関西を元気に(12回シリーズ)新聞掲載記事の狙いと経過・内容

著者: 山本 泰三 講演者: 山本 泰三  /  講演日: 2011年02月17日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月18日

 

環境研究会 例会・報告・勉強会報告  110217

日 時:平成23217日(木)
場 所:アーバネックス備後町ビル3階ホール 

 

テーマ:関西を元気に(12回シリーズ)新聞掲載記事の狙いと経過・内容

報告者:山本 泰三技術士(環境、総合技術監理) 環境研究会企画担当幹事

 

1)地域のシンクタンクをめざして「技術士の提言」の展開

環境研究会からの情報発信は、2002年から有識者をお招きして特別講演会を開催し、現在に至っている。この結果については要旨を「きんきしぶだより」に掲載すると共に会員等にさらに詳しい情報配信をしてきた。さらに対外的な情報発信を模索してきた。
この間、植田和弘京大教授、槇村久子京都女子大教授、鈴木胖IGES関西研究所長、中村桂子生命誌研究所長など,現在も日本の第一線で活躍されている方々の支援を受けてきた。

2)フジサンケイビジネスアイでのシリーズでの情報発信

上記の日本工業新聞社との間で「関西を元気に! 技術士の提言」のテーマで半年12回シリーズの情報発信を西日本面(名古屋から九州まで)で発信する契約ができ、昨年8月から掲載が始まった。日本、とりわけ関西地域の地盤沈下が著しく、活性化するためにはまずインフラの整備が重要である。2005年の愛知万博時に環境研究会で見学研修旅行を実施し、中部国際空港、名古屋港、高速道路などを見学し、参加者(42)が一様に彼我の差を実感した。また、昨年6月に技術士会近畿支部主体で中国への技術交流団で、中国の躍進振り、インフラ整備のすさまじさを目の当たりにした。

この中で、とくに関西の道路の脆弱性の実態を明らかし、改善への方向付けをするため、8月、9月にシンポジウムを開催し、その結果をシリーズ記事に反映させていった。例えば関西には高速道路網の整備についてマスタープラン、優先順位が明確でないことが明らかになった。

新野幸次郎神戸市都市問題研究所理事長、元神戸大学学長から、日本ではシンクタンク機能が育っていないことが大きな問題であると示唆を受けた。技術士は地域のシンクタンクとしての役割を活用すると、良質で安価なシンクタンク機能を果たす可能性があると認識させられた。

3)専門分野での具体的な提言で変化の先取りを

さらに新野先生から、説得力のある提言をするためには、単に紹介や批判ではなく、得意分野で具体的な提案をするようにと諭された。そこで、インフラを中心として問題を明確にした。

   ① 大動脈である新名神高速道路の建設凍結状態の打破が必須。
阪神高速道路はネットワークが断絶している。費用効果とスピードを重視した見直しが必須。
阪神港は国際コンテナ戦略港湾に指定されたが、海外を見据えて、現行施設の総点検が必要。
関西3空港は、関空一本化議論から一体運用で強みを生かした切り替えが必要。

データに基づいて提言した内容は、変化への兆しを先取りしたものになりつつある。長期・広域的に俯瞰し、インフラを有効活用すること、このための地域住民の理解と支持を獲得、合意形成が重要である。歴史、文化の歴史、バランスの取れた経済基盤や蓄積を認識し、関西の強みを掘り起こして自立復権をめざすことは可能であるし、実現しなければならない。

幸い環境研究会では、独自のホームページ「Technology PE-eco」を立ち上げ、標記のテーマも図表を追加して分かりやすく掲載している。次の展開に向けて活動を進めることを報告した。

4)Q&A、ディスカッションを通じて

報告の後、活発な意見交換があった。この内容を環境研究会内部でも検討し、次年度以降の活動につなげていく。また、その内容についてはホームページ「PE-eco」を通じて発信していく。
現時点ではこのテーマへの取り組みについて技術士会も地域社会も関心が高いとはいえないが、着実に次の活動に繋がる芽が育ちつつあると考えている。

Q&A コメント(C)

技術士のネットワークづくり

Q:技術士会の中に広いネットワークはできていないように思う。

→技術士会の組織率は20%である。活動グループとしてみとめられているのが約50あり、近畿支部では内二つである。主に仕事のネタにする活動である。

C:技術士会で活動している人は高齢者が多い。出身大学で技術士会を作った。阪大、大阪工大など全国的な動きがある。また企業にも技術士会がある。日立は700人の組織で、技術士会に理事を出している。

C:経産省関連の受託業務の仕事をしている。ある程度アピールできている。技術士は20部門あるので、ネットワーク、議論ができれば、オリジナリティのある成果を発信できる.テーマを決めて毎回発信するような運営もあるのでは?

C:技術士の資格をとっても技術士会に入らないのは、利点がないと受け止めているからである。幹部の方が努力しても、若い人がついて来れない。これでは、若い人にとって価値がない。給料が上がるとか認められるとか仕組み、仕掛け、夢など工夫が必要である。

C:技術士のネットワークの育成、活用を工夫して外部発信が期待される。

C:会社にいる時はサブ業務を手伝ってもらえたが、定年後動きにくくなった。役割分担の工夫がいる。

C:優良で安価なということもあるが、ネットワークを売り物にすべきである。20部門にまたがるネットワークは技術士しかない。これをまとめ、対応する人がいる。

C:技術士としての意識は捨てる必要がある。行政の委員会では人に仕事がつくし、国やシンクタンクなどの情報が集まる。技術士として裁判所の鑑定やJICAの仕事への応募などはあるが、シンクタンクが求めるのは最新情報である。そのためにネットワーク、技術士組合が必要になる。実務について研鑽を積み、人柄、専門性を認めてもらう。例えば、理科教育のボランティアからの行動もある。

情報発信とシンクタンク機能について

C:シンクタンクについて解説書によると決まった形はない。地方自治体から外注されて、住民を集めてシンクタンクとして活動する例はある。首長は関係のシンクタンクに相談できるようになる。

C:ホームページ「PE-eco」の構築で色々経験した。ワード原稿なら比較的簡単にアップロードできる。ただ、見やすくするために工夫は加えてきた。

C1963年に阪神高速道路に入った。当初は合意形成のための機関があったが、その後なくなった。以前は学識経験者による審議会もあった。現在は法律で(建設の)基本計画、順序が決められている。審議会の仕組みも見直す必要がある。公共事業が縮小しており、効果とスピードを優先すべきである。
首都圏では東京都が高速道路会社と一緒に行動しているのは、法律的にも有効でよい仕組みである。

C:今後の展開はこれからであるが、今回の新聞での取組みは成果があった。これを分かってもらえない、利用してもらえないのでとめるのではなく、報告、発信と反省とが必要である。環境のことを勉強する研究会で、インフラ整備を検討するのはそぐわない訳ではない。チャンスを活かしたい。

C:技術士は技術力、情報収集・分析力があり、アウトプットを出しうる。近畿支部などの活動を政策につなぐために提案書作りは必要である。

C:今後の方向付けについて、「日本ではシンクタンクが育たない」という実態を踏まえて活動したい。
技術士法ではこのようなシンクタンクは法の枠にそぐわない。大企業の一部門として研究部門を含みシンクタンクらしいものがあるが、国が意思決定のために利用するので金は国や自治体が出す。 ネットワークを使って知見を集めて情報を整理して、分かりやすく提供するシンクタンクへの道筋をつける努力はできると思う。
例えば藤井聡京大教授「公共事業が日本を救う」という技術士会での講演(2月5日)は、藤井先生が多くのデータを持っておられ、これを有効に使い、社会に提言することは有効である。

C:高速道路について道路会社は建設すべく熱心である。技術士集団が良質で安価な能力集団になりうることは、徐々に社会に認められてきている。例えば、経産省からの業務を受けて対応した。

C:自治体の検討委員会などは、大学の先生がトップに立つことが多いが、十分ではない。

→それは技術者にとって壁ではなくて、努力不足といえる。技術士の試験は難しいが合格してもフォローがない。しかし、技術士は死ぬまで有効な資格でこれに満足している。周囲、社会に認めてもらう努力が必要である。12回シリーズの成果を次につなぎたい。努力してマスメディアに繋がったのであり、壁ではない。

C:今回の経験は貴重な財産である。第4次科学技術基本計画の中にも技術について記載されている。

外部から見て

C:技術士の方にはしっかりした考えはある。これが上手く繋がり、具体的にアウトプットになっていないように見える。技術士会ができる案を売り込む、自ら動くことが技術者の役割と思う。

C:技術士会は20部門あり、難しい団体であることは分かった。それぞれ立場も色々ある。これから有機的に結合するためには会(まとまり)がいる。情報発信するためにももっとオープンにする工夫がいる。例えば、大学の先生や技術士の交流など、徐々に動いていけば、情報発信について協力する場面も出てくる。

 

★日ごろの関係者の多くの想い、本音で出てきた。今後、粘り強く継続して活動に繋げたい。

文責 山本泰三)


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