経営のできる技術者を目指して-MOTによる人材育成-

著者: 山本 泰三、赤根 晴雄 講演者: 松本 毅  /  講演日: 2004年04月19日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

環境研究会】 4月例会報告  040419

日時:2004年4月19日〔月〕

 

テーマ:経営のできる技術者を目指して

MOT〔技術経営〕スクールによる人材育成-

講師:株式会社 アイさぽーと 取締役 松本 毅氏

講師の経歴

講師は大阪ガス(株)にて、製品開発を担当、低音粉砕機を開発、受託粉砕業〔健康食品など〕を立ち上げ、2年間勤務の後、研究所に移席した。研究所ではセラミックのセンサーにバラつきがあるニーズから、新しいセンサーの開発を担当した。1983年薄膜での技術開発に先鞭を付けた東大の河合先生と共同開発。製品はできたが、用途開発の家庭用の警報機では失敗した。当時この分野はフィガロのセンサーが市場を押さえていた、コスト的には同程度であったが、販売戦略で失敗した。その後技術は、ロシア〔シベリア〕のCH4モニタリング用に採用された。

この経験を元に、技術開発を活かす仕事に着目し、MOT(アメリカの動向)を調べた。この時期に経済産業省が主催するプロジェクト(29億円〔90億円中〕/年)に参加、コンソーシアムづくり(大阪ガスは幹事会社)、教材開発に取り組む。この教材を生かしてスクールを企画、平成15年から「MOT」スクールを立ち上げた。

今何故【MOT 】か

なぜ国がMOTに注目するのか。技術と利益が調和するための人材育成であり、アメリカで17000人供給体制ができているが、日本は10000人供給体制をめざすとの構想であるが、現在は数100人規模の能力しかない。H15年度は教材開発が主体である。
教育内容は技術者が技術製品開発により、競争力、競争戦略を打ち出す経営的センスを身に付けさせる。

例として

半導体の技術ではマーケットを探し、ビジネスプランを考えて評価もする。

  ディスカウントキャッシュフローを教えてビジネスプランを立てる。

  全部やろうとするのでは成功しにくい。ビジネス展開にはいろいろな方法があるが、ロームはデバイス、東芝は最終製品、どれが一番プロフィットを生み出すかの演習をさせる。

産業界に必要なMOTとは

アライアンスの組み方、スピード、フレキシブルで、全体をマネジメントできる能力のある経営者が求められている。技術は良いがビジネスが下手と思っている経営者が多い。日本はマネジメント能力が低く、戦略ミスが多い。製品、技術開発がビジネスにうまく繋がらない。

その基本は、部品メーカーでもその業界のプラットホームのリーダーシップが取れる戦略を採用し、実施することである。また、オペレーションに強いストラテジーを組み合わせることである。

自転車業界のシマノが良い例である。シマノは自転車業界のインテルを想定。ビジネスのプラットホームを押さえている。
本来、マウンテンバイクの部品メーカーで、変速機の生産を行っていたが、低価格のシステムコンポーネントを開発し、 海外(ロスアンゼルス)でキャラバン隊を組み、マウンテンバイクの普及活度に尽力し、部分メーからマウンテンバイクを中心とした自転車メーカーとして、業界をリードするようになった。スポンサーになって、街中で走れるように市場を作った。自社のみでなく、自転車メーカーも儲かり、市場が活性化するところが重要である。

パソコンの業界では、DELはパナソニックなどより技術的には上とはいえないが、業界をリードしている。

大阪ガス(株)の紹介

大阪ガス(株)はコア技術を開発してきた。そのコア技術は、材料に主体を置いたもので、工学系材料技術、炭素系材料、触媒技術(DXN)、その他に燃焼・流体技術がある。

材料技術であり、リチウム次電池の電極は世界シェア25%、サンプルの需要が大きい。携帯電話の負極材としても注目されている。

 ・家庭用の浄水器の材料開発はダスキンに材料供給し、国内のシェア30%を確保する。

 ・のぞみの軽量断熱材は航空機用に転用され、ボーイングにサンプル提供中。

 ・液晶のフィルター用部材の開発を進めている。

 ・燃料電池の触媒は水素製造〔改質器〕のインテルになろうとの意気込み、アライアンス戦略を採用している。戦略性が必要。〔ライセンス料だけではプロフィットは小さい〕

MOTスクールの紹介

社内のニーズでスタート、理論と実践、体系的プログラム、厚み作り。平成15年に急遽オープンシステムにした。当初は大阪ガス社内を考えていたが社外からも受け入れ、現在36名が参加している。年80回開講〔自在戦略論など〕。

まず若手の教育が中心、部長〔マネジメント〕向けは今後に準備する。運営は、ディレクター機能を充実させる、技術をベースに、ファイナンスなども理解させ、MBA的なものも加える。

ケーススタディも研究させる、例としてNASAの事故(データベースでの説明が悪かった、リスク分散手法もある)、経営と技術倫理など。

 ・ プロジェクトマネジメントを徹底的に議論させる。(まず手術、そのあと治療。コア  技術の前の問題)V字回復させた例(自動車部品メーカー)

 ・ 事業計画書〔ビジネスプラン〕を評価させる。著作権、守秘義務をどうするのかなど具体例を取り上げて研修する構想を持っているが、まだ取り上げていない。考え抜く力を養成することである。

 ・ 天然ガス国家プロジュエクトのリーダーの養成、ベンチャー企業〔健康器具〕を立ち上げるなどをテーマに討議させる。

・ 超小型の**開発:〔有期のプロジュエクト〕

 ・ 東京地区に進出のため、東京校開講の予定もある。 

  社内研修依頼もある。例として.東京都下水道局、技術分野別〔ナノテクMOT〕幹部向けなど。

講演の後、多くの質疑があり、環境研究会としては異色のテーマであったが、会員外からも多くの参加者があり、盛会裡に終了した。

(山本泰三、赤根晴雄 記) 


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