中国における合弁会社設立と運営
化学部会(2009年2月度)研修会報告
日 時 : 2009年2月19日(木)
テーマ : 講演会
講演 中国における合弁会社設立と運営
上田 修史 技術士(化学部門) 元 株式会社 理化ファインテク取締役
講師は、化学会社で長らく医薬・農薬の中間体、塗料・接着材用原料、樹脂添加剤の研究・開発・販売に従事された。その後、経営企画・研究開発管理などに携わった後、新日本理化株式会社の子会社である株式会社理化ファインテクに移り、ロジン製品製造を目的とする中国合弁会社設立とその運営のため、昨年3月まで中国浙江省上虞市に3年間駐在されたのでその経験をお話しいただいた。
まずロジンの化学とその用途について説明がなされた。世界での生産量は110-140万トン/年であり、その内65-70万トン/年は中国で生産されている。日本の需要は約9万トン/年で、①紙のサイジング剤、②合成ゴム用乳化剤、③インク・接着・塗料用、④ハンダフラックス用、⑤食用、などである。(図参照)
中国における税制、会計、外貨管理など法制度について、日本との違いが大きく注意が必要であり、複雑な許認可制度によるJV設立時の大変さであり、特に強調したいのはJV設立の予備検討時からの弁護士の参画である。更に近年では、外資への税優遇制度の廃止、輸出還付税の撤廃、中国通貨である元高などの影響を受けて、「中国生産・日本などへの輸出」のメリットが低下してきている。以上に加えて、言語・文化・習慣の大きな違いによるJV運営の難しさについて具体的な苦労話が披露された。
これらの経験から、中国進出の際に重要なこととして次の7項目の指摘がなされた。①進出目的の明確化、②進出形態は合弁ではなく独資がベター、③法制度、許認可制度の充分な調査(信頼の置ける情報源の確保)、④中国人スタッフの採用・育成への対応と定着性のアップ、⑤生産管理・品質管理・5Sなどの教育・研修の徹底、⑥チャイナリスクといわれる種々の問題への分析と対応、⑦環境問題の悪化が著しいことを受けて規制が非常に厳しくなっており化学産業にとって死活問題。
Q&Aでは、独資と合弁についての問題、道路用塗料におけるロジンの位置づけ、中国での環境問題などについて議論がなされた。
(図は講演資料より転載)
文責 藤橋雅尚、監修 上田修史