土壌汚染対策に係る諸課題の解決に向けて

著者: 山本 泰三、石川 浩次 講演者: 嘉門 雅史、三田村宗樹、前田 和男、石川 浩次  /  講演日: 2007年07月28日 /  カテゴリ: セミナー  /  更新日時: 2011年02月22日

 

技術士と地域産学官との合同セミナー  070728

 

テーマ:土壌汚染対策に係る諸課題の解決に向けて

国民・土地の安心・安全を守るための土壌環境の改善を目指して

    キーワード 土壌汚染、汚染機構、地下水汚染、ブラウンフィールド、環境リスク、自然由来

 

講演会開催の主旨 : 開会挨拶 近畿支部長 福岡 悟

土壌汚染対策法が施行されて、土地売買等に伴う土壌汚染対策が急速に進行するようになりました。半面、土壌汚染対策の実施に係る諸課題が種々起きております。例えば、土壌汚染対策法施行の実施面に係る諸課題だけでなく、①~④にも係る諸課題等々です。

周辺地の地下水汚染調査や対策の必要性
自然由来の場合の科学的な判定法や汚染地質の適切な処理・処分法
地質汚染等地歴調査の実施(データ収集共)とデータ公開の必要性
汚染機構解明や地質別単元調査等地球科学的調査の必要性

このような諸課題解決を目指して、学・官・産から斯界の権威者を迎えた、土壌汚染に係る諸課題の解決に向けての講演会を企画しました。

 

基調講演  地盤汚染の現状と対策

 京都大学大学院 地球環境学堂   嘉門 雅史 教授

地盤環境汚染の事例として、ラヴキャナル(不法投棄)、シリコンバレー(有機溶剤)、東京都江東区(6価クロム)、東京都日の出町(廃棄物処分場からの漏洩)、香川県豊島におけるシュレッダーダスト不法投棄事件等の紹介があった。

その上で、土木工学者の立場から、建設プロセスで遭遇する地盤汚染の対策終了までの対策対応の手順や総合的リスクマネージメントのあり方、リスク評価等について、鶴見川多目的遊水地、八王子北IC建設予定地における「無害化処理施設で処理する」について、ダイオキシン汚染土の遭遇事例や地下水経由のリスクの算出結果等の事例紹介があった。

また、搬出汚染土の取扱との関連から自然起源の汚染への対応の仕方、産業技術総合研究所による全国域における自然起源の砒素と鉛分布、国内温泉水中の砒素含有量(例:奥津温泉2839mg/L)の事例紹介があった。その上で今後に必要とされる課題として、次の諸問題の重要性を挙げた。

適正浄化技術の開発と評価手法の確立
環境リスクを取り入れた浄化目標の策定
汚染土壌の処分先の確保
地盤環境の保全に関する法制度の確立と財源の確保
自然由来の汚染の対策
ブラウンフィールドの対策
地盤環境のあり方に関する教育の重要性等を挙げた。

  

一般講演  大阪平野表層の地層と土壌汚染問題

 大阪市立大学大学院 理学研究科   三田村宗樹 准教授

都市環境地質学の立場から、大阪平野表層を構成する地層中に含まれる有害物質が人為的原因か、また自然由来の初生的なものかの判断について必ずしも単純でないが、大阪平野周辺の第四紀堆積物中の砒素分布のボーリング調査事例の報告があった。

此の内、淡水成粘土・シルト、砂礫の砒素含有量は210mg/kgに対し、海成粘土・シルトの場合は、820mg/kg以上の含有量がある研究事例が紹介された。また、高槻市の深層地下水中には、還元的な地下水であり、pHに関わりなく鉄の沈殿は起らず、鉄と砒素の含有量が高くなり、地下水中に0.0163.62mg/Lの砒素が溶出した研究事例が紹介された。

また、大阪平野沖積層中の重金属の溶出・含有量の傾向として、以下の測定結果が紹介された。砒素含有量は概ね10mg/kg以下にあるが、中部粘土層上端部附近で一部20mg/kgを上回るものが存在する。鉛含有量は概ね20mg/kg以下、弗素は上部砂層の砂質土で100mg/kg以下であり、一部の泥質堆積物では250350mg/kgに達するものがみられた。

このため、平野地層の地層形成は人為作用も介在するため、側方への連続性や地層内部の堆積時構造など十分な観察による判断や化学形態の分析などが必要である事などが今後の課題とされた。例えば、大阪市内には砒素を高度に含有するMa13層が分布しており、掘削残土の処理処分に課題であることが考えられた。

 

 一般講演  大阪市における土壌汚染の現状と取組

 大阪市環境局環境保全部 土壌水質担当 課長代理    前田和男 技師

土壌汚染とは? 土壌汚染対策法、府条例の説明、大阪市における土壌汚染の現状と取組、土壌汚染とうまくつきあうために の内容報告があった。大阪市では、土壌汚染対策法および大阪府条例の観点から、法・条例の注意点として、対策法の適用は限定的であること、法の目的は土壌汚染による健康被害の防止であること、ただし、土地取引等では、法・条例の規定以上の調査・対策が必要なことが多いとした。

また、大阪市における土壌汚染の現状、汚染種類別汚染深度、汚染種類別対策内容、業種別基準超過件数の紹介があり、その上で次に取り組みつつある。

法や条例に基づく規制、指導。
法や条例の周知・啓発。

有害物質使用特定施設、土壌汚染の報告、過去の土地利用に係る問合せへの回答のための有害物質使用特  定施設を持つ工場のリスト整備、昭和30年代後半以降の住宅地図の整備、土壌汚染の報告があった土地のリスト整備を進めている。

自主的に行われる調査・対策についての指導・助言への対応。
土壌汚染があった場合の公表の指導。

土壌汚染対策における課題として、求める対策の内容、民事問題への発展、汚染原因の特定が困難な場合、自然由来の汚染の判定、低コストで効果的な対策技術が開発途上であることを挙げた。そして、土壌汚染とうまくつきあうために、次が必要であると述べた。

工場跡地など土壌汚染の恐れのある土地では調査を行うこと
汚染が発見された場合、調査結果や対策について速やかに公表すること
周辺住民とのリスクコミュニケーションを促進すること
関係する法令をよく把握すること

 

  一般講演  自然由来等汚染地盤の原因解明と、その適切な処理処分法に関する諸課題

 石川技術士事務所 代表 石川浩次技術士 (応用理学、建設)

本研究の背景及び課題の一つとして、土壌汚染は、「地質(固相(地層)液相(地下水)気相(地中ガス))汚染形態である」の認識を基に、調査担当技術者が自然由来か人為汚染か判定の環境地質学的手法による汚染機構の解明及び原因の診断技術の確立が必要であるとして、自然由来地質汚染の実態、土壌汚染対策の事例紹介、土壌汚染調査の手法に関する諸課題、汚染土壌の処理・処分に関する諸課題と土壌汚染対策についての提案事項について述べた。

特定の土壌汚染調査に際して、当該区域周辺の自然汚染等実態調査資料の収集結果の紹介があり、特定箇所の汚染状況調査結果と周辺地質状況を比較した。そして地質汚染のメカニズムを検討の上、焼却残灰の下位に分布する沖積粘土の汚染は、上位焼却残灰からの移動汚染ではなく、自然由来汚染である可能性を示した。また、環境省告示による「土壌中の特定有害物質が自然的原因によるものかの判定方法」が、必ずしも環境地質学的根拠になっていない課題のあることを示した。
その上で、処理処分法に関する諸課題解決のために、次が必要であると述べた。

国レベルによる広域地質・地下水・河川・底質調査収集と地方自治体によるその情報公開
調査技術レベルから地質汚染診断基準評価技術へ
土壌汚染調査には周辺地域を含めた地下水調査は必須条件である
自然由来汚染地質の適切な調査法と処理・処分法の環境調査技術の確立
環境地質学を中心とした、地質汚染に関する第三者審査機関の設立と診断審査の実施義務化

 

コメント

講演会は、学・官・産の構成による土壌汚染対策に係る諸問題の解決に向けての合同セミナーであり、改めて土壌汚染対策に係る諸課題が鮮明にされた感があった。土木環境工学の立場からの嘉門教授と環境地質学の研究者の立場からの講演は、土壌汚染対策について、自然由来汚染等に関する研究の重要性を改めて教えて頂いた。

その他、前田氏からは、行政の立場から、法を尊守しながらも求められる対策の内容の吟味や民事問題へ発展する場合の課題等も指摘された。また、石川技術士からは、産の技術者の立場から、調査事例を基に自然由来判定法の科学的重要性が指摘された。学・官・産の合同セミナー開催の重要性が改めて認識された講演会でもあったと思われます。

(文責 山本泰三、石川浩次)


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