チップ型電子部品の電極形成技術
著者: 上田 修史 講演者: 久保田 正博 / 講演日: 2013年07月18日 / カテゴリ: 講演会 / 更新日時: 2013年08月29日
近畿本部 化学部会(2013年7月度)講演会報告
日 時 : 2013年7月18日(木) 18:30~19:30
場 所 : K of K's
講演 :チップ型電子部品の電極形成技術
久保田 正博 技術士(化学部門) 株式会社 村田製作所
1.チップ型電子部品とは
電子機器の基本は増幅器である。増幅器が機能するには、能動部品(ICやトランジスタなど)のほかに、受動部品(コンデンサ、インダクタ、抵抗など)が必要で、何らかの方法で基板に実装する必要がある。
受動部品の実装方法としては、1980年代以前は挿入実装方式が用いられてきたが、1980年代以降は実装密度の点で有利な表面実装型が主流になった。その結果、チップ型電子部品が必要となった。
図1 受動部品の実装方法の変化
2.チップ型電子部品の小型化
携帯機器の高機能化にともない、チップ型電子部品の所要数が増えている。代表的なセラミック系電子部品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、3G/フィーチャーフォンでは1台当たり300~400個搭載されていたが、LTE/スマートフォンでは500~700個に増加した。
携帯機器の小型化・高機能化に伴って、チップ型電子部品の小型化要求も強まっている。スマートフォンやタブレットPCといった、高機能携帯機器の需要拡大により、0603サイズ(0.6×0.3×0.3㎜)や0402サイズ(0.4×0.2×0.2㎜)が主流になってきている。
図2 チップ型電子部品の小型化
図3積層セラミックコンデンサ(MLCC)の小型化の推移
3.チップ型電子部品の小型化に必要な技術
一般的なチップ型電子部品は、以下のような工程を経て作られる。
①成形 :セラミック粉末をバインダー中に分散させたスラリーをシート状に成形する(グリーンシート)。
②電極形成 :グリーンシート上に電極ペーストを印刷して配線形成する。
③積層・圧着 :配線形成したグリーンシートを積層して熱圧着し、積層体にする。
④焼成 :積層体を所望サイズに分割したあと、熱処理してセラミックと電極を焼結させる。
⑤加工・完成 :外部電極を焼き付け、検査などして出荷できる状態にする。
チップ型電子部品を小型化するには、電極をより微細に形成する技術と、絶縁(誘電)層をより薄く形成する技術が必要である。今回は、電極形成技術に絞って説明する。
図4チップ型電子部品の一般的製造方法
4.チップ型電子部品の小型化に必要な電極形成技術
講師が専門とするチップインダクタ電極形成では、小型化のために電極を微細化すると、断面積が小さくなり、直流抵抗が上がって特性が悪くなるというジレンマがあった。このジレンマを脱するには、アスペクト比を上げるか、断面を矩形化して断面積を大きくする必要がある。
従来のスクリーン印刷法ではアスペクト比UPや断面矩形化は困難である。一方、フォトレジストを用いた薄膜エッチング法では、工程が多く、真空系を用いることもあってコストがかかりすぎる。
そこで、電極ペーストバインダーに感光性樹脂を用いた感光性ペーストを使い、フォトリソグラフィ法で配線形成する方法(感光性ペースト法)が提案されている。この方法であれば、電極を微細化しつつ断面積をUPできる。しかし、薄膜エッチング法ほどではないもののコストUPになる問題があり、対策が必要である。
図5 チップ型電子部品の電極形成方法
5.参考文献
1) 相良岩男著 「チップ型電子部品のできるまで」(日刊工業新聞社)
2) TDK(株)HP 「Tech Journal 『積層セラミックチップコンデンサ』」
3) Materials Integration
Vol.26 No.03 (2013) p.1, 53
Q&A
Q 基板との接続はハンダしかできないのか。
A 導電性接着剤などが考えられるが、接続信頼性の点でハンダが使われていると思われる。
Q 小型化はいずれ限界に達し、受動部品はICに取り込まれるのでは。
A さらなる小型化のため、部品内蔵基板による方法などが検討されている。IC取り込みによる受動部品減少は、以前にかなり言われていたが、現状ではむしろ増加している(コスト上の問題?)。
文責 上田修史、監修 久保田正博