プラスチックとの持続可能な関係性構築に向けて
環境研究会・第97回特別講演会(WEB方式)
日 時:2021年3月13日(土) 10:00~12:00
場 所:Zoomによる講演会方式
講演: プラスチックとの持続可能な関係性構築に向けて
~ごみからの視点と、京都大学における挑戦~
講師: 浅利 美鈴 工学博士 京都大学大学院 地球環境学堂 准教授
(一社)びっくりエコ発電所理事、3R・低炭素社会検定事務局長
1.はじめに
環境研究会第97回特別講演会は、京都大学大学院の浅利美鈴先生をお招きして「プラスチックとの持続可能な関係性構築に向けて」と題するご講演を、リモート講演(Zoom利用)で行いました。
講演では、ご自身が出演されたNHKクローズアップ現代の動画も交えて現代のプラスチック廃棄物の現状から今後の展望についてお話いただきました。
プラスチックが社会問題となり様々な議論が巻き起こっています。「ごみ」の視点からの実態や課題を紹介されると同時に持続可能な関係性構築に向けて京都大学が多様なステークホルダーと始めた社会実験について解説いただきました。
浅利先生が学生時代に立ち上げた「京大ゴミ部」の活動から、学生時代恩師の高月先生の漫画も提示され、「机上の研究だけでなく、人の流れの中にも飛び込もう!」として、一部の人だけの取組みに留まらない既存の概念を超えた取組み姿勢を示されました。
家庭ごみ細組成調査は、高月先生が京都市と40年前に始められ、受け継がれてきました。ゴミを約300種類に分類し、
ごみ減量のためにはどうすれば良いか?
社会はどう変化してきたか?
といった視点から分析してこられました。例えば、最近は、高齢化や生活の変化で、大人用紙おむつや容器包装ごみが増加してきたことがわかりました。
講演の中で前述のNHK「クローズアップ現代」を視聴し、「プラスチック問題」全般についての現在の問題点が把握できました。プラスチックをリサイクルしても売れなくなり、再生プラスチックにする洗浄等の手間をかけても原油安の影響でバージン材価格が下がりリサイクル離れが起きている現状がわかりました。大手日用品メーカー同士の詰め替え容器の共同回収の仕組み造りと実践から企業の本気度もわかりました。
続いて、新規のシングルユースプラスチック規制(国レベル)の紹介や、レジ袋有料化以降の日本の状況にも触れられました。京都大学の活動では、「2019年6月京大プラ・イド宣言」と称して
「考え行動する宣言」
「かばんの中プラ」キャンペーン
「京都大学プラ・イドチャートの提案」
「プラ・イド革命(できることからアクション)」
を紹介されました。
「素材としての利用が始まってから1世紀足らず。
その軽量・高可塑性・安価といった優れた性質を活かし、いまや私たちの暮らしすべてを形作っているといっても過言ではないプラスチック」に対して、学生のカバンの中のプラスチックを調査して20人のカバンの中に総計1652個 平均82.6個のプラスチック製品があることを確認しました。
これを京大式プラチャート「プラ・イド(Plide)」で可視化して、避けやすいプラと避けにくいプラ、いるプラといらないプラとの軸で分けて、自分のカバンの中からできることの、気付きに役立てることを紹介いただきました。
3.おわりに
講演後の質疑応答で、次の様な質問があり技術士会との連携可能性についても意見がありました。
原油枯渇問題からの影響
プラスチック代替化で環境負荷が増える懸念
デポジット制度導入、
海洋汚染に絡んだ問題
最後に浅利先生から京都には1300年間都であり続けるために、まもるべき「公道(こうと)」という、宗教とは違う概念や知恵があることを述べられました。
ご講演を通じてプラスチック問題を色々な視点でよく理解できました。
浅利先生には大変お忙しい中、ご講演をいただきましたことを改めて深く感謝申し上げます。
(文責:上田 泰史、大西 政章 監修:浅利 美鈴)