原発事故に伴う放射能汚染問題について ~放射性物資を含む焼却場合について~
著者: 苅谷 英明 講演者: 鍵谷 司 / 講演日: 2011年12月12日 / カテゴリ: 講演会 / 更新日時: 2012年08月18日
【環境研究会 会員発表会】
日 時:平成23年12月12日(月)18:30~20:30
場 所:アーバネックス備後町ビル3階ホール
講演 2 「原発事故に伴う放射能汚染問題について」
~放射性物質を含む焼却灰について~
講師:鍵谷 司氏 技術士 (環境、衛生工学、建設) 第一種放射線取扱主任者
1)原子力発電について
2007年の電源別発電量は、原子力25.6%、石炭25.3%、天然ガス(LNG)27.4%、石油等13.2%、水力7.6%、地熱及び新エネルギー1.0%となっており、原子力発電の依存が高い。
発電コストは従来4.8~6.2円/kwであったが、事故後の試算では12.4~13.4円と風力並み(10~14円/kw)であるが、依然として安定エネルギー源であり、CO2排出量も少ない。ウラン235の核反応に伴うエネルギーは1g当たり2000万kcalで石炭の300万倍である。
原子力の安全対策は、
①止める(制御棒を用いて核反応を止める)、
②冷やす(止めても5~7%の自己崩壊熱を放出
③放射能を閉じ込める(燃料のペレット化、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋の5つの壁)からなる。
いずれも電源が長期間にわたって停止することはないとの想定で設計、建設されている。外部電源は、巨大地震により鉄塔が倒壊し、また米国からの技術であったため、竜巻やテロなどを意識した構造としていたため、非常用電源を地下に設置していたため、津波により内部電源も全て失われてしまった。
その結果、核反応を抑制することが出来なくなり、発生した水素が原子炉建屋内に漏出し、爆発により放射性物質が原子炉外へ放出され、風に運ばれて広範囲にわたって放射能汚染を引き起こした。とくに遠方でも風下は危険である。γ線は密度の大きい鉛などで遮蔽できる。
2)東日本大震災で発生した災害廃棄物の現状
災害廃棄物の量は、推定で岩手600万t、宮城1,600万t、福島300万tで、総計で約2,500万tと試算されている(※阪神淡路大震災時は1,400万t)。阪神淡路大震災と異なり、津波により軽い木くずが運ばれ、色々なものが混合しており、手選別が必要となっている。これらの廃棄物は、法律上、一般廃棄物であることから自治体に処分責任がある。
処理において問題なのが、発生量が膨大すぎて地元では対応できないことであり、
①仮設の保管場所
②放射性物質が含まれている場合がある
③塩分がある場合に炉を損傷する
④有害な化学物質が含まれている場合がある
また、廃棄物の自然発火が問題になっている。
下水汚泥焼却灰など焼却により放射能が濃縮されることが問題になっている。8,000Bq/kg以下であれば、管理型最終処分場での埋め立て可能であるとしているが、埋立作業時の作業員の被ばくについても考慮する必要がある。
3)質疑応答
Q:海面埋立てによる放射能を含んだ焼却灰の管理について
A: 管理型として対応しやすいであろう。広域処理の話が挙がっているが他府県へ持出す出すことになり、汚染拡大のリスクがあるため、広域的な処理はほとんど進んでいない
Q: 除染の費用は
A: 5~10万円/tと考えても、膨大な費用になる。
Q: コンクリートからの放射能除染方法は
A: 一般的に表層に付着しているので、表面を削り取る方法が効果的とされている。
Q: 原発の最終的な廃棄物処理は
A: 原発の廃炉撤去により100万kW級の原発で約50万tの廃棄物が発生する。その内、高濃度廃棄物は1%弱あるが、放射能が減衰する期間、1万年ほどの管理を必要とする。日本でも候補地は複数あるが、住民合意を得るのは難しい。
(監修:鍵谷司 作成 苅谷英明)