CCUSC;CO2 の分離、利用、固定、さらに、制御

著者: 出口 義国  /  講演者: 濱崎 彰弘 /  講演日: 2022年12月10日 /  カテゴリ: 化学部会 > 講演会  /  更新日時: 2024年02月27日

 

化学部会202212月度 化学技術力の発揮 講演会

日 時: 20221210()  14301700
場 所: 近畿本部会議室 + オンライン

 

講演2 CCUSCCO2 の分離、利用、固定、さらに、制御

講師 濱崎 彰弘 氏 技術士(化学/環境/生物工学/機械/総監)
 NPO 法人兵庫県技術士会

1.CO2と地球温暖化

CO2と温暖化の問題は、1981年のScience論文が口火を切った。大気中CO2濃度は1.7ppm/年の率で上昇しており、現在では400ppmを越えた。CO2濃度は単調増加であるが、気温は上がったり/下がったりで、CO2と温度上昇に相関がない。一方、20世紀末のシミュレーターでは図のようにCO2と温度上昇に強い相関がある結果も出ている。CO2が温暖化の原因、との説には議論が残る。

    濱崎彰弘氏

2)CO2分離

天然ガス中に高濃度のCO2が含まれる場合があり、液化の前処理としてLNG採掘時に化学吸収法が用いられている。吸収剤にはモノエタノールアミンが用いられ、低温で吸収させ加熱して放散させる方式は、米国で大規模プラントの実績がある。ガス火力発電は排ガスがきれいでCO2回収をやり易いが、石炭やバイオマス火力は排ガス中の煤塵で、吸収剤劣化の問題がある。他の分離法にはゼオライトを用いる吸着法、膜分離法、物理吸収法がある。

   グラフ

自動的に生成された説明  2IPCCの単純モデルの温暖化予想 

3.CO2利用

埋設するCO2を減らすため、CO2利用法が考えられている。グリーン水素との反応により、化学原料や燃料の合成などが検討されている。

4.CO2固定

地中に大空間がなくてもCO2圧入は可で、苫小牧の実証実験もその考え方で進んでいる。CCSCarbon dioxide Capture and Storage)では10千円/トン程度との費用試算があるが、植林が桁違いに安価である。地中ではなく深海に貯留する技術もあるが、蓋がないと不安とされ社会的に受容されていない。ただCO2はメタンと同様にハイドレートを作り、海水よりも比重が高く沈むので、安価な処理方法になる可能性はある。

. CO2制御

発電所復水器では海水混入の検知が重要で、誤検知防止のためCO2を除去する。宇宙船や潜水艦等では認知能力低下を防ぐため、CO2を固体アミンで吸収させる。

6.おわりに

温暖化問題の解決には、化学部門技術士のリーダーシップが必要と考える。

QA

Q1. 石炭火力の排ガスはCO2回収が難しいのはなぜか。大量回収するには石炭火力も対象では。

A1. 排ガス中に微量含まれる金属で、吸収剤アミンが重合してしまうのが問題。ただ日本の火力発電の排ガス処理技術は進んでおり、石炭火力からのCO2回収も検討が進んでいる。

Q2. 開発中の分離方法で一番有望なのは何か。米国でのCCSプラントのCO2源はLNGか。

A2. 規模やプロセスで効率が稼げる化学吸収法が、最有力と見ている。米国の当該プラントでは、石炭火力から回収したCO2をパイプラインで油田に運んでいる。

Q3. 技術士を沢山取得しておられるが、その理由は。

A3. 2010年頃経産省から技術士が少ないとの指摘が会社にあった。各課に技術士の受検者数と合格者数のフォローがあり、教育担当だった自分が毎年受験していたのがきっかけであった。

Q4. 生物学的なCO2の利用法とは。

A4. 発電所の水路に貝が付着して問題になるが、CO2を使うと付着が阻害される。CO2に麻酔効果等の生物学的な働きがありそうで、環境に優しい阻害剤として期待される。

(文責:出口 義国 監修:濱崎 彰弘)