水素エネルギー利用の現状と将来の展望
著者: 綾木 光弘 講演者: 外山 榛一 / 講演日: 2015年04月24日 / カテゴリ: 講演会 / 更新日時: 2015年05月27日
公益社団法人 日本技術士会 近畿本部登録 環境研究会 会員講演会要旨
日時;2015年4月24日(金)19時00分~20時30分
場所;大阪市 アーバネックス備後町ビル3階ホール
講演1:水素エネルギー利用の現状と将来の展望
講演者:外山榛一 技術士 (機械・総合技術監理部門)
はじめに
地球の環境を考える上で、大気中の二酸化炭素の急激な増加は、大きな問題となってきている。これを解決するため、水素エネルギー利用が大きく注目されてきている。しかしながら、コスト・インフラ整備の点で課題が大きい。今回の講演では、その課題と将来性について、客観的に述べてみたい。
講演内容
ここ100年を顧みると、地球の温暖化が統計的にも顕著であり、炭素―二酸化炭素循環の仕組みに限界が見えてきている。また、化石燃料の埋蔵量を考えると、永続性を持った化学資源の利用が急がれる。その代表格が水素を利用するシステムである。無尽蔵でハイパワー、クリーンと大きなメリットがある。
水素燃料は爆発性において、非常に危険なものという迷信があるが、それは科学的見地からすると大きな間違いである。水素インフラは2050年で、現在の7兆円規模から、150兆円規模へと大きく伸びると予測されている。
日本にとっても資金の海外流失の少ない燃料であり、資源の少ない日本にとって有利で展開をやり易い燃料である。今後国内の水素ステーションは数的にも大きく伸びる。水素貯蔵は、蓄電池による蓄電方式に比べ、出力が大規模になるほど優位性が増してくる。
再生エネルギーの電力で、水素を貯蔵する技術が開発され、その貯蔵された水素により、再び電力に戻す方式は、エネルギーロスが20%に過ぎないので、燃料電池は、水素を燃料とし、化学反応のエネルギーで電気を生み出す化学発電機械の一種と言える。
燃料電池の方式として、固体高分子型、固形酸化物型のものやリン酸型のものが代表的なものである。発電反応原理について、さらにはセル構成要素について詳細解説を行いたい。燃料電池について、その種類によって、反応温度や発電効率が違ってくる。
具体例として、自動車メーカーの燃料電池車の性能を示す。燃料電池車は、電気自動車と比較して、燃料充填時間や航続距離等で優位にたてる。現在、値段は高価であるが、生産台数と共にコストは下がってくる。
さらに、その他の水素エネルギー商品も紹介された。さらには、今後家庭用や業務用燃料電池も普及が予測される。ただ、燃料電池自動車の普及には、白金以外の触媒も入手・利用できる目途を立てないといけない。この開発も待たれる状況にある。
まとめ
EVのほうがFCVより約2倍エネルギー効率が良いとの比較表が公的機関から提示される。
米国ではステラがすでに後続距離300kmのEVを発売中である。
日産も国内で給電STを今年度中に5000か所に増設する計画が進行中である。
EVも後続距離が500kmまで延長可能で、車両価格が50万円下がれば、加速度的に利用が進むと考えている。
ただし、FCVも現状で余剰する夜間電力を水素製造に活用できれば、水素のコストが下がると期待できる。ドイツ国内でもこの動きが活発化している。
いずれにしても、近未来的には、EVとFCVの並立時代が続くのではないかと予想している。
(文責 綾木光弘)
(監修 外山榛一)