EVショックとAI・自動運転について
環境研究会 第84回特別講演会
日 時:平成30年4月13日(金)午後6時30分~8時30分
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール
演題:EVショックとAI・自動運転について
~電気自動車が及ぼす社会的影響とその対応策~
講師:大坪 利行 技術士(経営工学部門)
概要
ユニークな経歴の簡単な紹介の後、電気自動車、二次電池と自動運転の技術動向を取り上げて、数年後にはなくなる仕事もあるため、今のうちから備える必要があるということと、近々、関東から関西に拠点を移されるという紹介があり、技術指導などでの海外業務の紹介で結びとされた。
1.電気自動車事情
EV化(世界的にはEV化&AV化と表現することの方が多い)、イーロン・マスク現象は、CO2問題とその対策、国際的な政策的な枠組みからも不可避であり、それに伴い、自動車の構造や生産技術、部品が大きく変わってしまうことに早急に対応できないと仕事がなくなる企業が出てしまう。
2.自動運転とAI&Robot
AV化との技術面での親和性の高さや、近年のAI技術・演算能力の高速化大容量化により、全面的ではないものの、大幅な自動運転の導入が予想される。ドイツが開発しているAVコンピュータは航空機の自動航行システム等と同じで、多くの機種で同じプログラムを搭載してメーカーの色をつけるだけという方向に向かう。また、車体や内燃機関から二次電池の技術がメインになる。
すでに二足歩行はモジュール化しており、人間と共働するロボットも導入され始めている。
角栄モデルで道路特定財源を元に整備されてきた道路やガソリンスタンドが、EVによるチェーンから外れることも考えられる。社会的なインパクトが大きいため政府が急速な導入にブレーキをかけている面はあるが、AV化、自動運転は不可避な流れである。
3.PDCAからOODAへ、新素材、他業界への進出
従来のPDCAから、よりスピード感のあるOODA(Observation Orientation Decision Action)に移行している。新素材の実用化にともなって、これで作れる部品や、EVになっても使える装置、EV特有の技術などを開発していかないと生き残れないメーカーが出てくる。このためにも他業界への進出可能性を検討して展開していく必要がある。
質疑
Q.情報部門の技術者だけで手がけると味気ないものになると聞いたことがある。心理など他部門や人文系などの専門家を参加させるべきではないか。
A.それは、あり得る。
Q.すでにガソリンスタンドの廃業が増えているがさらに加速するのか。また、AVショックにより事故がなくなると保険業界も消滅なのか。
A.保険業については、影響はあるが、事故時の責任の処理などが必要である限り業界としてはなくなることはない。
Q.自動運転は将来的には一般道まで広がるのか。
A.100%というのはあり得ないので、事故時の責任の問題はなくならない。全面的な自動運転でなく、区間などを限定した導入になるのではないか。
Q.水素エネルギーは、技術的というより政策的な問題かもしれないが、終わってしまうのか。
A.エネルギーとしては残るが、自動車は水素を飛び越えて電気にいってしまう。部品工業界の加盟会社には今から備えるように呼びかけている。
講師からの補足
若い世代が自動車産業に不安を感じるのは、彼らが「自動車産業は落ち目だ」と思っているからだ。自動車メーカー各社トップ自らが「100年に一度の時代変革」とか「いま我々は時代の崖っぷちにいる」といった主旨の発言をするのだから、若い世代に「これから先、この産業は落ち目になる危険性が高い」と思われても致し方ない。
自動運転化、パワートレインの電動化、通信によるコネクテッド化という3つの技術領域に加えて、シェアリングエコノミーの台頭によるクルマのモビリティ化が進む中、機械屋が中心の自動車産業界がITクリエイターの世界へと大きく変貌する必要がある。
そうした自動車産業の将来がはっきり見えない時に、わざわざ大変な思いをしてまで自動車産業で働きたくないと思う若者が多いのは当然だが、航空機などの他産業へ転換できるのはごく一部の企業だけなので、規模の大きい自動車産業内での変革・革新が求められる。
文責 野口宏、綾木光弘 監修 大坪利行