山口・北九州研修旅行報告会

著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 安ヵ川常高、藤井 武、  末利 銕意、森 和義、  小林 廣、  藤橋 雅尚、竹下常四郎  /  講演日: 2009年01月23日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

★ 【環境研究会報告会】 090123

      日 時:平成21123日(金)

 

テーマ:山口・北九州研修旅行報告会

 

1.はじめに

2008928()に山口、29()に北九州の研修旅行を実施した。今回は、参加者それぞれに興味のある幅広いテーマを取上げてレポートを書いていただき、その報告と質疑応答を実施した。なお、各発表者からの詳細報告も参照願いたい。

2. 1日目:岩国コースとSL山口号コース

(1)錦帯橋橋脚と穴太(あのう)積み技術伝承安力川 常孝

錦帯橋と岩国の町割を世界遺産候補として提案したが、継続審議になっている。その理由のひとつに、吉川広嘉が建設した当時の橋脚は石材を空積みした穴太積みであったが、昭和259月に発生したキジア台風の洪水により橋脚二基が崩壊し流出した。その修復に穴太積みでなく、コンクリートで内部を補強したことが真実性にかけるとされ、再検討の課題になっている。穴太積みとは、割り石を使わず天然の石をそのまま使って、外観より堅固ということに重点を置いて積み上げる。建物の土台に使うか、石垣だけにするかによって積み方も違う。
石垣の場合は壁面を大きく見せるように石を配置し、内部に栗石を使い、圧力を食い止め、排水が容易になるよう目に見えないところに力を入れる。従って栗石を入れるには大石を配置する2倍の時間をかける。石を配置するときは、石の大きな面が外に出るように工夫しながら一部の隙間もないように組み合わせる。こうすると敵が石垣をよじ登るとき、手がかかっても足までかけることが出来ないようになる。勾配を作るにも、あまり石をねさせない。勾配をつけた方が崩れ方が少なく、要塞にもなるので近世の城はみんな勾配がつけられている。

(2)S Lやまぐち号に乗って(藤井 武)

C57-1号機、昭和12年建造、常磐線、東北本線、信越本線をひたすら走り続け、昭和47年に現役引退、その後昭和54年の蒸気機関車ブームの到来と共にSL「やまぐち号」として復活、運転を再開、新山口~津和野間63.3kmをシーズン中11往復、今も走り続けている。
石炭の埋蔵量は多く、これからのエネルギーとして期待されている面もあるというのだから、JRは石炭品質の一番悪い泥炭を使う様なコスト万能主義ではなく、幾分かでも環境に優しいもう少し品質の良い石炭でSLを走らせてもらえないだろうか。そして、C57-1号機が沿線の人たちにも愛されながら少しでも長く走り続けられることを祈る次第である。

 

3. 2日目:929日(月) 北九州市の取組とエコタウン施設見学

(1)北九州市の産業政策とエコタウン見学末利 銕

1901年官営八幡製鉄所が開設し、「ものづくり」の街として発展したが、1960年代の激甚な公害を経験し、市民・企業・行政が一体となって克服。1980年代に環境国際協力を推進(海外技術者の受入れと専門家の派遣)。1990年国連環境計画から日本の自治体初となる「グローバル500」及び1992年国連環境開発会議(地球サミット)で「国連地方自治体表彰」を受けた。北九州市は活気がある。北九州市の環境関係の職員の方々が、明るく希望に満ちて仕事に励んでいると感じた。事実、響灘エコタウンには25を超えるエコ事業所が林立しており、活発に事業活動をしている。

(2)環境首都北九州の海外への取組み(森 和義)

九州に来ると、九州人のアジアに対する熱い思いに感心させられる。最もアジアに近い場所にいることの責任感として、アジアとの架け橋にならなければならいとの思いであろう。あるいは、実利的にも、交易・交流での優位性を生かしたいとの願いからもあろうか。今回、北九州市から説明を受けた内容には、環境モデル都市として、海外への取組みが、中核に位置づけられている。「都市構造」「産業構造」「人財育成」「文化の創造」「アジアへの貢献」という総合的なアプローチのもと「アジアの低炭素化に向けての都市間環境外交のあり方」を提示するとしている。本来なら、国レベルの課題とすべき内容を、一都市が担ってやろうという心意気が感じられる。

(3)PCB処理設備見学報告(小林 廣)

PCBは、1929年アメリカで始めて製造された。当初は最も無害と考えられていたが、1957年に鶏がPCB100万羽死ぬ事件等、1950年代~60年代にPCBに関する被害が出てきた。にもかかわらず、PCBの事件に関しては農林省も警察も動かず、新聞も書かなかった。その結果、PCB被害者は長らく放置されてきた。現在PCBは、把握出来ている量が5万4千トンで全体の7080%。残りは、地球上のどこかに流出している可能性がある。現在は、北九州エコタウンの他、計5箇所でPCBを処理しているが、処理には2兆円近い公費と20年近い年月を要する。

(4)飲みたくならないアルコールを作る話藤橋 雅尚

食品系廃棄物の利用法として、最も好ましいのは食料または飼料として再利用することである。しかし、生ゴミでは腐敗の問題が障害となり、一旦生ゴミとなったものは肥料としての利用が提唱されている。しかし生ゴミの生産地(都市部)は、肥料の消費地(農村部)に遠いことと、含まれている塩分が長期的に見ると作物の生育の障害になることなどから、全面的な利用には至らないといわれている。
次の方策として、熱回収がある。そのまま燃やす方式は発熱量が小さくて効率が悪いため、乾燥処理して熱源に供す方法や、生ゴミをメタン発酵しメタンを熱源として利用する方法がある。メタンは気体であり輸送面の制約から生産場所(処理工場)の近辺で大規模な消費システムを構築する必要がある。ゴミ固形燃料(RDF)については一部実用化が進んでいる。
エタノールに加工する方法は、製品が液体のため生産地から消費地への移動が容易であるというメリットがある。生ゴミから製造したエタノールを人間は飲みたくならないが、自動車は飲んでくれるので今後の研究に期待したい。

(5)北九州エコタウン事業所見学と生ゴミ処理(竹下 常四郎)

生ゴミのエタノール化は、お米や小麦などを原料とするパン、うどんなどが理想的だが、可燃ごみの約3分の1を占める生ごみは、魚や果物など時間経過により腐敗して悪臭が発生し易いものが多いことから、分別作業を素早くシンプルなものにする必要がある。生ごみを効率よくエタノール化するためには、食品以外のものとの分別(例:貝殻、骨類等)をより厳しくすることが求められる。収集した生ごみでエタノールの製造・成分評価を行い、このエタノールとガソリンを混合し製造したE3ガソリンの有効利用を計る。今後E3ガソリンはカーボンニュートラル特性をもつため、市公用車及び新日本製鉄の関連車両などに試験的に使用する予定。

(6)その他

響灘に10基の風力発電施設があり、自然エネルギーについて山崎洋右の発表があった。限られた110分の発表に入りきれなかった石塚幹剛氏の発表は次回の例会時にお願いすることになった。また、当日欠席されたが渡邊雄一氏の環境モデル都市のレポートなど多様でレベルが高い。有意義な発表会の後の新年会が盛り上がった。

文責 山崎 洋右、山本 泰三


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