環境・労働安全衛生の化学物質管理の法体系と最近の傾向

著者: 藤井 武、濱崎 彰弘  /  講演者: 濱崎 彰弘 /  講演日: 2025年03月08日 /  カテゴリ: 環境研究会 > 講演会  /  更新日時: 2026年03月10日

 

近畿本部登録 環境研究会講演会

演題 環境・労働安全衛生の化学物質管理の法体系と最近の傾向

日 時: 202538日(土)13301600
場 所: アーバネックス備後町ビル3Fホール + WEB
講 師: 濱崎 彰弘 技術士(環境、化学、機械、機総監、生物工学、経営工学)濱崎研究室代表

講師は大阪大学基礎工学部で化学工学を修めた後、三菱重工に入社し、業務や、各種学協会、技術士会において、温暖化問題、環境、エネルギーや廃棄物処理など幅広い課題にとりくみ、技術士を6部門取得しました。

1.化学物質による被害事例

化学物質による被害事例としては化審法成立のきっかけとなった食用油にPCBが混入したカネミ油症事件や、公害対策法のきっかけとなった4大公害や、有機溶剤や重金属による職業病がある。最近増えているのが、有機則や特化則で規制されていない物質による癌の発症である。

      

2.化学物質に関する法令

化学物質による法体系は図1のようになる。化審法、化管法を中心に労安法が重要である。

1 化学物質に関する法令

3.安衛法における化学物質管理

日本で流通している化学物質は約6万物質あるが、製造禁止や特化則や有機則など細かい管理が必要なものや、SDS交付など法律により管理されている物質は674物質しかなかった。令和641日から個別規制型管理(674物質)から、自主管理を基軸とした新たな自律管理に移行した。

4.自主的、自律的な管理(自己責任・説明責任)

化学物質には、環境、身体への目に見えない脅威(潜在的リスク)があるが、従来リスクが顕在化した700物質弱しか規制されておらず、6万弱の物質のリスクはほとんど考慮されていなかった。潜在的なリスクがある物質に対して、①個別管理と同レベルの管理できるよう出来る限りの努力をしている旨、説明責任を果たせる対応を行う。②化学物質を製造する事業所、及び、使用する事業所全てに、化学物質管理者と保護具着用管理責任者の選任を義務化し、事業所で使用する化学物質のリスクアセスメントを行い、保護具等でばく露程度の低減をはかる。③同一職場で同種の癌に二人以上罹患したときは産業医が取り扱う物質との関係を評価し、必要と判断すれば労働基準監督署へ報告する。

5.環境関係の化学物質管理

従来の都市型環境問題から、温暖化や酸性雨などの地球環境問題や、化学物質の労働安全管理問題や、廃棄物削減や資源枯渇などの循環型社会形成問題など環境問題は多様化している。

6.海外の化学品に関する規制

1)国際条約、標準化システムで決定された事項は国内法令へ展開

①化学物質の危険性を一貫して評価し、SDSに記載される情報を国際的に標準化するシステム:GHS,ラベルに反映

②オゾン層破壊に対するウィーン条約⇒オゾン層保護に関する法律

③地球温暖化防止条約、京都議定書、パリ協定⇒温暖化対策法⇒温暖化対策法

④酸性雨、PM2.5などに関する長距離越境汚染条約⇒大気汚染防止法

⑤残留性有機汚染物質、重金属に対するPOPs条約⇒化審法

2)海外の規制

化学物質の登録、評価、認可、使用制限など日本の化審法と、同等の規制であるREACH規制がEUに、TSCAが米国で、中国では新化学物質管理措置の規制がある。

電子機器や電気製品に含まれる特定の有害物質(鉛、水銀などの重金属やポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテル)の使用を制限するRoHS規制(日本のJIS C950相当)が、EU,中国、韓国、米国の一部の州で規制が行われている。

7.化学品に関する最近の話題

有機フッ素化合物(PFAS)1万種程度の化合物があるとされ耐水性や耐油性に優れているため、さまざまな製品に利用されています。PFASのうち、PFOSPFOA 及び PFHxS POPs条約で製造・使用・輸入が禁止された。日本や多くの国も原則、POPs条約など国際条約でPFAS物質が順次決議後、国内で規制化していく流れにある。一方、EUは、難分解性物質で環境中に長く滞留するので、リスク評価が未確認でも、予防原則に従ってPFASの製造や使用を広範囲に規制することを提案している。

質疑

Q1:国が今後優先的にGHS分類を進める種類の物質はどのような観点から選ばれたのか?

A1:危険性、有害性が疑われているリスクアセスメントの必要性が高い物質や、事業場での使用頻度が高い物質などを優先的に選んでいるようである。

Q2:規制、規制、規制で世の中が変わっていくのか?

A2:規制、規制と国の個別規制が後追いになって来たので、化学物質を扱う全ての事業所に化学物質管理者と保護具着用責任者を選任し、使用する化学物質のリスクを評価し、適切な保護具を着用するように法規制が大きく改正されたので、化学物質による労災は減ると考える。

Q3:レスポンシブルケアの観点から化学物質管理はどうなるか?

A3:各国や各社がそれぞれ取り組みを行っており、優れた取り組みが毎年選定され表彰される制度があり、花王が表彰されていた。詳細は、レスポンシブルケア、表彰などのキーワードでネット検索したら出て来ると思う。

奥村会長挨拶

ESGの取組は、各国各社取組がなされているが、化学物質管理については今回紹介があった平成24年の印刷工場の胆管がんの事例までは、化学物質に潜在的なリスクがあることがほとんど認識されておらず、今回の安衛法の大きな改革につながったと感じている。

化学物質のレスポンシブルケアもESGと同じく早くから取り組みがなされてきたが、企業や学会などの上流や製造者側の取組が主であり、現場で実際に化学物質を扱っている事業場にて、自主的にリスク管理を行い、保護具も適切なものを選択し正しく使用する方向で進めてきた点で違いがあった。

(文責:濱崎 彰弘、藤井 武)