「改正フロン排出抑制法」に対応する冷凍空調機器の維持管理の現状と課題

著者: 鈴木 秀男、西島 信一  /  講演者: 外山 榛一 /  講演日: 2017年4月28日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2017年05月23日

 

公益社団法人 日本技術士会近畿本部(登録) 環境研究会 会員講演会 要旨

日 時:平成29428日(金)午後650分~830
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール

演題1:「改正フロン排出抑制法」に対応する冷凍空調機器の維持管理の現状と課題

講師:外山 榛一技術士(機械・総合)

1.関連用語の説明

地球温暖化係数(GWP)、オゾン層破壊係数(ODP)、フルオロカーボン(CFCs)についての用語説明

2.オゾン層の形成及び役割

オゾン層は地球の大気中で、高度約1050kmほどの成層圏に多く存在している。酸素分子が242nm以下の波長の紫外線を吸収して酸素原子に、そして酸素の分子と結びついてオゾンになる。オゾン層は太陽からの有害な波長の紫外線を多く吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たしている。

(1)オゾン層破壊のプロセス及びオゾンホール

フロンは成層圏に達すると塩素を発生し触媒として働き、オゾンを次々と破壊する。成層圏におけるオゾン層破壊物質の総濃度は、1990年後半の最大値から減少傾向にある。昨年度より大幅にホールが減少し、将来に希望の持てる傾向が明白になってきたが、予断を許さない段階にある。

(2)オゾンホール縮小のために対策

民政分野において特定フロン(CFC,HCFC)から代替フロン(HFC)へ転換されること等により今後排出量は大幅に増加する見通しである。フロン回収率は約3割で横ばいである。2030年に70%とする目標を掲げている。代替フロンHFCR32より優れた冷媒の開発が望まれる。

3.指定製品の対象区分

ダイキンは安全性(毒性・燃焼性がない)・環境性(ODPがなくGWPが極力低い)・経済性{再生可能・低コスト再生)・エネルギー効率{世界中の気候帯においてエネルギー効率を向上できる)等を総合的に判断してR32をエアコンに最適な冷媒として採用している。2020年以降の規制に合格しうる冷媒の可能性として、暖房条件、冷房条件ともクリアーし、GWP190EU2020年の規制値150に近い性能を示す冷媒としてR32/R1234ZE(E)の混合冷媒が提示される。

(1)指定製品への表示について

GWP/ノンフロン製品の購入を促すため、指定製品の表示すべき事項を定めている。製品購入者が製品を選択する際に、当該製品の環境影響度の程度を、商品カタログや取扱説明書に多段階表示するなどして、購入者が直感的に低GWP/ノンフロン製品を選択できるような分かりやすい表示となっている。

4.管理者の役割について

管理者の管理意識を高め、業務用冷凍空調機器からの使用時漏えいを防止するため、「平常時の対応と漏えい発見時の対応」を求めている。

「全ての管理者」は、日常的な温度点検や外観検査等<簡易定期点検>を、「一定規模以上の業務用機器」については専門家による冷媒漏えい検査<定期点検>を行う必要がある。

(1)簡易点検の内容について

重点的に確認すべきポイントや点検実施方法などをまとめたガイドラインを政府機関が作成している。管理者自身が実施する内容として「目視による外観点検」がある。

(2)定期点検の内容について

点検方法については、業界団体が策定している冷媒漏えい点検ガイドライン等に準拠した適切な方法で実施することが重要である。管理者は「算定漏えい量報告」の必要がある。充填回収業者による充填・回収証明書は、電子的に管理することで各証明書の交付を不要としている。

情報処理センターの仕組みを利用することで、都度発行される紙による証明書の内容について、電子的に集計することが可能となり、算定漏えい量報告のための集計が容易に行える。

5.家庭用主要4種電化製品からのフロン回収の現状

家電サイクル法では、冷蔵庫、電気洗濯機、テレビ、エアコンの廃棄物の回収が義務付けられている。冷蔵庫、エアコンのみにフロンが内在しておりその回収の現状の説明、そしてフロン回収業務、実験用小型冷却室、透明冷凍冷蔵庫、実験用大型冷凍庫、フロン回収タンク、廃車自動車などからのフロン回収の現状の説明がなされた。

6.充填回収業者に係る取組

第1種フロン類充填回収業者の対しての充填に関する基準、フロンガス回収中間処理業者業務内容の現状と問題点、フロンガス漏洩の調査、回収されたフロンガスの分析及び大型容器への収納に関する説明がなされた。

(1)フロン再生業者について

新たにフロンの「再生」行為を定義し、フロン類破壊業者と並ぶ回収したフロン類の引き渡し先として「第1種フロン類再生業者(国による許可制)を位置づけた。再生フロンが活用されれば、フロン類の新規製造・輸入が抑制され、フロン類の回収率向上や資源の有効活用に資すると期待される。

7.諸外国との排出量推移の比較

今後懸念されるのは、中国、その他中後進国のフロン漏えい量の増加である。世界中のすべての国が協力して、如何にフロン排出を抑制するかが、今後の地球温暖化防止の鍵となる。

(文責 鈴木秀男 西島信一、監修 外山 榛一)