産業資材用繊維と防護・防災用繊維技術
近畿本部
化学部会・繊維部会合同 見学会・講演会
講演2 産業資材用繊維と防護・防災用繊維技術
日 時: 2025年1月14 日(火) 13:00~17:00
場 所: 株式会社モリタホールディングス モリタATIセンター(八尾市)
説明者: 齋藤 磯雄 氏(繊維部門) JTCC相談役、元東レ株式会社
(1)産業資材用汎用繊維
業資材繊維の用途分野と使用される繊維の特性およびそれらの用途と環境負荷低減、健康・安全との関係について紹介された。
産業資材用繊維には高強度・高弾性率・高タフネス、高耐久性が求められるが、代表的な繊維であるポリエステルの場合は固相重合法により分子量を増大し、紡糸工程では加熱筒により紡糸張力を下げて配向結晶化を上げる方法が製造技術として採用されている。
齋藤 磯雄 氏
(2)高性能・高機能繊維(スーパー繊維)
スーパー繊維は、①高強度・高弾性率および耐熱性・難燃性を有する『高性能・高機能繊維』(p-アラミド、PBO繊維、ポリアリレート、炭素繊維、etc.)、②高強度・高弾性率を有する『高性能繊維』」(超高分子量PE、高強度・高弾性率PVA、セルロースナノファイバー(CNF))、③耐熱性、難燃性、耐薬品性を有する『高機能繊維』(m-アラミド、ポリアミドイミド、メラミン、ポリイミド、ポリベンゾイミダゾール、ノポロイド、ポリスルホン、PPS、ポリエーテルイミド、PEEK、PTFE、etc.)に分類される。汎用繊維の生産量は中国に圧倒されているが、スーパー繊維では日本のシェアが大きい。代表的なスーパー繊維についての製造・販売会社、製造方法、特徴、用途について詳細に解説されて理解が深まった。また、講師自身の経験を含めたスーパー繊維の開発経緯についても興味深く紹介された。
(3)防護・防災用繊維技術
我が国は災害多発国であり常に災害のリスクを抱えているが、スーパー繊維等の産業資材用繊維の開発を得意としており、災害リスクを減らし復興・復旧対策に有用な繊維製品を開発することにより、我が国を含む世界の災害多発国に貢献できる。
防護・防災用衣服は、「防炎・耐熱性」(耐熱性・難燃性、高温防護性)、「化学防護性」(耐薬品性、防塵性、耐ウィルス性)、といった機能が要求され、それぞれに対応したものがある。他に放射線遮蔽性、電気防護性、防弾・防刃性に対応する防護服がある。衣服以外の資材にも各種スーパー繊維等が利用されている。
防護・防災用に用いられる繊維には原料高分子そのものが燃えにくい難燃繊維と、可燃性・易燃性繊維製品にリン系やハロゲン系の難燃剤等を付着させて防炎加工した繊維製品がある。繊維の燃えやすさの指標にはLOI(限界酸素指数)があり、LOIが26以上のものが難燃性繊維と分類される。
防護服は1種以上のハザード(危険有害因子)から身体を防護するための服であり、ハザードによって8種類に分類される。熱および火炎に対する防護服に求められる性能には、耐炎・耐熱性、機械的強度およびその他の特性がある。ISO対応防火服に用いられる繊維材料は耐熱性や強度を有する表地層と透湿防水層および遮熱層から構成される。化学防護服は有毒化学物質(液、ガス)や病原体(細菌やウィルス)から身体を保護する被服であり、マスクや手袋と併用されることが多い。
防護服にはハザードから身体を守る防護性能に加えて、着用した作業者が暑熱により作業効率を損うことが無いように衣服内気候を考慮した機能が求められる。このためにメルトブローをスパンボンドで挟んだSMS不織布を用いて防護性を維持しながら通気性を付与した例がある。
(文責:太田 昌三 監修:齋藤 磯雄)

