機関誌「環境管理」編集に携わって
著者: 山崎 洋右、山本 泰三 講演者: 浜野 昌弘 / 講演日: 2009年09月24日 / カテゴリ: 講演会 / 更新日時: 2012年08月17日
【環境研究会 第45回特別講演会】 ★ 090924
日 時:平成21年9月24日(木)
テーマ 機関誌「環境管理」編集に携わって
講演者: 社団法人 産業環境管理協会 環境管理部門業務アドバイザー 浜野 昌弘 氏
神戸大学経営学部卒、㈱神戸製鋼所に入社し、企画、調査等を担当。2000年に(社)産業環境管理協会に出向して機関誌「環境管理」、「環境関連書籍」の編集企画で活躍。
1.産業環境管理協会について
1962年設立。当初の産業公害対策、公害防止管理者国家試験業務から、環境マネジメントシステム審査員評価登録、LCA、エコリーフ、エコプロダクツ展、化学物質管理等業容を拡大。スタッフは約100名。会員向けに機関誌「環境管理」を毎月発行している。
2.今日の環境問題
地球温暖化防止対策、資源・エネルギー問題、化学物質管理問題等多くの課題が国際的な広がりを見せている。「環境管理」の編集に当たっては①会員ニーズへの対応 ②全方位・多面的・タイムリー性 ③先見性と専門性を重視している。2009年の主要記事は以下のとおり。
(1)総論、地球環境問題:「ポスト京都~COP15コペンハーゲンに向けて」
(2)環境政策:経済産業省、環境省等4省の環境政策の紹介,環境・循環型社会白書の概要紹介のほか、環境法の解説記事もシリーズで取り上げている。
(3)環境マネジメント、環境アセスメント:「環境会計の新展開」、「生物多様性と企業経営」のほか、「実践マテリアルフローコスト会計」シリーズがある。
(4)公害・エネルギー:「水ビジネス」、「『改正土壌汚染対策法』ポイントその対応」、「化審法改正/化管法見直しとその対応」、「飛躍する“太陽光発電産業”」を取り上げた。
(5)海外情報、企業情報:「BRICs の環境事情」大手企業の「グループ環境経営」を紹介している。
3.対談とそのキーワード(2001年~08年)
新年号等で茅陽一東大名誉教授、米倉誠一郎一橋大学教授、小宮山宏氏前東大総長、西沢潤一東北大学名誉教授、安井至前国連大学副学長など学識経験者と協会のトップとの対談記事を掲載した。
主要キーワードは下記。
(1)20世紀:地球文明のサステイナビリテイが崩れた時代⇒21世紀:回復させる時代
(2)循環型社会:単なる循環ではなく、何らかの拡大が必要。質は勿論、量の面でも拡大が必要。⇒宇宙空間の利用(宇宙発電)なども視野に入る。
(3)21世紀はグローバル・コンペティション、エコベンチャーの時代。環境技術、新エネ、食糧バイオ等。また、公用車をすべてハイブリッドカーに。
(4)2050年には自動車のエネルギー消費量を1/4にする。(ハイブリッドカーのプリウスは1/2)
(5)「独創技術を評価する人を育てる」ことが重要。
(6)京都議定書目標について、わが国はEUの攻勢もあって6%削減とした。京都議定書は参画すると制約が課せられ、批准しないとペナルティがないというおかしなルール。今後は「脱炭素」に向けての長期目標が重要になる。
(7)リコーは企業として2050年ビジョンを作っており、その先見性は素晴らしい。
4.「環境問題」に係ってのコメント
「環境立国宣言」から“グリーン・ニューデイール”へ
①環境立国宣言=環境と両立した企業経営と環境ビジネスのあり方(2003.7)
②「21世紀環境立国戦略」(2007.6)
③「低炭素社会づくり行動計画」(2008.6)
④「未来開拓戦略」(経産省)、「緑の経済と社会の変革」(環境省)(2009.4)
など、一貫して環境問題・技術・政策の重要性の流れがある。
5.課題と展望
(1)課題解決先進国
小宮山宏氏(現三菱総研理事長)の言葉を借りてわが国の取り組み方向について述べる。
①明治維新後の成長は欧米モデルの模倣であった。
②戦後の成長は公害、エネルギー不足という課題を自ら克服・解決した実績を持つ。
③21世紀は自らの意志と能力によって自らの課題を解決する必要がある。
それが、人類の未来を切り開く道だとはっきり意識し、誇りを持って荒野を進むことが重要である。
(2)目指すべき国家像
先進国であることの自覚を持ち、課題解決のための具体的なビジョンを描き、対応する。
(3)ビジョン2050のイメージ
①徹底したリサイクルによる物質循環システムの構築
②エネルギー効率を現在の3倍にする
③自然エネルギーの利用を現在の数倍にする
原子力は過渡的エネルギー(100年)であり、最終的には太陽エネルギー(現在人類使用エネルギーの1万倍)に伴う自然再生エネルギーを大幅に活用する
(4)キーワードとして
①宇宙(かぐや、HTV、宇宙発電)
②海洋(メタンハイドレート)
③東アジア共同体/島国仏教国連合
④産業構造の変革 などがある。
Q&A
Q:なぜ東アジア共同体/島国仏教国連合なのか?
A:日本は資源が無い国。全世界をターゲットに輸出してきた。これからは限られた資源の中でどうやって生きていけるのか。宗教というより、東アジア地域というエリアを対象とした考え。
Q:京都議定書のルールがおかしいのであれば、なぜ日本は脱退しないのか?
A:途上国自身も温暖化問題は重要と認識している。日本は環境技術先進国として世界をリードすべき。25%削減と国際公約をした。
Q:鳩山総理が言う二酸化炭素の25%削減は実現可能か?高速道路の無料化で自動車から発生する二酸化炭素が増えるのではないか。
A:矛盾している面があるが、将来的には原子力や太陽エネルギーで作った電気を使う電気自動車にシフトすれば、それは一つの解であろう。
Q:環境に対する考えが方向転換の時代では?
A:循環型社会では、単に循環しているだけではダメ。量より質的成長が大事。
技術革新とともに産業構造は大きく変わっていくことになるのであろう。
(監修:浜野昌弘 作成 山崎洋右、山本泰三)