東北電力女川原子力発電所の東北大震災時の対応及びその後の経緯

著者: 外山 榛一 講演者:  /  カテゴリ: 東北地区  /  更新日時: 2012年04月24日

 

環境研究会 東北研修旅行 参加者報告

日 時:平成24320 21 日
場 所:宮城県仙台市内

 

東北電力女川原子力発電所の東北大震災時の対応及びその後の経緯

外山 榛一 技術士 (機械・総合技術監理)

 

1.講演会場・講演内容及び講演者

(1)講演会場:株式会社復建技術コンサルタント本社会議室 (仙台市内青葉区)
(2)講演者:古舘 淳光 様
(3)所属:東北電力株式会社 火力原子力本部 原子力技術訓練センター 所長
(4)住所:〒980-8550 仙台市青葉区本町一丁目7番1号
(5)TEL:022-799-6216     Email:furudate.junko.fu@tohoku-epco.co.jp
(6)講演時間:約1時間 パワーポイントソフトを活用しての講演

2.女川原子力発電所の発電能力及び被災状況

(1)発電能力:1号機52万kW、2号機82kW, 3号機82kW,沸騰水型軽水炉

(2)震災当日の震度:地震加速度567.5ガル、震度6弱、H17.8.16の地震の倍のガル

(3)地震により牡鹿半島全体が1m沈下し、地震後、湾口部の建物は、毎日水につかる。

(4)地震の際、1,3号機は稼働中であり、2号機のみ始動中であったが、自動停止と共に炉内温度は翌日には、100℃以下に冷却された。1号機の炉内冷却水の温度280℃程度であったが、翌日には50℃以下に低下した。3台とも地震後自動停止。

   1,2,3号機とも、使用済燃料貯蔵プールの水が地震の揺れで、わずかに周囲に飛散した。 

(5)補助ボイラーへ燃料を供給する1号機の重油タンクが破損し、約600kL(タンク容量960kL)の重油が海水側に漏洩した。オイルフエンスを周囲に張り巡らせて、重油の拡大を防止した。

(6)外部との通信手段が遮断され、情報のやりとりができなかった。但し、社内保安電話&衛星電話のみ健全で、社内の情報交換はこれらの電話で行われた。

(7)2号機の原子炉補機冷却水系及び高圧炉心スプレイ補機冷却水系が浸水した。取水路から海水が逆流して2号機の建屋内部が浸水したものである。仮設8台のポンプで排水した。

(8)1号機の高圧電源盤が地震の揺れで遮断器が焼損した。その後耐震型に更新。

(9)中央制御室のモニターに異常がなく、発電所外部への放射能の漏洩は無かった

3.被災後の避難状況

(1)震災後、周囲道路がすべて寸断され、地域住民が当女川原子力発電所への避難を要求し、発電所内体育館に受け入れた。従業員を含め発電所構内で働く方々が、道路の「がれき」を撤去した。

(2)水、食料等を外部よりヘリコプターにて発電所内に搬送願った。避難民数は最多で364名。

4.大震災後に採用された改善対策

以下の対策を実施した。
緊急安全対策の策定及び訓練を実施した。 
1号機高圧電源盤の他の遮断器についても耐震型遮断器に交換作業中。
③懸垂型ガイシの採用。
④福島原発の事故情報の収集、改善策の水平展開 等

5.女川原子力発電所が被災後、原子炉内の循環冷却水供給が停止しなかった理由

(1)基本的には、大震災後、5系統の外部電源のうち、松島幹線からの1電源のみ、電力が継続して送電されたため、原子炉の冷却が継続された。

(2)上記以外にも、8台中6台のディーゼル発電機(軽油を燃料として運転)が運転可能で、仮に外部電源が喪失していても、ディーゼル発電機の発電電力により原子炉の冷却が可能であった。

(3)タービン建屋の地下にある高圧電源室が冠水しなかったことにもよる。

6.女川原子力発電所と福島第一原子力発電所の基本的な相違点

(1) 双方の原子力発電所の立地条件

女川原子力発電所は立地高さが14.8m(震災後13.8mに低下)で今回の大震災による津波の高さ13mより高く、発電設備が海水に冠水するリスクの影響を受けなかったことが被害を軽微にした基本的好環境である。一方、福島第一原子力発電所の立地は5.7mと低く、震災後の津波の高さ(13m)が防護壁の高さを上回り、発電所周辺が冠水し、結果として発電所への供給電源が全て停止し、今回の大事故に拡大したことは、公知の事実である。

(2)セミナー会場で

女川原子力発電所の立地高さと福島第一原子力発電所の立地高さの違いが、基本方針協議でなぜ差が出たのか質問したが、明確な回答は得られなかった。大震災の最大津波の高さに対する予測値の見解の相違によってそれぞれの立地高さが異なったと予想するが、福島第一原子力発電所の周囲でも過去の津波高さに対する真摯な検討がなされ、女川原子力発電所の立地高さに近い立地高さが採用されていたなら大規模な被害にはならなかったと推定する。 設計段階及び経営方針会議の協議内容は、記録として残し、責任の所在を明確にする必要性を強く感じる。

   

7.参考資料

報告書「東日本大震災による女川原子力発電所の被害状況の概要及び緊急安全対策案の対応」 東北電力 作成


著者プロフィール 著者
> 
主な経歴
> 
資格
> 
その他
>