人工知能の概要を学び共に考える

著者: 寺川 博也、藤井 武  /  講演者: 土井 智晴 /  講演日: 2018年7月2日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2018年07月10日

 

環境研究会(日本技術士会近畿本部登録) 第85回特別講演会

日 時:平成3072日(月)午後630分~830
場 所:アーバネックス備後町ビル3Fホール

演題:人工知能の概要を学び共に考える

講師:土井 智晴 教授 博士(工学)
          大阪府立大学工業高等専門学校地域連携テクノセンター長

概 要

講師は大阪府立高専(当時)、機械工学を卒業後、長岡技術科学大学、制御工学卒業。自身の母校である大阪府立工業高専で、地域との連携、中小企業の支援にご活躍中である。演題は現在注目の人工知能について、その概要と課題についてご講演をいただいた。注目のテーマでもあり、講演会場は満員の参加者となった。

   

1.IT / ICT / IoT

企業における経営資源は、人・もの・金に加えて情報の重要性が認識されており、ICT Information and Communication Technology)による情報・知識の共有が進んでいる。2011年にドイツ連邦教育科学省が提唱したインダストリー4.0 (第4の産業革命、生産プロセスをデジタル化)することによって、大幅な業務改善を行うIoT技術を導入する。これにより機器の稼働状況や温度、湿度といった情報などをビッグデータとして集め、パフォーマンスの低下などをAIによって検出し、修理を行うことで、平均故障間隔による保全、より的確な保全を行うという流れが生まれてきている。

2.人工知能とは

人工知能(AIArtificial Intelligence)とは、「計算機による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野」を指す。人間の知的能力をコンピュータ上で実現する様々な技術であり、「2001年宇宙の旅」(1968)のHAL9000、人工知能を備えた架空のコンピュータにより、人工知能が本格的に認知されたといえる。人工知能の技術はコンピュータの複数の技術の発展、組み合わせにより現在も成長している

3.かつての第一次ブームから、現在の第三次ブームへ

人工知能第一次ブーム(19571969)人間の脳神経細胞をモデル化したニューロンモデル,パーセプトロンが考案され、理論的な基盤ができた。第二次ブームは、機械学習を繰り返し計算で決めていく手法である逆誤差伝播法(バックプロパゲーション)により、知識の記述が進んだ。現在の第三次ブームでは、機械学習をさらに重層的に繰り返し計算し、深層化(ディープラーニング)の技術が進んでいる。

4.人工知能に係る一般的な疑問

人工知能については、次に示す素朴な疑問を多くの人が感じているであろう。

①簡単に使えるのか?
情報科学の環境が劇的に変化している、その気になればPCさえあれば使える。情報処理に関する基礎知識が必要、素人には厳しいが上の前提があればやる気次第である。

②費用はどれぐらいかかるのか?
自分で学べば,数万〜数十万円(講師が自作した場合)、業者に依頼したら費用は青天井。費用を見積もるには仕様が必要、この仕様が作ることが人工知能を活用するポイントになる。

③どれくらいの成果がでるの?
そもそも,人工知能にさせたいことはなにか?を明確にする必要があり、費用対効果を意識する必要がある。得たいものが不明だと仕様を作れないし、費用算出もできない。
現在困っていること←解決する方法←得たいものと考えを進めるとよい。

   

5.大阪府大高専が取り組んでいる事例

①早川教授の例
構造物の亀裂をAIで診断する。人手不足の解消、自動化による生産性の向上と低価格化につながる。

②専攻科実験(鰺坂准教授)の例
箱ライブラリという取り組みにAIをプラスし、本を読む機会が減少を食い止める「まちライブラリ」活動により人に合わせた本を紹介するシステムの開発を進めている。

③土井研究室の例
レスキューロボット技術で培ったものを草刈りロボットに応用。遠隔操縦スキルを人工知能に代替。AI起業を目指すベンチャー企業と共同開発中。

質疑

Q.逆誤差伝搬法でも最終的に誤差がゼロになることはなく、ケースによっては誤差が増大することもあるように聞いているが?

A.誤差をなくすことは現在の技術では困難であるが、誤差を許容した設計にしておくことによって、実用上支障のないものにすることは可能であり、誤差の増大は条件設定によって防ぐことができる。

Q.CO2削減の様々な取り組みにAIの活用が考えられ、日常の大量のデータが収集されるが、AI自体がそのデータを疑問視することは可能なのか?

A.すでに多くの環境に関わる事業に数多くのAI技術が活用されており、今後ますますその活用が期待されているが、最終的にAIが導き出した結果を信頼するかどうかはAIを利用する本人自身の判断となる。判断を100%AIに任せることはないだろう。

文責 寺川博也、藤井 武  監修 土井智晴