折立団地視察
著者: 佐藤 文彦 講演者: / カテゴリ: 東北地区 / 更新日時: 2012年05月01日
環境研究会 東北研修旅行 参加者報告
日 時:平成24年3月20~21日
場 所:宮城県
折立団地視察
佐藤文彦 技術士(環境部門)
【はじめに】
仙台市郊外には、多くの宅地造成団地が存在するが、40ほどの団地で盛土による震災被害を受けた地域があり仙台市が現地再生方針を示した地域のひとつ。仙台市郊外住宅団地の中で、特に盛土滑落被害が大きかった地域が折立団地である。
【概要】
折立団地は仙台市西部にある、1965~72年度に宮城県住宅供給公社が、谷に盛土した造成地。今回の震災で入居者の7割が建物崩壊や避難により退去している。
折立団地の位置
【被害状況】
元来の造成前の原地盤は、谷の深さが10m程度と深く刻まれた上に、谷筋が数本入り組んだ土地である。盛土被害は特に、切り土と盛土の境界付近で被害が大きかった。地震振動により盛土部分の土砂が谷筋に沿ってずり落ち、その結果宅地面が1m程度傾いてしまった。一方、切土であったところに立地している住宅には、甚大な被害は生じていなかった。
切盛図(青:切土 黄・赤:盛土) 赤の箇所が地震の振動で谷筋に沿ってずり落ちていった
敷地が傾いた宅地(建物撤去済み) 写真の手前側より向こう側へ約1m落ちている
【応急措置】
宅地山留擁壁が地滑りにより膨らみ、アースアンカー設置による補強工事や地下水湧水抜き等、滑落防止措置が取られていた。
【予防措置が取られていた他地区での滑落被害状況】
近隣の造成宅地では1978年6月12日に生じた宮城県沖地震を受けて、予め杭施工による地盤補強を施したが、そこでは地盤のずれが小さかった。本造成団地でも、宅地造成時に杭や地盤改良等の施工を実施すれば、被害は抑えられたのかもしれない。
地滑りにより傾いた宅地擁壁
地下水湧水抜き(横穴水抜きボーリング)施工状況
(地下水位上昇による法面崩壊を防止するために、自然流水の水抜きを行っている)
【今後の期待】
山谷を切り開いて宅地造成盛土を施す場合に、開発造成時の要件として、杭施工等の地盤補強を行わないと、同様の被害が懸念される。造成時に地盤補強未施工の造成宅地は、早急に地盤補強を施す必要がある。追加施工の費用負担、造成業者の責任問題等があるが、それらをクリアして、同じような被害を生じさせない仕組みづくりを、行政と共に早急に構築されることを期待する。
以上