無機膜研究センターの研究概要について
化学部会 見学・講演会(2019年10月度)報告
日 時 : 2019年10月9 日(水) 13:30~16:00
場 所 : 公益財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE) 京都本部
講演2 無機膜研究センターの研究概要について
講演者
: 安原 健一郎 無機膜研究センター 主任研究員
1.無機膜への期待とセンターの目的
無機膜は、高い分離性、耐熱性、化学的安定性、耐酸・耐塩基性を持っているため、触媒と組み合わせた反応/分離一体プロセス(膜反応器)の構築が可能である。しかし実用化は一部に止まっているため、産業化に向けて2016年にセンターを設立した。
RITEが保有する無機系分離膜には、セラミック膜と金属膜がある。図1に示すように、セラミック膜は分子篩機構であり、金属膜は水素原子が金属に溶解し解離する機構である。研究成果と計画については、化学気相蒸着 (CVD) 法シリカ膜を用いたMCH(メチルシクロヘキサン)の脱水素、ゼオライト膜を用いたCO2からのメタノール合成、CVDシリカ膜やPd膜を用いた水素製造、などが上げられNEDOの支援も受けている。
図1 無機系分離膜の模式
2.CVDシリカ膜を用いた、MCH脱水素
水素の安価な輸送手段として、MCHとトルエンを介した方式が期待されている。実現のためには装置のコンパクト化、反応の低温化、低コスト化を兼ね備える膜反応器の開発が期待される。図3が原理の模式図であり、分離膜を有するパイプ状セラミックス基材の外側に脱水素触媒を配置し、入口側からMCHを流入させると、出口側からトルエンが流出し基材内側から水素が流出してくる。
図3 膜反応器の模式図
シリカ膜の製造方法は多孔質のセラミック基材の内側に酸素を流しながら外側からシリカ原料を拡散・蒸着させることにより基材の細孔部に高性能膜が均質に、再現性良く生成する。
膜を6本入れた実験機(有効長さ20cm)を作り、熱伝導性を高めるためフィンの有無を含めたテストをした。結果として触媒温度320℃、反応側圧力0.3Mpa、内筒側0.1MPaの条件で転化率80%の結果が得られた。
3.その他の膜を含めた開発について
上述のシリカ膜以外に、ゼオライト膜反応器を用いたCO2とH2を原料とするメタノール合成、CVDシリカ膜/Pd膜を用いたメタンからのH2製造(この装置でカーボンナノチューブの安価な製造も可能)などを手掛けており、産業化戦略協議会を設置して、企業との共同研究を含めて進めている。
質疑
講演終了後、活発な意見交換が行われたが詳細は省略する。
研究所内の見学
講演終了後、バイオ研究グループ、化学研究グループ、CO2貯留研究グループの研究室を見学し、それぞれ説明いただいたが省略する。
文責 藤橋雅尚 監修 安原 健一郎