New Plastics Economyと循環経済
近畿本部 環境研究会・繊維部会・化学部会・農林水産部会
日 時:9月26日 13:30~16:30
場 所:アーバネックス備後町ビル3階ホール
講演2 「New Plastics Economyと循環経済」
講師; 群嶌 孝 氏 同志社大学名誉教授
はじめに
プラスチックは便利で有用なものとして、大量生産・大量消費されてきた。しかしその基本物性(自然分解しにくい)から、マイクロプラスチック問題など課題を引き起こしてきている。講師は循環に対する考え方として、バタフライダイアグラムを紹介され、最小資源最大効率について話された。
1.古くて新しいプラスチック問題
プラスチックは経済成長下で大量に生産され大量に廃棄されてきた。その量が膨大であるが故に古くからゴミ処理として、焼却や埋め立て処理がなされてきた。しかし、焼却時に発生するダイオキシン問題、処分場の不足、廃棄コスト低減のための輸出など、環境汚染に関連する問題が噴出してきた。
資源は有限であることや、人の健康への悪影響(ダイオキシン、環境ホルモン、マイクロプラスチック問題など)対策や、環境への負荷軽減の観点から、循環経済という観点から見直しがなされている。プラスチックの新しい問題点として、散乱問題(陸・河川・海域とも)、資源・エネルギー問題、季候変動問題、経済問題(漁業、海運、観光など)などがあり、整理してみる。
2.使い捨て経済・リサイクル経済・循環経済
原料→生産→使用→ゴミという使い捨ての時代から、使用したモノを生産に戻すリサイクルの時代を経て、循環経済(生産-使用-Renew)の時代に移行していく必要がある。循環経済では、最大循環再利用・モノの質の維持による価値の維持・バージン原料の削減(代替)が基本となる。
3.エレン・マッカーサーの、バタフライダイアグラム
下図はエレン・マッカーサー財団が提起した、サーキュラーエコノミーのモデル(通称バタフライダイアグラム)である。
(引用https://www.re-tem.com/ecotimes/column/2020jan/ )
3つの循環「自然循環(生物循環)・社会循環(物質循環)・自然-社会循環」を提起し、循環3原則として模式化したものであり、左側が自然循環、右側が社会循環、全体として自然-社会循環を示している。プラスチックで考えると、①reuse・recycle・compostによるNew Plastics Economyの構築、②エコシステムへのプラスチック流出防止、③プラスチック生産と化石燃料・原材料の分離、となる。
自然循環(バイオエコノミーとバイオケミストリー)を考えてみる。農業を再生するためには、廃棄物を食料に戻すことが基本の一つである。廃棄物とする前に、食料は保管技術や流通の改善により人的に利用する、家畜飼料とする、コンポスト化する、バイオガスを利用するなど、ゼロエミッションが目標となる。
バイオエコノミーはEUの定義によると、「再生可能な生物資源の生産と、これらを付加価値製品(食品~バイオエネルギ-など)に変換すること」、「これらは幅広い科学技術・産業化技術・地域知・暗黙知を活用することで、強力なイノベーションの可能性を持つこと」。すなわち持続可能な経済システムの範囲内でのバイオ資源の利用である。
社会循環とは、M,ブラウンガルトとW.マックドゥによると、「ゆりかごからゆりかごへ(完全循環)・廃棄物は資源・聡明な生産システム」としている。また、W.スターヘルは、「経済はフロー・ストック・機能経済であり、リサイクルからリユースへの転換、PSS(プロダクトサービスシステム)・シェアエコノミー・ストックの管理で循環が成り立つ」としている。
4.資源効率・サービス効率・充足効率
目指すことは、最小資源による効用の最大化であり次の様に定義づけできる。
満足(効用)/資源 = 資源効率 × サービス効率(利用効率) × 充足効率
資源効率は、資源の最小化+製品の最大化といえる。
サービス効率は、利用効率・稼働率であり、製品の長寿命化・耐久化、製品のシェアによる物質の効率的利用であり、MIPS(シュミットブレーク:エコリュックサックの概念)の逆数である。
充足効率とは、「足るを知る」などの十分性の概念である。
5.DEとRE
Restorative(修復的な) Regenerative(再生) Resilient(弾力的な)などのようにReの付く考え方、Depolymerise(解重合) Dealloy(脱合金) Delaminate(層の剥離) Deconstruct(解体)などのようにDeの付く考え方が社会循環に重要である。
6.終わりに
制度は技術の発展に大きな影響を与えている。プラスチック問題においても、Rethink・Reduce・Reuse・Replace・Recycleの考え方をヒントとして解決していく必要がある。
(文責 藤橋 雅尚、監修 郡嶌 孝)
郡嶌 孝 名誉教授 講演風景