加飾技術から加飾科学まで
近畿本部 化学部会 2023年12月度講演会
メインテーマ:マテリアルイノベーション
講演2 加飾技術から加飾科学まで
日 時: 2023年12月9日(土) 13:30~17:00
場 所: 近畿本部会議室 TeamsによるWeb併用
講 師: 前田 秀一 氏
技術士(化学・総合技術監理部門)
東海大学 工学部 情報理工学部 教授
1.加飾技術とは
加飾とは、物品等に関して、装飾、機能、デザイン、手触り、好ましい見た目などの価値を構築し付与することをいう。また、加飾技術とは、物の価値(商品力)を高めるために表面を装飾する技術をいう。目的に合わせて様々な工法が開発され、高付加価値化が進んでおり、「加飾」に関する特許も増加し続けている。
前田 秀一氏
2.加飾技術の変遷
加飾技術は、縄文土器の縄目付けに始まり、めっきや活版印刷、水圧転写、インクジェット、ホットスタンプ、射出同時貼合など進歩し続け、高意匠化および機能付与に変化し続けている。
3.加飾技術の分類とトレンド
加飾技術は、成形時に加飾する一次加飾、成形後に加飾する二次加飾がある。加飾技術の事例として、反射防止機能、抗菌性/抗ウイルス性、触感や耐指紋性の付与がある。また、光透過型タッチパネルを使用したステルス機能付与、塗装代替のドライ加飾、凹凸がある立体形状にフィルムを加飾するTOM(Three dimension Overlay Method)成形がある。さらに、インクジェットを使用したインライン3次元加飾システム、電子ペーパー、インクジェット水圧転写およびデジタル印刷などの加飾技術による高付加価値化が進んでいる。
4.加飾科学
① 抗菌/抗ウイルス性ネイルアート(加飾科学で機能性付与)(図2)
緑膿菌によるグリーンネイルの対策として、銀鏡反応による加飾銀が銀と同様の抗菌効果を示し、新規の抗菌性/抗ウイルス性メカニズムの可能性を示した。
図2:ネイルアート用に金属調加飾されたプラスチック爪
② 見えないQRコード(マテリアルとデジタルとの融合)
ニオブのプレート上に酸化ニオブを電気化学的に加飾した薄膜が、光の干渉によりあらゆる色を発することを可能にした。また、陽極酸化反応での電圧により周期的に銀色を繰り返すことを発見し、ニオブのプレートに酸化ニオブ層のQRコードを加飾したもので、赤外線によりQRコードを現出させることが可能になった。
5.まとめ
加飾技術は、見栄えだけでなく、機能性の融合、環境対応、少量多品種対応のニーズが高まり、高付加価値化が進んでいる。また、加飾科学の観点においても今後の期待が持てる領域である。
Q&A
Q1. マテリアルとデジタルとの融合で、「生物に学び、物理で考え、化学で作る」とお話をされたが、もう少し境界境域があると思うがどのように考えているか?
A1. 化学だけでなく、応用物理やデジタルの領域など様々な領域が混在すると考えている。
Q2. 陽極酸化の実験は、銀の表面にコーティングしたものに通電した実験であるのか?
A2. ABSの樹脂の上に、銀鏡反応で銀をコーティングしている。
Q3. 見えないQRコードでニオブを使って実験しているが、他の金属で着色効果があったか?
A3. ステンレスでも着色できるが、アルミニウムは全く効果がなかった。
文責:橋本 隆幸 監修:前田 秀一