生活習慣病と治療薬

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 貴志 豊和  /  講演日: 2008年12月13日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2011年01月04日

 

化学部会(200812月度)研修会報告-1

  時 : 20081213日(土)
テーマ :講演会

 

講演-1 生活習慣病と治療薬

貴志 豐和先生(元武田薬品生薬研究所長、現中国瀋陽薬大、ハルピン医大客員教授)

 

1)生活習慣病

生活習慣病とは周知のとおり、食習慣・運動習慣・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣が原因で発症する病気のことである。疾患例として、循環器疾患・消化器疾患・糖尿病(代謝性疾患)・悪性腫瘍・アルコール性肝疾患などが上げられるが、自己制御で予防することが可能な病気である。

日本人の2004年の死亡率を見ると、1位はガンであり、2位が循環器病、以下心疾患・脳疾患・高血圧と続いており、合計人数で見ると循環器疾患のウエートが高い。一方、患者数(2005年)で見ると、1位が高血圧症(780万人)、2位が糖尿病(247万人)となる。なお糖尿病は自覚症状がないため、重症に至りやすい。以下個別に説明していくが、予防が大切である。特に、横井也有(江戸時代)の健康十訓(小肉多菜、小塩多酢など)の考え方を学んで欲しい。

2)循環器病の治療薬

虚血性心疾患、高血圧、高脂血症などが上げられるがここでは、高血圧の治療薬について述べる。血圧の低下が目的であるが作用機序から分けると、次などがある。

①血流量の減少(利尿剤)
②交感神経抑制剤(α、βブロッカー)
血管拡張剤(a.カルシウム拮抗薬、b.アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、c.アンギオテンシン受容体拮抗薬)

a カルシウム拮抗剤は、Caチャンネルを遮断することによる血管の拡張剤、③b は、ACE(血管収縮酵素)による血圧上昇の阻害剤、③c ACE結合した受容体の活動阻害剤である。それぞれ、作用機序が異なるので、どれか一つが効かない患者にも別のものが有効な例が多い。

有名な薬として③a AmlodipinePfizer)、③b LisinoprilMerck)、 ③c  Candesartan(武田:ブロプレス(上図))などがあり、臨床試験の結果、3者に効果の差はないがAmlodipineの副作用がやや少ない傾向があった。

3)高脂血症の治療薬

治療薬という観点から見ると世界で最も売れている薬である。コレステロールは身体に必要なものであるが過剰は問題である。LDL-C(低比重リボタンパクコレステロール)は、悪玉コレステロールといわれ肝臓に蓄積されたコレステロールを血管に運び出す。 HDL-C (高比重リボタンパクコレステロール)は善玉コレステロールといわれ、血管中のコレステロールを肝臓に戻す働きがある。高脂血症の治療薬には第1~第3世代のものがあり、いずれもHMG-CoA還元酵素阻害剤(右図は三共のメバロチン:第1世代)であるが、それぞれの世代に特徴があり使い分けられている。

4)糖尿病の治療薬

2005年時点で日本の患者数は247万人と言われているが、予備軍をあわせると1000万人といわれ、10年後には倍増するといわれている。病態には遺伝的インスリン分泌障害と、インスリンの細胞内取込障害の2種があり、日本の患者の90%が後者である。インスリン分泌促進、糖新生作用抑制、インスリ抵抗性抑制機能を持つ経口薬があり、インスリン投与で対応している。

           (図は講演資料より転載)

文責 藤橋雅尚


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