自動車整備の生き残りをかけて -エコ車検・エコ整備普及への取組-

著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 守屋 雅夫  /  講演日: 2007年10月11日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

第37回環境研究会特別講演会報告   071011

日 時平成19年10月11日

 

テーマ:自動車整備の生き残りをかけて -エコ車検・エコ整備の普及取組み-

講 師 : 守屋 雅夫氏 トヨタOB、三井住友火災海上顧問兼自動車整備事業者団体ASKnet顧問

 

講演概要

1963年トヨタに入社。車のディーラーとして、ソアラや競争自動車のエンジンを担当した。またディーラーのサービスマン教育を初代の校長として担当するなどエンジン関係に係わった。
1951
年に車両法ができ、安全対策として車検制度が導入された。
1966
年には排ガス中のCO規制が始まったが、現在も車検時はCO 4.5%以下と非常にゆるい基準である。
1973
年にCO,HC,NOxの排ガス規制ができ、三元触媒が導入されたが燃費がよくない。最近は改善されてきたが、車検時にCO2を含めた4ガス成分(CO,HC,CO2,O2)の測定はアジアの国でもやっており、必要である。

エコ車検・エコ整備の普及を提唱し、全国の自動車整備事業団体を指導、育成している。ドイツでは整備工場は環境対策が遅れたためディーラー系などに負けて倒れてしまった。
例えば、エンジンを分解せずに燃焼室のエコ洗浄などを行うと、燃費も大幅に改善できる。15年前に「N2ガスをタイヤに充填すること」で走行性が向上すると提唱したら、ブリジストンがやるといいだし、東京都知事も動きだした。

1.自動車と温室効果ガス

日本が排出する温室効果ガスの地球温暖化への直接寄与度はCO295%を占めており、二酸化炭素排出量の部門別内訳は、①エネルギー転換部門(発電所等)30.7%、 ②産業部門(工場等)29.5%、③運輸部門(自動車、船舶等)19.3%となっている。

運輸部門に於ける二酸化炭素排出量は、①自家用自動車:48.9%、②自家用貨物車:18.0%、③営業用貨物車:17.5%(80%以上が自家用自動車+貨物車)であり、新車は燃費が下がっているが、古い車が増えており、さらなる対策が必要である。
例えば、通勤用で往復40㎞、25/月(1000km/月)、ガソリン1リットル当たり10㎞走行するとしてCO22.8トン/年の排出量になる。

2.エンジン洗浄による燃費への効果

走行距離が長くなるとエンジンの燃焼部分にカーボン(すす)がつくので炎の伝播が遅くなる。(新車は1/250Sで拡散する)。また、エンジンオイルがヘドロ状態になり、エンジンの内圧があがる。その対策として、エンジン洗浄が有効である。①燃焼室の洗浄、②オイルの洗浄を行い、効果を確認した。サンプル車22台中20台で効果があり、ガソリン車は平均10%改善、DE車は13%改善し、完全燃焼する様になった(効果がなかった2台はハイブリッド車)。全国で自動車整備業の650社が取組み、平均月20台エンジン洗浄している。450/月の整備実績の会社もある(神奈川)

3.自動車排出ガスの特性

不完全燃焼によって発生するガスはCO,HC,O2,CO2,DSとあるが、通常燃焼ではCO2,H2ONOxだけが発生する。普通の車検だと基準がゆるいので皆合格する。
ガステスター(CO,HC,CO2,O24ガス濃度計):普通の車検では皆合格するが、完全燃焼の条件λ=1.00は、空気:ガソリンが1:14.7の場合であり、この整備が重要である。

4.エンジン洗浄作業とは

①燃焼系統洗浄:エンジンの不完全燃焼の原因とされる燃焼室内部のカーボン等の有害な堆積物を除去し、燃焼を改善し読みがえらせる。(高温高圧ガス:1800℃、50気圧)

②潤滑系統洗浄:エンジン潤滑系統各部の洗浄作業で有害なブローバイガス等による炭化水素(HC)等を減少させる。

環境省にデータを出すため、内視鏡で写真を撮ったが、20分の洗浄できれいになる。

5.洗浄による排ガスの検証

①ガソリンエンジン車の場合
洗浄前λ:1.038 → 洗浄後λ:1.009
+エコフラッシュ洗浄でλ:1.0021.003でカーボンがなくなり、燃費の削減効果がある。

②ディーゼルエンジン車(DE車)の場合
H10
年式の清掃車のエンジン回りについて、部品をすべて変えたが黒煙濃度が31%で不適合だった。エンジン洗浄すると、18%と基準以下になった。(現在の規制値 9,10,11年規制基準:25%以下)

6.エコ整備の種類

★エコ整備:燃費の改善、性能アップには6種類のメニューがある。

①エンジン洗浄:2030分。
別に用意したガソリンを使い、専用の洗浄液と混合して使用する。ガソリン車とDE車とを同時に洗浄できる。

②別系統で洗浄液を入れて、スラッジを取り除く。(新しいオイルを入れる。)2030
走行距離2万キロ以上の車など。DE車にはこの方が、効果がある。

③省燃費、ロングライフオイル:出光石油と共同開発。
さらさらの(鉱物油ではない)合成油である。トヨタのキャッスルより性能がよく2kmもつ。10kmもったケースもある。出光もアスクネットのメンバーに入っている。

④窒素(N2)ガス充填
タイヤの空気圧は一定が良いためアルミのホイールなどで冷やす。窒素は透過率が小さいため抜けにくい事、電気親和力が小さく劣化を抑制する事など、過酷な条件で使用するタイヤに適しているが、実際に使ってみないと効果が分かってもらえない。

⑤エコアースコード
車両重量を軽くするために鋼板にNiを入れると強度は出るが電気抵抗が10倍にもなる。レース車のようにアース線を取る(6~12本)。トルクが強くなり燃費削減できる。

⑥プラグコード・エコアース取付け
通常は16,000Vでスパークするが、針金は電磁波が出るので麻糸を使用しカーボンを塗っている。コンデンサで放電させず26,000Vになるのでイリジウムプラグに交換して使用。

7.エコ車検・エコ整備とエコアクション21EA21

三井住友には1800の指定工場があり、燃費改善と環境保全につながるので2002年にEA21環境マネジメントシステムのパイロット事業に12社を参加させた。認証取得は現在75社で年度内にさらに65社が申請する。整備事業者に技術を教え5年間で600社に広げる予定である。

Q&A

Q:エンジン洗浄のコストは?

A:エンジン洗浄作業(接続→2030分洗浄→脱着)は約1時間要し、費用は8,500円~11,000円。燃費効果との見合いである。

Q:燃費が良いとは思えない排気量の大きい車の製造を、何故自動車会社が行うのか?

A:台数は売れないが高付加価値で収支向上と新技術も導入できる。エスティマの3500CC等はエンジンの回転が上がらなく、低速でトルクを大きくする仕組みとなっており、負荷のかかる場所等は排気量の小さい車が高速回転で走るより燃費が良くなる。

(山崎洋右、山本泰三 記)

 

コメント(山本)

EA21の審査で四国へ行った時、高知でエコ洗浄と窒素ガス充填をした。帰りに室戸岬廻りで約500km走り、何と17.5km/㍑に改善した。(ヴィッツ1300ccマニュアル車で走行65,000km


著者プロフィール 著者
> 
主な経歴
> 
資格
> 
その他
>