繊維製品の化学物質管理とサステナビリティ
近畿本部 二組織合同(化学・繊維) 2024年3月度講演会
メインテーマ:健康・安全・環境に係る技術力の発揮
講演2 繊維製品の化学物質管理とサステナビリティ
日 時: 2024年3月9日(土) 13:30~17:00
場 所: 近畿本部会議室 TeamsによるWeb併用
講 師: 兒玉 哲夫 氏
化学物質管理士補 技術コンサル“サポサス”代表
1.繊維製品中の有害化学物質規制(国内、EU、業界)
国内の法令で規制されている有害化学物質は数多いが、錫系の防カビ剤、リン系・ハロゲン系の難燃剤等は使用されなくなり、経験上実際に試験依頼が来たのは、殆どがホルムアルデヒドとアゾ化合物であった。アゾ化合物も、サプライチェーン全体で不使用宣言書を使用して(右図参照)、検査は少なくなっている。
兒玉
哲夫氏
EUでは、皮膚に接触する化学物質のリスク評価から、33種の有害物質を使用禁止とする規制を発行し、米国でもアパレル業界組織であるAFIRM等のように、制限物質リスト(RSL)にて化学物質管理が行われている。国内でもそれらを参考に、独自に化学物質管理をサプライチェーンに要求しているところがある。
有害物質不使用に関するガイドライン
2.求められるサステナビリティ
繊維業界では、大量の衣料廃棄物や、繊維くずのマイクロプラスチック化に代表される環境負荷の他、労働環境や動物愛護への配慮・対応について、持続可能な取り組みが求められている。
3.化学物質管理を含むグローバルなサステナビリティ認証
ZDHCは、欧州大手アパレル企業を中心に世界で120社が加盟するグループで、サプライチェーン全体での有害物質排出ゼロを目指している。最終製品の制限物質確認に加え、製造時使用制限物質の確認も行うため、インプット/プロセス/アウトプットに分けて指針が示されている。
4.化学物質管理に特化したグローバルスタンダード(ZDHC)
ZDHCは、欧州大手アパレル企業を中心に世界で120社が加盟するグループで、サプライチェーン全体での有害物質排出ゼロを目指している。最終製品の制限物質確認に加え、製造時使用制限物質の確認も行うため、インプット/プロセス/アウトプットに分けて指針が示されている。
5.PFAS(ペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質)情報
多種存在するPFAS類は分解され難いため残留蓄積性があり、毒性評価と規制が進められている。PFOS・PFOAは化審法で規制されたが、他物質についても今後規制強化が進む見通し。スクリーニング法としてフッ素の分析が行われ、段階的分析法が提案されているが、全てを分析するのは難しく、標準物質の入手性にも課題が残る。
6.終わりに
アパレル・フットウェア業界での化学物質規制について、引き続き米国やEUの動向に注目する必要がある。特に環状シロキサン類が既に規制されている中、撥水性能が課題となる。
文責:中田 将裕、監修:兒玉 哲夫