超イオン伝導ガラスの開発 -全固体イオン電池をめざして-
化学部会(平成16年12月度)報告-2
日 時 : 平成16年12月11日(土)
12月度の化学部会例会は、特別講演会として2講演を行い盛会裡に終了した
講演2 超イオン伝導ガラスの開発
―全固体イオン電池をめざして―
大阪府立大学 学長 南 努 教授 工学博士
ガラスは電気絶縁物であるという一般の常識と異なり、電解質溶液に匹敵するほどのイオン伝導性を示すガラス(超イオン伝導ガラス)の開発に成功した事、ならびにこのガラスの性質を研究した成果と、実用化のための研究について紹介された。
まず入門編として、一般的な伝導度についての紹介があった。
固体を伝導度の対数(logσ25(s/cm))で表現すると、最も伝導度の高い銀は7である。逆に伝導度の低いパラフィンワックスは-20であり、30(伝導度であらわすと1030 )近い差がある。一方、液体(ガラスなど液晶を含む)の場合は、KCl溶融塩の2が伝導度の高い例であり、水溶液の場合は1N-KClで-1程度である。超イオン伝導ガラスは、-2のレベルであり、酸化物ガラスの-10~-20とは大きく異なっており、金属と比較するとSiと同レベルである。
電気伝導性を発揮する原理について、固体の場合は電子伝導、液体の場合はイオン伝導のため、このガラスを超イオン伝導ガラスと命名した。超イオン伝導ガラスの構成例として、75AgI・25Ag2Seや85AgI・15Ag4P2O7の紹介がなされ、構造を調べた結果ガラスイオン伝導体の場合、原子レベルで見て欠陥構造を持つ事が伝導性発揮のソースであるとわかった。
超イオン伝導ガラスの具体的な用途開発を行っている。ガラスを利用するメリットとして、均質等方性や粒界が無い事、成型性に富み薄膜化が容易な事などが上げられるため、それらのメリットを活用出来しかも液漏れの無い事を特徴とする2次電池の開発を目指している。既に試作品で500回の充放電テストを行っている事と、ホットニュースとして結晶化ガラス(微細な結晶質が非晶質の中に多数分散しているガラス)が出来、良いパフォーマンスを示していることが紹介された。最後に、開発にまだまだ時間を要するが次世代の技術として期待していると結ばれた。
文責 藤橋雅尚