“学都「仙台・宮城」サイエンス・デイの取組み”を聞いて

著者: 綾木 光弘 講演者:  /  カテゴリ: 東北地区  /  更新日時: 2012年04月26日

 

環境研究会 東北研修旅行 参加者報告

日 時:平成24320日 1020分~11
場 所:宮城県仙台市内 復建技術コンサルタント㈱ 会議室 

“学都「仙台・宮城」サイエンス・デイの取組み”を聞いて

綾木光弘  技術士(森林部門)

はじめに

東北研修旅行に参加し、その災害の凄まじさに大変なショックを受けた。特に石巻はかなり詳細に元の中心街を見て回ることができたのだが、2階建の家屋の1階部がことごとく流され、人も住めない状況でゴーストタウンのようになっていたのは、被害を受けていない自分でさえも、辛く悲しい気持ちとなった。これからの復興に何らかの貢献ができればと願った。

今回の訪問の中で、ちょっと異色で、なおかつちょっと楽しい話題提供が大草氏の活動紹介であった。氏のエネルギッシュで、アクティブな活動ぶりに、喝采を送りたいと思う。東北大学のキャンパスの大きな面積を借り切っての、たくさんのイベントの実施に、大草氏の地域への浸透度、地域からの信頼度の大きさを感じることができた。以下、大草氏の講演について紹介する。

場 所 株式会社復建技術コンサルタント本社会議室
講演者 大草芳江氏(NPO法人natural science理事)
演 題 学都「仙台・宮城」サイエンス・デイの取組み

大草氏の自己紹介とともに、現在の2つの活動についての紹介があり。そのあと、サイエンス・デイについての詳細な説明があった。

 

1)こうした活動に至るまでの、経緯

現在、科学離れ(範囲はその一部を指すことになるが、理科離れということばでも言われている)が言われて久しい。一般の人が、科学に無関心になってきている。これを大草氏は、“リンク切れ”という言葉で説明している。このリンク切れがいろいろな社会問題の根底のひとつとなっているのではないかと危惧している。

   

こうした「自分のケースも含めてリンク切れ状態をなんとかできないか」と思う気持ちが、大学院にいる頃から非常に強くなってきた。自分は、大学での研究と経験を生かして専門家(研究者)と一般人との間に立ち、このリンク切れ現象をなんとかしたいと思うようになっていた。

育ちは、人工の埋め立て地で生活していたので、今から考えると、とても真の自然な状態での生活ではなかった気がしている。しかし、現在都市型の生活をしている人が多く、日本人の多くがこのリンク切れにも繋がっているような気がしている。

このような環境にいると、実世界での応用力が不足してしまっている。また、一方で科学がブラックボックス化してしまっていることも問題である。そこで、結果だけではない、プロセスの可視化・共有化が必要であると痛感している。

 

2)“宮城の新聞”について

2005年から、宮城の新聞の発行がスタートした。内容は、そもそも科学って何だろう? 社会って何だろう? 教育って何だろう? という問いに答えられるような新聞内容である。中高生が分かり、個々の主観を大事にした視線から記事を書いている。これにより、リンク切れをなくそうと活動を始めた。自ら手を動かす(取材する)ことで、私も成長することができた。

 

3)サイエンス・デイについて

2007年にNPOを設立すると同時に、このイベントを始めた。夏休み直前の日曜日に開催している。最近は5000人を越える大勢の参加者があってにぎわっている。狙いは、科学のプロセスを子どもから大人まで五感で感じてもらうことであり、その結果として、科学の多様性を場として体現できると考えている。
昨年は、2011710日に開催しており、その報告書を参考に配布した。会場は東北大学川内北キャンパスである。共催は東北大学と産業技術総合研究所東北センターで、後援に多くの団体も参画してもらった。76団体の出展者があり、大人から子供まで5800人の来場者で賑わった。
講座プログラムが24講座、86回実施し、体験プログラムは41ブースで行った。優秀な出展物には表彰制度もある。報告書には、当日の楽しそうな写真が満載してある。

  

出展物の一例をあげると、有機半導体で、トランジスター作成というコーナーがあった。本来結構難しい内容であるが、9割が分かりやすかったとアンケートに答えている。

これは、まず出展者が、まず面白いと思うことを、他人に理解してもらえてうれしいと思うことからスタートしている。プロセス共有型、ないしは科学コミュニケーションともいえるものである。こうした試みにより、自然に対する人間の欲求が、可視化されることにより、多様なそのプロセスを共有することになるのである。

現在、当NPO10名で運営しているが、本企画は概ね一人で担当した。当日は実に多くの人に助けられて運営できていいる。これからも、共催団体、協賛団体のこれを応援することのメリットも考えて、益々発展させていきたいと考えている。

 


著者プロフィール 著者
> 
主な経歴
> 
資格
> 
その他
>