東北視察に参加して

著者: 山崎 洋右 講演者:  /  カテゴリ: 東北地区  /  更新日時: 2012年04月23日

  

環境研究会 東北研修旅行 参加者報告

日 時:平成2432021
場 所:宮城県

東北視察に参加して

山崎 洋右  技術士(機械部門)

平成24年3月20日,21日の環境研究会主催の東北視察に参加した。朝9時15分に仙台空港に着き、チャーターされたバスで仙台空港の周辺を見たとたん、自然災害の恐ろしさを痛感した。震災の津波で破壊され、ヘドロの海と化した仙台空港は10月下旬に復旧したが、空港周辺はがれきやヘドロこそ撤去されていたものの、未だ更地のままであり、所々に壊れた家が無残にも残されていた。

仙台市内に入ると、震災の被害は殆ど見られず、普段と全く変わらない生活をしているように思えた。しかし、写真1のように、同じ仙台市でも山を切り開き造成された団地では、盛土の部分で、地崩れが生じていた。倒壊した家は撤去されていたが、崩れた地面はそのままであった。

      写真1:地滑り(仙台市内)

造成地では切土と盛土の境界部分が一番地震に弱いとのこと。家を買うときは要注意。

東京電力の福島第1原発1~4号機の敷地高さ5.7mに対し、東北電力女川原発の敷地高さは14.8m。津波高さはどちらも13mであったが、明暗を分けた。福島第1原発は津波の被害が大きく、最悪の事故を起こした。大量の放射線物質まき散らし、炉の撤去まで40年も50年も要するとんでもない負の遺産を残した。一方、女川原発は多少の被害はあったものの3機の原子炉全機が12時間以内に冷温停止できた。

1980年代初め頃の建設当時に敷地高さを決定する時、東北電力は貞観大地震の津波も考慮に入れ、敷地高さを決めたとのこと。当時、13mの津波を想定して決めたかどうかは定かでない。

原発の敷地高さ関する東日本大震災の教訓は、下記であると思った。

1.過去の地震で津波がどの高さ迄来たかを徹底的に調べること。(事実の把握)
→平安時代の869年の貞観大地震も今回の東日本大震災と同規模と言われている。

2.過去の津波高さからどの程度敷地高さの安全率をとるべきか検討すること。

仙台市から石巻市に近づくにつれ、海岸沿いは津波の影響をまともに受けており、至る所で写真2の様に津波を受けた家が流され、更地になっている。又、写真3のようにがれきが山積みにされているところが散見され、がれきの処理が未だ殆ど進んでいないことが伺えた。 

      

          写真2:津波被害(石巻付近)           写真3:がれき置き場 

東日本大震災では、自治体の予想高さの2倍も3倍もの高さの津波が来たため、沢山の尊い命が失われた。
女川町では、写真4の様に、海から山側に向かって津波が押し寄せ、町が壊滅状態になっている。又写真5の様にビルが真横に倒壊している。この津波で女川町は約1万人の人口の内、約1割にあたる約1,000人もの方が亡くなった。何とも痛々しいことか。
自然災害に人間は無力ということをあらためて思い知らされた。津波が押し寄せれば人などひとたまりもない。津波が来たら逃げるのみ。日頃から震災時の津波の非難ルートを綿密に設定し、住民に周知徹底・訓練することが如何に大切か思い知った。

この震災で、多数の人が家族、愛する人、友人、知人を亡くし、家や職も失った。それがどれ程苦痛で、どれだけ心を傷つけられたか想像がつかない。辛く、長い日々ではあるが、我慢強く、どうか負けることなく復興できることを切に願う次第です。
女川町の高台の献花台に沢山の花が供えられていた(写真6)。震災で犠牲になられた方々の御冥福を祈るばかりである。

     説明: E:\メインフォルダーE\山崎H24(2012)\山崎写真H24(2012)\写真生データH24(2012)\デジカメH24(2012)\03月\東北視察(H24.3.20,21)\IMG_0760.JPG   

       写真4:津波被害状況(女川町)                    写真5倒壊したビル(女川町)

      写真6:献花台(女川町) 

今後30年間に東海地震、東南海地震、南海地震の発生する確率は極めて高く、関東から九州迄影響を受ける。私たちが住む近畿地方も今回の東日本大震災は人ごとではない。

1707年の宝永地震は東海・東南海・南海の3連動地震でマグニチュード8.6といわれている。又、1605年の慶長地震(マグニチュード7.9)も3連動地震といわれている。1854年の安政東海地震は東海・東南海連動でマグニチュード8.4、その32時間後に南海地震が発生している。

最近では1944年の東南海地震(マグニチュード7.9)、1946年の南海地震(マグニチュード8.0)であるが、既に65年以上経っている。又、東海地震は安政から150年以上起こっていないため、3連動地震(マグニチュード8.5以上)がここ30年以内に生じることは十分想定しなければならない。そのためにも今回の東日本の貴重な教訓を活かし、次の地震への備えが非常に重要である。

今回の視察で「当たり前に思える普通の生活」の大切さ・有り難さ、「不平不満」が罰当たりであること、「啀み合うことの愚かさ」(人は助け合う動物)をあらためて痛感した。又、教訓を活かすことが如何に難しいかということも切に思い知らされた。

以上 


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