高度浄水処理について (大阪市水道局 見学研修会)

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 吉田 昌博、 梶山 佳晴  /  講演日: 2010年10月21日 /  カテゴリ: 見学会  /  更新日時: 2011年01月14日

  

化学部会・環境研究会共催(201010月度)見学会報告

  時 : 20101021日(木) 13:0016:30
  所 : 大阪市 柴島浄水場と水道記念館
テーマ :大阪市水道局の高度浄水処理技術について、見学と講演会

 

講演1 大阪市水道局の概要

吉田 昌博  株式会社 大阪水道総合サービス 見学担当

大阪市の水道事業は、明治28(1895年)に、横浜、函館、長崎に次ぐわが国4番目の近代水道施設として誕生した。創設当時の規模は、給水人口61万人・1日最大給水量51,240 m3/Dの給水能力を備え、桜の宮に浄水場を設けて緩速ろ過法で浄化し、大阪城内の配水池から市内に給水していた。その後、市勢の発展に伴う需要水量の増加により、桜の宮水源地だけでは対応できなくなり、第2回水道拡張事業によって大正3年に柴島浄水場を新設するなど9回にわたる水道拡張事を実施してきた。現在は柴島・庭窪・豊野の三つの浄水場を有しており、給水能力は2,430,000 m3/Dを有している。

その後、カビ臭等の異臭味の除去及びトリハロメタンの低減を含む総合的な水道水質の改善を目的として、従来の急速砂ろ過方式の浄水処理にオゾン及び粒状活性炭処理を付加した高度浄水処理を導入している。現在は、浄・配水場をはじめとした基幹施設の耐震性強化や、経年管路等の計画的な更新等、各種の整備事業を進めている。

なお、当柴島浄水場は当市で最大の給水能力を持つ浄水場であり、水道記念館は当浄水場にあった旧第1ポンプ場を改造し、淀川に生息する希少生物の保護・研究・展示など淀川水系に対する理解と、水道への理解を深めることを目指した設備である。

 

見学 大阪市水道記念館と、浄水・配水設備

水道記念館の展示設備の見学を行い、続いて凝集沈でん池から急速砂ろ過池、高度浄水処理棟にいたる浄水処理設備を見学した。(詳細は省略する)

 

講演2 大阪市水道局の高度浄水処理施設

梶山 佳晴  株式会社 大阪水道総合サービス 技術担当部長代理

はじめに

大阪市の水源である琵琶湖では昭和56年以降ほぼ毎年のようにかび臭が発生し、琵琶湖・淀川水系より取水する水道水に異臭味がつく原因となっていた。異臭味が強くなれば粉末活性炭の注入を行い、さらに原水中の有機物や金属イオン等の酸化のための塩素注入ポイントを変更(凝集沈でん池の前段から凝集沈でん池の後段へ)する等様々の対策をとってきたが異臭味等を十分除去できない状況にあった。

また、浄水処理工程で使用される塩素と水道原水中の有機物の一部が反応して生成するトリハロメタンについては、市内給水栓における総トリハロメタン濃度(T-THMs)は水質基準(0.1mg/L)以下であるものの、より安全な水道水の供給のためにはその低減が必要となっていた。さらには、分析技術の向上により、河川中に存在する農薬をはじめとする様々な微量有機物が測定されるようになり、これらの総合的な低減のためには、濁り成分の除去を主体とするこれまでの凝集沈でん・急速砂ろ過方式では対応が困難であった。このような背景から、異臭味の除去及びトリハロメタンの低減を含む総合的な水道水質の改善を目的に、オゾンと粒状活性炭による高度浄水処理を導入した。

高度浄水処理の概要

高度浄水処理は、従来の処理方式である凝集沈でん・急速砂ろ過方式にオゾン処理と粒状活性炭処理を加えたものである。また凝集沈でん池の前後で注入していた塩素処理は廃止し、最終段階(浄水)のみ必要最小限の注入を行うこととした。このフローの決定については、パイロットプラントを用いた実験等で様々なフローの水処理性を調査した結果、決定した。

高度浄水処理の効果と改善に向けて

高度浄水処理を導入した結果、カビ臭に代表される異臭味は完全に除去でき、またトリハロメタン等の濃度も従来と比較して1/41/5程度になった。また、浄水中に残留する有機物質が減少し配水過程での塩素消費量が少なくなったことから、後塩素処理で添加する塩素量も少なく済み、結果的に市内残留塩素濃度を低くすることが出来るようになった。

また、省エネ対策として、高度浄水処理運転開始後、オゾン濃度計によるフィードバック制御を導入するなど、オゾン注入制御の改善により、電力原単位の削減を図っている。

Q&A

Q 浄水中にオゾンが残存し、発ガン性をもたらす恐れは無いのか。

A オゾン自体は粒状活性炭処理で分解するので、飲み水には残らない。

 

Q 溶存オゾン濃度の測定位置はどこか。またオゾンの吸収効率はどれくらいか。

A 後オゾン処理での測定位置は粒状活性炭処理の手前である。吸収効率は実験段階では  80%位であったと記憶している。

  

Q これからのCO2の削減についてどう考えるか。また海外へのビジネスについてどう考えるか。

A 大阪市では、平成18年3月に『温室効果ガス排出抑制等実行計画』を策定し、5ヵ年で7%以上削減(基準年度は平成16年度)することを目標としている。水道事業としても、5年間で3.350t-CO2の削減を目標としている。
海外ビジネスについては、NEDOの助成を得てベトナム・ホーチミン市の水道事業の  改善を官民協力の上、手がけている。 

                (図および表は講演資料による)

文責 藤橋雅尚  監修 梶山佳晴 


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