競合問題、CO2排出面からも疑問視されている。例えば、ドイツでは、バイオ燃料をエネルギー作物から作る新規プロジェクトをストップさせている。

3.バイオガスの特徴

再生可能エネルギーは環境税、CDMの観点からも重要で、中でもバイオガスが世界的に注目されている。バイオ燃料は、石油、天然ガス代替として既存インフラが流用可能で、バイオガスは、都市部で大量に入手可能な再生可能エネルギーである。有機性廃棄物を生物学的にエネルギー転換してから得られる燃料ガスの原料は下水、食品排水、生ごみ等の発酵可能な有機物資源で、バイオガスの組成はメタンが約65%で、残りはほとんど二酸化炭素である。

4.バイオガスの製造

バイオエネルギーは発酵させバイオガスにするか、乾留ガス化するのが有利である。海外では農村などで家畜糞尿のバイオガスが増加している。消化は活性汚泥の処理より省エネルギーにつながる。

5.バイオガスの品質とその利用

バイオガスは組成が安定せず、不純物も多いことからこれまで下水分野では、汚泥焼却炉やボイラーの補助燃料に使われ、食品工場ではボイラーの補助燃料か放流パージされていることが多かったが、最近技術開発が進み、コージェネや自動車の燃料として注目されてきた。
バイオガスの発熱量は6,1887,616 kcal/Nmに対して、天然ガスでは10,750kcal/Nmと、燃焼性が違うが、ドイツ、オランダ等ではバイオガスを既存パイプに注入し輸送、使用している。
一方、バイオエタノールはガソリンに混ぜて使用が進みつつあるが、酸性であり、既存のローリーでは運べないなど、普及には工夫が必要である。

6.バイオガスの発生量、組織の変動についての配慮

バイオガスの発生量は、排水の組成や排水量、排水温度によって変動する。
通常、バイオガスは、排水量に比例して、コンスタントに発生するが、もし排水供給がストップすればガス発生量は数時間後に減少する。又排水の有機物濃度が大きく変動した場合、バイオガスの濃度や発生利用は変動する。

7.バイオガスの不純物の問題

シロキサンはSiO2となり、スパークプラグに付着したり、シリンダー内部や吸排気弁に付着し、ガスエンジンが動かなくなったり、エンジン損傷につながる。硫化水素は燃焼して硫酸となり、腐食やエンジンオイルの劣化の原因となる。水分についても管理が必要である。
高効率バイオガスガスエンジン対応技術例と
して、以下のようなものがあり、利用を支えている。シロキサン、硫化水素、水分が問題となる。

①バイオガス、都市ガス0100%の範囲で任意に切り替えできる機能搭載
②ガスの組成変動対応と安定燃焼のためのダブルイグニッション機能
③バイオガスの熱量変動対応技術がある

8.海外でのバイオガスの利用状況

EUではドイツ、イギリス等を中心にランドフィルガス、下水、農作物残さ、産業廃棄物以外に、すでにトウモロコシなどのエネルギー作物からのバイオエタノール製造やメタン発酵が進んでいる。特にドイツ、オランダ、スウェーデンではバイオガスは都市ガスの原料としてガス管注入や自動車利用がはじまっている。ドイツではコージェネレーション設備で高効率発電し、エネルギーを有効利用する場合、電力の買い取りに対して優遇制度がある。また、スウェーデンではバイオガスによる自動車利用、地域熱供給利用が多く、バイオガス燃料が54(2006)で化石燃料である天然ガスを越えており、バイオガスの製造に熱心である。

9.最後に

エネルギー需要は増加し、低炭素社会構築は必須となる。更に再生可能エネルギーの重要性はますます増加し、特にバイオマスエネルギー、中でもバイオガスの重要性が増す。日本には高度な技術はあるので、バイオマス利用のための法規制緩和基準制定が必要で、欧米並みの補助など経済的なスキームが重要となってくる。

 

質疑応答

Q:バイオガス自動車の将来性は?

 →日本では進んでいないが、ロシアではNGVが100万台使われており、バイオガスに転用できる。世界的には可能性がある。ドイツはロシアからエネルギーを輸入するより、自前のエネルギーを確保する努力を続けている。EUのエネルギー指令では、自動車用として8.8%バイオガスの使用を目標としている。

Q:石炭層にCO2を注入してCH4を回収する技術の見通しは?

 →欧州では本格的に実施されている。油田やガス田では収量を上げるためにすでにCO2を注入している。

Q:家庭用ゴミをディスポーザーを設置して下水に流す方法は?

 →下水道で硫化水素の発生があったり、魚の骨や卵の殻が詰まったりするトラブル例がある。また、合流式の下水では大雨が降ると処理ができないのが問題である。

 

コメント 

バイオエネルギーは再生エネルギーとして欧州を中心に注目され、利用が広がっていることが広範な資料をもとにした説明を通じて実感できた。

     (監修:久米辰雄  作成 山崎洋右、山本泰三)


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