ごみ炭化技術の現状と今後の動向について
★環境研究会 第38回特別講演会報告 080125
日 時:平成20年1月25日(木)
テーマ:ごみ炭化技術の現状と今後の動向について
キーワード 廃棄物処理、炭化技術、循環型社会、環境、CO2削減
講 師:鍵谷 司氏 環境計画センター専任理事 技術士(衛生工学、環境、建設)
講師は廃棄物処理に関して、国や地方自治体の委員会に参画されており、物質リサイクル及びエネルギーリサイクル、CO2削減にも有効なごみ炭化技術動向について紹介していただいた。
1.ごみ炭化技術とその位置づけ
循環型社会形成推進基本法(H12)の施行に伴い、リサイクルへの道が開かれ、ごみ炭化技術に新たな展開の可能性が生まれた。ごみ炭化は、木炭製造の”蒸し焼き”技術であり、熱分解技術である。わが国では昭和40年代後半に都市ごみから可燃性ガスを採取する取り組みが始まったが、その後、停滞し、平成10年頃からRDFの利用拡大を目指した取り組みが始まった。
熱分解は無酸素または低酸素状態で高温に加熱し、ガス成分、液状成分、炭成分に分解する。
家庭ごみを対象にした場合、前段プロセスはRDF製造工程とほぼ同じである。家庭ごみを炭化処理すると、炭成分は、原料ごみの1/8になり、この中に灰を含む。ガス成分は可燃性ガスとして利用可能である。
2.普及状況と留意点
自治体における炭化施設はH14年以降全国で6箇所が稼動し始め、総処理能力は250トン/日程度である。利用先は、セメントキルンでの燃料、製鉄所における代替石炭などである。
家庭ごみの炭化処理は、数年前から始まったもので、稼動事例で起こったトラブルを参考にして運転の安定性、安全性、維持管理性など複数の技術課題に留意していく必要がある。H16年に炭化処理施設の性能指針(案)がまとめられた。
①性能に関する事項:ごみ処理能力、性状、安定稼動(90日以上連続使用など)など
②性能に関する事項の確認方法:実証施設の運転結果。データなどに基づき確認する。
3.炭化物の利用性について
廃棄物を原料とする炭化物は灰分、塩分、重金属類を含んでいることに留意する必要がある。
原則的には、製造者と利用者との協議において製品としての性状が決められる。
①炭化物の性状(粒度、大きさ):塩素分を除去するために、粉砕工程で細かくなるが、造粒することもできる。
②単位体積重量:一般には0.3~0.4t/m3である。
③その他:水分、灰分、低位発熱量、塩素分、揮発分、比表面積 など
都市ごみを原料とする間接加熱式施設の処理工程例は次である。
{破砕}→【乾燥】→{炭化}→{脱塩}→{乾燥}
4.今後の動向について
①役割
RDFはその利用(需要)の確保が難しかったが、炭化技術は燃料以外にも対応できる。
社会全体がリサイクルに向けた取り組みを進めているが、有機物の堆肥化、飼料化、メタン発酵は製品を安定して利用しにくい。炭化すると燃料として利用できる。また、最終処分量の削減にも寄与できる。
②CO2削減
再生可能エネルギー源であり、ごみ発電、RDF発電、炭化物による助燃で利用
③国の新エネルギー導入目標の達成のために
2010年に廃棄物発電を417万kW(現状120万kW)、新エネルギー購入義務付けや「循環型社会形成推進基本法」に基づく廃棄物の有効利用 など
その普及に向けては安全の実績を積み重ねることが重要である。
④炭化物の利用
a)燃料としての利用性
現実的な方法である。炭化物は石炭(褐炭)並みの発熱量であり、セメント燃料としてキルン内に投入して助燃材、溶鉱炉における溶銑時の高温保持材などに利用するのが一般的である。利用の際は塩素分が多いこと、灰分が多いことに留意する必要がある。
b)材料利用(多孔体として)
活性炭は価格が高いことから活性炭化が試行されている。吸着能力は比表面積、細孔分布にもより異なる。家庭ごみを原料とする場合、灰分や重金属類を比較的多く含んでいるので、性能は高くない。
その他、調湿材、土壌改良材などへの利用も可能性があるが、重金属類などによる、土壌汚染などにも留意する必要がある。
Q&A
Q:焼却による発電は?
→ごみ発電は発電効率12%位。RDF発電は28~30%になる。ただし、ごみを圧縮する過程で、化学物質が出るので、杉並病などのトラブルの発生対策が必要である。
Q:高炉のコークス代替利用は?
→コークスには強度が必要であり、加熱用の吹き込み燃料としては使用できる。
Q:ごみ処理に炭化というのはCO2を増やすのでは?
→最初だけ助燃する必要があるが、1800kcal/kgあれば炭化できるので、トータルとしてはベターである。
Q:溶鉱炉の還元剤としては?
→使えると思う。自治体は廃プラの処理に10万円/t払っている。また、CO2排出削減にカウントできる。
Q:下水汚泥には水分が80%もあるが?
→汚泥の埋立地の確保は困難になるし、脱水処理技術は重要である。におい対策もあるが、 600℃で炭化するので、興味のあるテーマである。(このAは会場の大岡さんのコメント)
Q:油化の可能性について
→よくは知らない。京都市はバイオディーゼル車を使っているが、自家使用れべるではないか。
木屑からバイオディーゼル油をとるプラントは見学時、運転を停止していた。既存の技術を超えるまでには時間がかかることが多い。
コメント(山本)
長期的な展望の中で取組んでいるテーマであり、経済性、安定性、安全性を含め課題は多いが、 優位性がある重要な技術であることが理解できた。
(山本泰三 記)