原油の起源と確認埋蔵量、および生産量の推移

著者: 藤橋 雅尚 講演者: 井原 博之  /  講演日: 2009年06月18日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2011年01月15日

 

化学部会(20096月度)研修会報告

  時 : 2009618日(木)
テーマ : 講演会

 

講演 原油の起源と確認埋蔵量 および生産量の推移

井原 博之 技術士(化学部門) エコ・エネ・リサーチ 代表
秋田大学非常勤講師 (元 三菱石油(現 新日石)開発研究所長)

 

はじめに

本日は、地球の46億年という長い歴史の中で、石炭や原油の誕生、原油の生成の経緯、確認埋蔵量と生産量の関係、最近の石油事情、などについてお話する。

地球の歴史と石油の生成

地球の歴史は46億年である。原始地球では地殻には炭素原子は殆どなく気体状態のCO230気圧存在していたが、その後炭素原子の99.9%は堆積岩として固定された。
1に示すように、約35億年前にシアノバクテリアが出現しO2の生成が始まった結果、徐々にO2が大気中に蓄積していった。大気中のO2濃度が現在とほぼ同程度の濃度になったのは約5億年前である。O2蓄積の結果オゾン層が形成され、陸上での有害な紫外線が減少した結果、植物の地上への上陸が始まって植物が繁茂し3.3億年前頃の石炭紀に石炭が形成された。また、植物の上陸のおかげで、動物も陸へ上がることができるようになってきた。

石油の起源については、約1億年前地殻変動によって赤道付近にネオテチス海(図2の海峡状の部分)ができ、高温と日射を受けて大量の微生物が発生し海底に蓄積した。石油の有機起源説では、この蓄積した生物の層が大陸の分断などの地殻変動によって褶曲した地層にたまり、石油となったと考えられている。

原油中の硫黄分・特長ある成分

世界の原油の分布は図3に示すとおりである。石油をAPI比重で分類すると3種類(重質油、中質油、軽質油)に分類でき、API比重は原油中の硫黄分との関連性も深い。原油の分布を見ると、重質油(高硫黄油)は中近東・エジプト・カスピ海・メキシコ、中質油(中硫黄油)はベネズエラ(但し、やや重い)・リビア、軽質油(低硫黄油)は残りのアフリカ・アメリカ・ロシア・EU・アジアであり、石油の成因との関連があると推定される。

 

原油の確認埋蔵量と生産量について

4に人類がこれまでに使ったエネルギーの累積を示す。1960年代から使用が急増していることと、石油(斜線部)が全体の約40%近くを占めていることが分かる。
原油の可採年数(確認埋蔵量/年間生産量)は50年程度といわれているが、何年経ってもこの数値が変わらないため、探せばいくらでもあるという感覚を与えてしまっている。実際の確認埋蔵量と生産量の関係を図5に示す。生産量はほぼ一定した微増傾向であるが、確認埋蔵量は徐々に増えている部分と、階段状に変化している部分がある。

   

  

徐々に変化している部分は、新油田の発見や技術の進歩により確認埋蔵量の値が増加している部分である。一方、階段状の部分(3箇所)は政治的な要因が影響している。1970年台は石油ショックに伴う確認埋蔵量の見直し結果、1980年代後半は採掘量を確認埋蔵量に比例させる原則を受けて政治的に確認埋蔵量を増加させたゲタ履き、2000 年代初期はイラク戦争開始に関連してアメリカ大陸にも石油がある(カナダのオイルサンドを確認埋蔵量に加算)とする政治的追加によるゲタ履きである。このゲタ履きの影響を無視すると可採埋蔵量の増加より使用増の方が早く、可採年数は減少しているといえる。

今後に向けて

地域別に原油の積算生産量/確認埋蔵量(%)を調べてみると、中東地域:37%、メキシコ:50%、イギリス・ノルウエイ・中国地域:120130%、アメリカ:470%である。この指標は中東やメキシコ以外は生産ピークを越え減産期に入ったことを示しており、例えば北海油田は新しい採掘技術を使わない限り、後10年という見方ができる。

今後に向けては、天然ガスの利用、石油の価格が上がることによる非在来型石油(オイルサンドなど)の利用が進むだろうが、限界があるのは間違いないので太陽エネルギーなど自然エネルギーの活用を考えておく必要がある。

Q&A

Q 後50年という考え方について、石油にたずさわる者としてどう考えるか。

A 使用傾向を考えると後50年も持たない。重質油の活用を図る必要を感じている。

 

Q メタンハイドレートについてどう考えるか

A 資源が鉱床状になっていないこと、安定系でないことなど解決すべき問題が多い。

 

Q 一般の人は石油の埋蔵量の話を信じず「今後も増える」との考えと思うがどうか。

A 新たに見つかる可能性は低いということを伝える必要を感じている。

引用
  図1 :酒井治孝、地球学入門、p241、東海大学出版社(2003
  図2 :樋口 雄、石油の謎をさぐる、p86、㈱日本図書刊行会(1998
  図3 :井原博之、三菱石油技術資料、VOL.19 No.1、p1171969
  図4 :通商産業省遍、エネルギー94、p113、電力新報社(1994
  図5 :Oil&Gas J.より井原作成

文責 藤橋雅尚  監修 井原 博之


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