人工衛星からみた地上面の観察と解析

著者: 上田 泰史 講演者: 竹原 明伸  /  講演日: 2013年11月26日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2014年01月17日

 

公益社団法人 日本技術士会近畿本部登録 環境研究会 第62回特別講演会要旨

日時;2013年11月26日(火)1830分~2030
場所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール

 

講演 人工衛星からみた地上面の観察と解

 講演者:竹原明伸 (太成学院大学 人間学部 教授)

はじめに

20年前からコンピューターを用い、気象衛星からのデータ受信システムを開発して工業高校や大学の授業に活用しながら研究をすすめてきた。
本日は気象衛星NOAAからのデータによるリモートセンシング活用についてお話する。

1.気象衛星から見た地球

(1)手軽になった気象観測衛星のデータ受信

NOAAはアメリカの気象衛星で、高度800kmを、北極、南極を周回している極衛星である。この他にもGOMS(ロシア)、GMS(日本)、GOES(米国)等がある。気象衛星のデータは自作可能なアンテナで手軽に受信できるようになっている。
ターンスタイル・アンテナは安価に作成でき、受信できた時の喜びは大きいものがある。小学生が大学研究室を来訪した際にも大いに興味を示してくれた。観測支援システムを2年くらいかけて自作し、地表面の温度分布を計算できる。
気象衛星データに関連した分野で以下の項目がある。

・温暖化(間違いなく進んでいる)の影響
・ヒートアイランド問題
・頻発する台風等の災害対策
 (最近のフィリピンを襲った台風、過去のジェーン台風の女性名の由来紹介や伊勢湾台風、室戸台風等の思い出を紹介)
・エネルギー問題
・生活習慣・生活行動の中に見る気象の影響
・季節病の解明

(2)衛星システムの構成

太成学院大学環境観測システム構成図の紹介。
パラボラ・アンテナ、気象計測センサー、ターンスタイル・アンテナ、ヘリカル・アンテナを介して、受信システムのレシーバーやコントローラーでリモートセンシングを行っている。

観測項目は、
・気象生成GOES(GMS)雲画像受信システム            静止衛星
・気象計測、温度、湿度、気圧、風向・風力、雨量            センサー
・気象衛星NOAA  ART雲画像受信システム             極軌道衛星
・気象衛星NOAA  HRPT地表観測画像受信システム     極軌道衛星

(3)気象センサーによる計測データおよび環境観測支援システム

コンピューターの画面表示内容やWeb画像データベースの紹介。

 

2.宇宙から見る<大阪>

(1)地球観測衛星ランドサットの画面を見る 

地球観測衛星ランドサットによるリモートセンシングで、大阪の町の様子も楽しむことができる。住んでいる町の再発見に繋がり、古墳等の位置特定など宇宙考古学ともいえる。ランドサットの分解能は地表30mに及び、細かいデータも見つけることができる。

元々のランドサット開発の目的は、砂漠の中の物体を発見することであったそうである。ランドサットの応用例として反射率の違いから、植物の状態を判別することができ、森林の生育状態がわかり、地表面の様子から大雨の地滑り予想や深層崩壊も予測できる。
また。資源探査、地質調査、植生、環境計測、気象観測にも応用できる。
ランドサットはメリーランド大学のWebサイトからダウンロード可能である。日本の気象 衛星「ひまわり」に興味をもったきっかけは、文部科学省から工業高校で情報技術に関するコンピュータを活用した授業の要請であった。ひまわりの画像には学生も興味を持った。

NOAAは極軌道を回る気象衛星で地球を1時間30分で一周しており、2回目の周回で1回目と位置の違う画像が撮れる。高度833㎞からカメラ角度110.8度で2,700㎞の幅をセンシングできる。

(2)リモートセンシングとは(遠隔探査)

リモートセンシングを行うことで以下の技術関係分野に適用可能である。
資源探査、地質調査、植生、環境観測、気象等でこれらの具体事例として、先日の台風の位置や、細かい所では竜巻の画像も確認できた。
中国の黄砂やPM 2.5の飛散状況も把握できる。

<質疑応答>

Q:資源探査など、地下の状況もわかりますか?

A:わかります。資源探査衛星では、噴火によって地表は平たくないところがあり鉱物資源の状況把握が可能です。実用例として、新しい工場を建てる際に工業用水くみ上げのため地下水を探知することがあります。

Q:システムエラーはおこりますか?
A:ほとんどおこりません。

Q:災害予測で、深層崩壊、表層崩壊、雨量はわかりますか?
A:水は反射するので広範囲にわかります。

Q:黄砂はリモートセンシングで見分けられるものですが?

A:黄砂は地表200300mを這うように流れています。九州の大学で黄砂の飛散状況を調べられています。リモートセンシングで飛散してくる方向がわかります。ただ、PM 2.5と黄砂の判別は出来ないです。我々の装置だけでは、・・・

Q:衛星データを受信することは大変だと考えていましたが身近に感じられました。我々でも簡単に受信することが可能ですか?

A:ハードルは高くありません。中古の受信機は57万円位の物が日本橋等で買えます。パソコンも最新でなく3世代位前の物がよろしいです。研究室に来ていただければハウツーについてお教えできます。

(文責 上田泰史  監修 竹原明伸)


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