高分子界面反応を利用した応用技術とその開発
化学部会(平成16年12月度)報告-1
日 時 : 平成16年12月11日(土)
12月度の化学部会例会は、特別講演会として2講演を行い盛会裡に終了した
講演1 高分子の界面反応を利用した応用技術とその開発
ダイセルテグサ株式会社 開発営業部 六田充輝 博士(理学) 技術士(化学)
① 不飽和ポリエステル高分子の加水分解を応用したコンクリート表面の加工
大型のコンクリート構造物を構築する際、全部を一度に打設出来ないのでいくつかのブロックに分けて工事していく。その際、打設したブロックの表面はコンクリートの硬化反応の結果滑らかなであるので、引き続いて打設するブロックとの接合が弱くなる欠点があり、あらかじめ表面をあらしておく必要がある。表面をあらす方法として、物理的にはつりを行うなどの方法と化学的な方法があり、化学的な方法の紹介と、その開発の経緯(失敗からのスタート)が紹介された。
化学的な方法の原理は次の通り。セメントの硬化は含まれているCaが作用する化学反応である。不飽和ポリエステルを硬化前のセメントと接触させると、アルカリにより接触面でポリエステルが加水分解される。生成した酸がセメントを硬化させる因子であるCaを捕らえる結果、接触面の付近ではセメントの硬化反応が起こらず軟らかいままとなるので、表面を掻き落とせば骨材が露出し粗な表面を得ることが出来る。不飽和度と接触時間を調整すれば表面を粗にする程度も調整できるので、大型工事で利用されている。
② 高分子と高分子の相互作用を利用した直接接着
高分子の機能アップには複合化という観点が必要であり、複合化の一方法として高分子と高分子の接着がある。接着の方法は通常プライマーを利用するが、環境面から脱溶剤化が必要であり、その方法として直接接着がある。
直接接着の原理を解明する基礎研究の結果、高分子拡散による場合と、異相界面での化学反応による場合のあることがわかった。高分子拡散の例として、ポリフェニルエーテルとポリスチレンの拡散相溶現象がガラス転移点以下の温度で発生する現象の発見、異相界面での化学反応(ラジカル/イオン)の例として、ポリアミドと熱可塑性ポリウレタンの例などが紹介された。
これまで直接接着についてはその機構が解明されていなかったが、基礎的な研究を行うことにより原理を解明出来、結果として新たな展開が加速された。またこの研究の場合も失敗例が新発見の原動力となったことが紹介された。
文責 藤橋雅尚