視点を変えて物事を観察する
化学部会(2008年12月度)研修会報告-1
日 時 : 2008年12月13日(土)
テーマ :講演会
講演-2 視点を変えて物事を観察する
藤原秀樹先生(工学博士 大阪工業大学 名誉教授)
1)視点を変えて物事を観察するきっかけ
青年時代に化学の研究を進めて行く上で、「視点を変えて物事を冷静に観察すれば、新しい貴重な知見が得られる」と云うことに気付いた。それ以来この方法で色々な分野を見て行くと、新しい事実が見えて来た。
最初に気づいたのは、「人類や自然界で行われている化学反応では、地球上の約90種類もの元素の合成は不可能であり、それらは一体どの様にして出来たのか」という大きな疑問であった。この疑問を解くために、視点を変えて天文学や宇宙物理学を学んだ。そして、ハッブル宇宙望遠鏡や他の科学衛星による観測結果などから重力崩壊型や核爆発型超新星爆発によって、より重い元素が合成されたことにたどり着くことが出来たので、画像を含めて概要を紹介する。
2)大学の教育とは
大阪工業大学工学部で約43年間にわたり研究や教育に従事してきた。小生の教育の基本は、「大学とは、人間を創る専門の道場である」であった。そこで、大学教育に関して色々なことを認識したので紹介する。
①学生は受講中、筆記をせずに耳で聞き、講義内容が分かったつもりでいる。「百聞は一見にしかず、百見は一経にしかず」の諺が理解出来ていない。
②「国語の文章作成能力と表現力」が弱い。日頃から筆記や文章の作成を行わず、かつ、文系の書物を読まないためである。
③「英文法」を身に付けている人が少ない。
④化学系の学生は物理学が苦手で、物理学系の学生は化学を苦手とする人が多い。
⑤「整理、整頓および掃除など」が出来る学生が少ない。
素晴らしい人材の育成のためには、①~⑤の弱点を克服させることが大切である。
文責 藤橋雅尚