自動車用材料の動向
化学部会(2007年12月度)研修会報告-1
日 時 : 2007年12月8日(土)
テーマ : 講演会
講演1 自動車用材料の動向
石原 哲男 技術士 (化学)
イシハラ アンド アソシエーツ 代表、近畿大学 理工学部 非常勤講師
1)自動車産業全般について
日本の自動車産業の2006年出荷額は49兆円であり全産業の16.5%を占め、電気機器産業の16.7%に続いている (3位は化学産業の8.5%)。輸出で見ると自動車産業は16兆円で全産業の21.5%(2位は化学産業の9.0%)を占めているが、輸入は輸送用機器を含んでも0.9兆円であり全産業の3.4%であり、輸入の少ない産業という特徴がある。
世界での自動車産業のマーケット(2006年)で日本の位置づけという観点から見ると、登録台数は世界の3.4%を占めるだけであるが、生産台数では11.6%を占めており、日本メーカーの海外生産を加えると23%を越えるレベルとなる。見方を変えて国別の生産台数(工場の立地国の生産台数)の観点から見ると、2006年は日本が1148万台でありアメリカ(1126万台)をわずかに抜いて1位となった。3位は中国の719万台、4位はドイツの582万台である。
2)自動車マーケットの課題と、材料について
自動車マーケットの課題は、コストダウン・省エネ・軽量化・易リサイクル化・安全性・快適性・環境対策などである。これらの中で軽量化は全ての課題に影響するため、鉄材の薄肉化・アルミなど軽金属の利用に加え、高分子材料の利用などが実行されており化学産業の果たす役割は非常に大きい。
化学産業の立場からみると、自動車産業への貢献として、触媒・電池、高分子・メッキなど様々な分野が関係し、今後も続けていく必要があるが、本日は自動車に利用されている高分子を中心にレビューする。
3)有機化合物(特にプラスチック)の利用
日本の乗用車に使用されているプラスチックは、重量ベースで10%、容積ベースでは50%を越えている。欧米は重量ベースで15~20%といわれており、今後さらに樹脂化が加速すると思われる。
使用される樹脂は、図1のように1977年はPVC 31%、PP 21%であったが、2001年はPVC 12%、PP 49%となり構成に大きな変化が見られる。現在PVCは下げ止まりの傾向であり、ABSは一次低下したが加工性が見直されて回復基調、HD-PEは多層構造を採用してガソリンタンクへの使用により伸びる傾向である。これら汎用樹脂以外にもエンプラ、スーパーエンプラ、エラストマーなどが、エンジンまわりやプロペラシャフトを始めとして各所に使われている。
トピックスとして、ケナフ強化PPなどの天然繊維、PP/PAナノアロイの耐衝撃性の利用、 PCのフロントウインドウ以外での利用などが始まっており今後の発展に期待したい。
(図は講演資料より転載)
文責 藤橋雅尚 監修 石原哲男