環境保護 先進未来都市イメージ

著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 槇村 久子  /  講演日: 2009年07月23日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

【環境研究会第44回特別講演会】 ★ 090723

日 時:平成21723日(木)

 

テーマ:環境保護先進未来都市イメージ

講演者: 槇村久子 京都女子大学現代社会学部教授、技術士(建設、環境、総合技術監理)
                  農学博士、地球環境関西フォーラム・循環型社会技術部会長など多数の公職

 

1.0HASについて(新しいライフスタイルに向けて)

(1) LOHAS(Lifestyles Of Health And Sustainability)とは何か?

アメリカ生まれのロハスの社会的背景

①第三の社会集団として、ロハス志向を持った生活創造者の存在
②全米の成人26%、欧州連合の35%、世界で13000万人

(2) 生活創造者「カルチュラル・クリエイティブ」とは

①持続可能な地球環境や経済システムの実現を願い、そのために行動する
②金銭的、物理的な豊かさを志向せず、社会的成功を最優先しない
③人間関係を大切にし、自己実現に力を入れる
④なるべく薬に頼らず、健康的な食生活や代替医療による予防医学に関心がある

(3) ロハスビジネスの拡大

①自然エネルギー・社会的責任投資(SRI)
②オーガニック食品等

(4) 教育、働き方、生き方へ広がる価値租の変化

①企業の社会的責任(CSR)の考え方
②「社会的、倫理的責任について評判の良い組織で働くなら、給料が下がってかまわない」

 (5) ロハスの6つのキーワード

①健康的な暮らし
②自然環境への配慮
③五感を磨く
④古いものと新しいもの
⑤つながりを意識する
⑥持続可能な経済

2.地球時代ライフデザイン

(1) いきいき生きる

①社会変化の中で主体的に生きる
②自己決定権と選択の可能性
③モデルのない時代・両面性の時代
④自分のライフスタイル

これらが地球環境を決めていく

(2) 私たちはどんな環境に生きているのか

①少子・高齢・人口減少化、家族形態の多様化、経済のグローバル化と、情報化に伴う社会の変化、地域社会の変化。そして、地球環境問題の拡大。

②自分が属する社会の構成員としての権利と責任一自己決定と市民参加の必要性

(3) 自分のライフデザインは

①毎日24時間、人生90年の中で、『私と家庭(家族)』、『私と職場(仕事)』、『私と地域(社会)』をどう創るか

②多様な時間のリズムの中での継続性
○地球時間 :46億年-1000
○歴史的時間:100年-数100
○人問の人生:50年-100年 → 技術・科学の進化、超スピード

③様々な場での関係性の見直しと再編が必要

(4) ライフスタイルを変える大きな波

①危機こそ絶好のチャンス、本当に豊かな社会を創る
②産業構造-価値観を変える
③時間経過そのものに価値が置かれる社会へ

3.環境デザイン

(1) 環境デザインを考えるための4つのターゲット層
  ①子供を育てるため
  ②共働き夫婦のため
  ③リタイア世代のため
  ④高齢者のため

(2) 子育てと共働きのための環境
・子どもを育てる

①自分のアイデンティティの原点
②土地の記憶や人間の歴史が蓄積された場
③安全、自然環境

・社会の生産の重要な支え手を支えること
①都心居住
②快適に過ごせる共有空間

(3) リタイア世代と高齢者に求められる環境

・海外派、都心派と農村派
①いずれも地域コミュニティとどうかかわるかが課題

・都心居住では
①公共交通、病院、デパート、美術館など文化施設、福祉サービスの集中など
②移動が可能な、ゆっくり時間を過ごせる空間が求められる。

(4) 環境デザインとは

少子高齢人口減少化、地球温暖化の進行等、私たちの生活空間を取り巻く状況は、大きく変わりつつある。美しい環境と豊かな生活を両立、更に持続的な発展をも実現するためのデザインが求められる。

(5) 都市に森を創る

「尼崎21世紀の森構想」と尼崎の森中央緑地など森と水と人が共生する環境創造のまちづくりが、企業の環境保全への取り組みも含め各地で進んでいることを事例、写真で紹介。

(6) 新しいライフスタイルと地域環境づくり

・都市再生と都市居住の再発見

・地域の自然、歴史、文化資産
①歴史を活かしたまちつくりなどを写真で紹介。
②また、各国の自然との係りを生かした墓地作りについて写真で紹介

4.ストックホルムの先進環境未来都市(ハマビィ・ショスタッド)創り事業の紹介

・都市の中心地に近いが、元々廃棄物や廃棄物処理場等で汚れた利用度の低い場所を、水辺なども利用して約10年かけて再生し、居住空間を創出した。コンセプトは環境負荷を2分の1にすることであり、計画段階で、徹底的に議論し、構想を纏めた。

・例えば、居住開始当時、1世帯あたり2台の自家用車を保有していたが、トラムやバスなど公共交通網の整備等で、自家用車は1世帯あたり0.3台で済むようになった。

・建物の設備も負荷を抑えるため、基準を決めて義務付けをしたため、建物のコストは2~4%高くなるが、住民には快適で大変好評である。

 ・下水処理場の水はビル等の地域冷房にも使用し、発生するバイオガスは家庭用のガスとして供給利用している。

 ・水の利用についても200/人・日から100/人・日に半減させる取り組みを続けている。

 ・また、自然植生に配慮した道・環境創りなども重要視している。

 ・2007年にはサステイナブルシティとして世界建設部門での賞を獲得した。

Q&A

Q:スウェーデン都市開発についての住民の意見は?

→コンペでデベロッパーが計画し、住民の意見は事業者が吸い上げている。(行政は関与せず)

Q:岸和田・泉大津で十数年前に埋立地での街作りの計画があったが、街作りには多額のお金がかかる。ストックホルムではどう対応したか。

→街作りは4社のデベロッパーが対応。補助金は下水道の整備等。日本では複合施設が建設されるが、ストックホルムでは、日常品を売っているマーケット程度しかない。

Q:少子高齢化について、以前から関心を持っていたが、なかなか行政は動かない。又日本では既に住民が住んでいることから道路計画が進まない。

→選挙の投票率が低い日本の市民はおかしいと言われる。スウェーデンでは8590%と市民の意思表示がある。マニフェストやロビー活動等、技術士会もパワーになると思う。

コメント

槇村先生は行動力が高く、多くの事例に基づくご発表の後活発な意見交換があった。
11月に予定されている日中科学交流大阪シンポジウムで、基調講演をされる予定である。

      (監修:槇村久子先生  作成 山崎洋右、山本泰三)


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