キラルクロマトグラフィーの進歩と応用
近畿本部 化学部会12月講演会
講演1 キラルクロマトグラフィーの進歩と応用
日 時: 2024年12月14 日(土) 13:30~17:00
場 所: 近畿本部会議室 TeamsによるWeb併用
講 師: 西岡 亮太 技術士(化学、総合技術監理部門)、博士(薬学)
1.はじめに
鏡像と重なり合うことがない性質を持つキラル化合物は、医薬、農薬、香料、食品、材料などの様々な分野において、その重要性が広く認識されている。鏡像異性体(エナンチオマー)の分析法の中でキラルクロマトグラフィーを用いる方法は精度が高く、迅速な分析法として汎用されている。講師は、長年、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用キラル固定相の開発研究に従事され、「ホストゲストキラル固定相」の分離特性とその応用について、知見を紹介された。
西岡 亮太氏
2.キラルクロマトグラフィーの歴史と進歩
クロマトグラフィーは1900年頃にM.S.Tswett(ロシア)により創始され、1960年代にガスクロマトグラフィー(GC)が普及した。それに伴い、クロマトグラフィーを用いて直接キラル化合物を分離する研究が行われ、1970年代から多彩なHPLCのキラル固定相の開発が始まった。HPLCキラル固定相の種類として、低分子系ではパークル形および配位子交換形などがあり、高分子系では多糖形およびタンパク質形などがある。講師により、キラル分離のアプリケーションやd-アミノ酸分析への応用事例が紹介された。
3.新規ホストゲスト形キラル固定相の開発とエナンチオ(鏡像異性体)分離特性の評価
新規キラル固定相の設計において、キラルアミン系化合物の分離対象範囲の拡大およびキラル固定相選択の指標となる分離特性に関する基礎データの提供が、製品開発の目的であった。開発した新規キラル固定相のうち、クラウンエーテル共有結合形キラル固定相は、移動相中の有機溶媒の制約が少なくなり、保持の強い疎水性アミンの分離や順相系移動相の使用が可能であった。シクロデキストリン形キラル固定相において、担体と結合させるスペーサー部分の構造を変えることで、分離係数が向上し塩基性部分のテーリングが抑制される特性が得られた。また、シクロデキストリンの水酸基をアセチル化するとエナンチオ分離特性が大きく変化することを見出し、特定のキラル固定相が特定の構造のキラル化合物に対して、特異的に優れた分離能を有する知見を得た。
開発した新規キラル固定相
4.質疑
Q1:シクロデキストリン形固定相のスペーサーとして糖を選ばれたのなぜか?
A1:糖自体がキラル分離能を増強すると考えられるためである。
Q2:d-アミノ酸分析をした結果から何がわかるか?
A2:d体、l体の比率およびラセミ体として存在するのかどうかを知ることが可能である。
(文責:橋本 隆幸 監修:西岡 亮太)

