大阪府大高専の「地球環境工学」の授業の報告、来年度(H29)の授業の方針
公益社団法人 日本技術士会近畿本部(登録) 環境研究会 会員講演会 要旨
日 時:平成29年4月28日(金)午後6時50分~8時30分
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール
演題2:大阪府大高専の「地球環境工学」の授業の報告、来年度(H29)の授業の方針
講師:寺川博也技術士(建設)
1.高等専門学校(高専)の位置づけと、技術士会による授業の受託
5年制であるが、大学、大学院への編入、工業高校から高専への編入などの「高専の位置づけ」についての説明がなされた。授業は7名の技術士で構成し9年目になる。現在5年生の8教科を担当している。
(1)大阪府大高専の授業構成
大阪府大高専では、「総合工学システム」教育プログラムが、2008年度にJABEE認定プログラムとして認められた。JABEEの認定を受けたプログラムは、その教育レベルが大学と同等レベルであることが保障される。プログラム修了生は、国家資格である技術士補の資格が与えられ、技術士、第1次試験が免除され、「修習技術者」となる。
(2)これまでの実績と予定
H21~26年まで環境アセスメント、H27から地球環境工学、H29年から資源リサイクル工学と技術英語を担当している。
2.H28年後期「地球環境工学」授業内容
寺川、橘、前山、櫻井、藤田、森、中村(敬略)で15回の授業と中間・期末試験を担当。
(1)「地球環境工学」講義の方針
技術士を中心とする実務経験者による実体験を基にした講義。「国内外の公共事業」「環境アセスメント」も内容に含めている。環境問題を取り組む際に必要な「コミュニケーション」の能力もつけてもらいたい。将来、ぜひ技術士資格を目指してもらいたい。
(2)公共工事は如何に生まれるか?(寺川技術士)
①抽象度を上げて考える
②公共工事とは
③公共工事が実施に至る経緯
④事業を推進する実務者の仕事
⑤環境アセスメントに係る人々
⑥わが国の公共工事入札の変遷
⑦現在の公共工事の特徴などを講義。
(3)環境概論/環境保全/今後の環境問題(橘技術士)
①環境とは/環境の特徴/環境問題/環境と経済
②環境の持続可能性/環境負荷/環境負荷対象と発生の背景
③持続可能性とは何か?/環境の有限性/成長の限界/人間環境宣言
④公害問題/公害紛争と環境庁/日本の自然保護/日本の環境関係法/環境の評価を講義。
(4)「地球環境」を考えるために(寺川技術士)
大きな観点で物事をみるため、次を講義。
①宇宙船地球号
②操縦マニュアル:フラー
③茶碗の水:寺田寅彦
④Powers of Ten(10のべき乗)など
(5)電力需要運用と再生可能エネルギー/大気環境影響評価(前山技術士)
日本気象協会の紹介した上で次を講義。
①電力需給運用と再生可能エネルギー
②再生可能エネルギーの把握・予測技術
③環境アセスにおける大気環境影響評価
④環境影響評価の意義・効果
⑤環境影響評価における環境項目・工場煙突排出ガスの予測の内容・微小粒子状物質(PM2.5)
⑥環境アセスおける大気拡散予測・大気拡散を捉える方法など
(6)地球温暖化概論/気象ビッグを活用した需要予測精度向上(櫻井技術士)
①極端な現象の見方
②そもそも気候変動とは何か?
③疑いのまなざしを受けているCO2
④急激に増加するCO2と極端現象
⑤今後何をすべきか
⑥なぜ気象情報が重要なのか・気象を活用した商品の売上予測、予測気温を用いた需要予測、気象を活用したモーダルシフト、体感気温の活用 ~概要~
⑦需要予測モデルの高度化などを講義。
(7)放射能汚染について/関西国際空港の環境アセスメント(藤田技術士)
①原子力発電所と放射性物質
②放射線による健康影響
③地球温暖化と原子力発電
④原子力発電所の放射線監視と拡散予測
⑤放射線の拡散予測モデルなどを講義。
(8)日本の国際協力と環境方針/ODAの実施事例/海外での環境社会アセスメント(森技術士)
①政府開発援助(ODA)の体系と方法
②ODAと環境問題/国連目標への取組み
③イラク復興支援
④インドネシア首都圏インフラ開発
⑤パキスタン技術教育・職業訓練
⑥大カイロ都市開発
⑦インドネシア・コトバンジャンダム
⑧JICAの環境社会配慮ガイドライン
⑨運用方法/スコーピング・チェックリスト/助言委員会
⑩シエラレオネ電力支援
⑪バングラデシュ・複合サイクル発電
⑫スリランカ・水力開発について講義。
3.H29年度、授業の方針について
技術英語(前期、2時限)・・・・・・・プロジェクトに係る英語
地球環境工学(後期、4時限)・・・・・H28年と同様とする
資源リサイクル工学(後期、2時限)・・(懸案)
(1)技術英語(プロジェクト英語)
海外建設プロジェクトにおける会話を習得する目的とする。リスニング・解説・会話・スピーチを組み合わせた授業とする。できるだけ学生は英語で話をすること。英語は勉強というよりは訓練である。
(2)ペットボトルのリサイクルの問題点
中部大学の武田邦彦教授によると、リサイクルが始まると大量生産、大量消費が始まる。自治体はゴミをリサイクル業者に渡せば、ゴミが減少とカウントする。100本のうち、リサイクルされるのは5~6本程度。
回収されたペットボトルの大半は、蓋・ラベル等の異物を除去した後、外国に流れる。自治体は、回収のため405円/kgを使い、40~50円/kgで中国などに売る。リサイクル全体で自治体は5000億円の税金を使う。学生には、議論の根拠、賛否両論を伝える。
(文責 鈴木秀男 西島信一、監修 寺川博也)