東アジアの大気中の物質循環と気候に及ぼす人間活動の影響

著者: 高橋 健夫 講演者: 早坂 忠裕  /  講演日: 2007年11月26日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

環境研究会と食品部会の合同による特別講演会報告    071126

日 時:平成191116

 

テーマ東アジアの大気中の物質循環と気候に及ぼす、人間活動の影響

キーワード  温暖化、エネルギー、温室効果ガス、エアロゾル、気候変動、東アジア

講 師:早坂 忠裕氏 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所 教授

プロフィール:雲、エアロゾルの放射特性、微物理特性及びこれらの気候への影響を研究。現在は、過去約20年間の東アジアにおける社会経済活動の変化と大気中の温室効果ガス・エアロゾルの変動の関係解明をテーマに研究中。

 

1.東アジアの経済発展とエネルギー需要、温暖化ガスの排出

人口増加に比べて、社会経済の変化が大きいことが地球環境問題の一因。全世界の人口は100年で4倍の増加に対して、エネルギー消費量は20倍の増加。特に、中国を中心とした東アジアの経済発展は著しい。中国の自動車の普及率は1990年代末で約2%であったが、将来、現在の日本と同じ60%になると8億台になり、現在の全世界の台数と同じになる。また、中国の人口は1980年から2000年で3割増加に対して、エネルギー消費量は2倍に増加。依然として石炭が主要エネルギーであるが、一部の都市ではエネルギーの効率化は進んでいる。

2.大気中の物質(温室効果ガス、エアロゾル)の分布と変動

世界のCO、NO及びSの排出量は、1980年に比べて2000年はそれぞれ2.12.5及び1.9倍に増加。COは特に中国やインドの増加の割合が大きい。また、中国ではSの排出源はほとんどが石炭で、部門別では発電が大きい。人間の社会活動のロジックでエネルギー消費量が決まる。物質の排出量と大気中の濃度は異なる。

3.気候への影響

中国の日射量は1990年ごろまで減少傾向にあったが、それ以降横ばい。それにもかかわらず、1951年以降をみると、中国の地表気温は上昇を続けている。これは森林の減少、内陸部での降水量の減少、砂漠化が進んでいることによるものと思われる。

質疑応答

Q:中国での脱硫装置について?

⇒以前は脱硫装置を設置しても維持管理を行わなくなって稼働を停止していたが、最近は良くなってきている。また、北京では旧型の自動車の流入を禁止しているが、地方都市では依然2サイクルエンジンの自動車が走行している。

Q:CO濃度の地域差、高度差について?

⇒北半球は南半球に比べて、わずかながら濃度が高い。また、鉛直分布については地上での植物の光合成の影響があり、上空の方が低い。

その他、CO濃度と温度上昇の関係、外モンゴルでの干ばつの発生の可能性、研究結果の位置付け等について多数の質問があり、盛会であった。

    (高橋健夫 記)


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