化学部門の技術士として<自分らしさを基にしたビジネスモデル>
化学部会(2011年12月度)研修会報告
日 時 : 2011年12月10日(土) 15:00~17:00
テーマ : 見学
講演1 化学部門の技術士として -自分らしさを基にしたビジネスモデル-
丹生 光雄 技術士(化学・総合技術監理部門) タンジョウ技術士事務所
1.企業での技術経験
はじめに技術士になるまでの経験について簡単にお話しする。大学では地質学鉱物学を専攻し、住友化学株式会社に入社した。在職中はボーキサイト資源の調査活動からはじまり、品質管理、アルミナ製品の研究開発、セラミックス製品の研究開発、赤泥(ボーキサイトの廃棄物)の有効利用法の研究開発などを歴任した。本題とは離れるがアルミニウムの製錬は、ボーキサイトをNaOHに溶解してAl2O3・3H2Oとした後、焙焼してAl2O3とし、電気分解により金属とする方式であるが、日本ではコスト面と環境面で、アルミナ、アルミニウムともに製造中止となり一部の高純度アルミニウムを除きすべて輸入になってしまった。
2.私の技術士としての業務の概略
技術士に合格したのは在職中の平成11年、専門はセラミックス及び無機化学製品である。退職した平成12年から技術士としての業務を始めたが、大きく分けて5つの業務に集約できる。
①技術士の育成業務(受験セミナー講師、修習技術者・技術士補の指導)
②技術士会での活動(日本技術士会 近畿本部、大阪技術振興協会、兵庫県技術士会)
③技術コンサルタント・アドバイザー(府・県・市の機関、商工会議所)
④環境審査員(人)(ISO14001,EA21)
⑤民事調停委員(大阪地方裁判所)
これらの中で④は技術士らしい業務とはいえないかもしれないが、タンジョウ技術士事務所の収入源としてのウエートは大きい。逆に①、②等は、ボランティア的ではあるが技術士としてやりがいがある業務である。これらの業務のバランスが重要と考えている。
3.民事調停委員の業務の紹介
⑤について紹介する。民事調停とは、裁判に至らずに解決するための手段のひとつであり、調停主任(判事)と調停委員2名程度(弁護士・技術士など)で構成する。裁判とは異なり強制力は無いが、簡易な手続、迅速な解決、費用安価、柔軟な合意的解決、非公開が特徴であり、紛争当事者の合意を斡旋することが目的である。
調停委員は、非常勤の裁判所職員/特別職国家公務員であるが、私企業からの隔離や、他事業への関与、政治活動などは制限を受けない(但し地位を利用した選挙活動などは禁止)。最高裁判所から所属裁判所を決めて任命され、任期は2年であるが70才未満を条件に更新可能である。
調停委員の資質として次が求められる。
A)公正
B)豊富な社会常識・広い視野・柔軟な思考力・的確な判断力
C)人間関係を調整できる素養
D)誠実・協調性・奉仕的精神
E)民事調停への理解・時間的余裕
F)健康
心構えとしては、国民の信頼を得るための日ごろの努力、研鑽(法律知識・一般常識・調停の技法)、秘密保持、当事者との接触や金品授受の禁止、調停主任との連携、「聞き上手」の調停、態度などが重要である。調停委員等の資質は技術士向きであり、ご関心のある方にはお勧めしたい。
4.技術士のビジネスモデルについて
技術士は名称独占資格であり、業務独占資格とは異なることに留意が必要である。定年型技術士は生涯継続できるようなモデルが適切であるが、名称独占資格ゆえの楽しさへの評価もしている。企業内技術士は、自己努力、企業内や社会での知名度のアップのために他の技術士との連携などにより、資格の評価を高めていただきたい。独立技術士は一部の部門を除いて非常に困難ではあるが、他の資格との複合や連携により活路を開くことが大切であると考えている。
私の約10年間の技術士業務の経験をありのままにお話したが、特に若い技術士は、出来るだけ早く自分独自のビジネスモデルを確立して技術士業務を大いに楽しまれるよう期待したい。
(文責 藤橋雅尚 監修 丹生光雄)