地球から宇宙を、宇宙から地球を探る

著者: 宮西 健次 講演者: 向井 苑生、向井 正  /  講演日: 2010年05月14日 /  カテゴリ: 講演会  /  更新日時: 2012年08月17日

 

【環境研究会第49回特別講演会】 ★  100514

日 時:平成22514日(金)

(今回は業務研究会と共催イベントです)

 

第1講演

テーマ宇宙から地球環境を探る~大気中のエアロゾルを通して~

講師:向井 苑生氏  近畿大学理工学部情報学科教授

 

1.宇宙と地球の歴史と大気組成の移り変わり

太陽の誕生が約46億年前。地球の誕生が約45億年前。現在の地球の大気は原始地球の大気の残存ではなく、地殻からわきだしたものから変遷を経ている。主体であった炭酸ガスは海の誕生とともに海に溶け、大気は窒素主体に。海では、33億年ほど前に現れたラン藻類が光合成を開始。発生した酸素と海の鉄分が反応し、コロイドが沈殿化し、海が透明になり、さらに海の生物が増える。大気化した酸素は、さらに、紫外線により成層圏でオゾンになる。地表に紫外線が届かなくなるとともに、植物が海から上陸。大地に根をはり、大地の岩石は砕かれ土に。その後陸生動物が誕生し、人類の誕生は約700万年前。

    

 

2.現在の地球環境問題 ~大気計測の側面から~

現在の社会は、人口増大の中、人類社会の発展、エネルギー資源確保、地球環境の保全のトリレンマに直面している。中でも地球温暖化は産業革命とともに文明社会が排出する炭酸ガスと直結している(大気中の炭酸ガス濃度;1730年ころ280ppm2000370ppm)。現在、標準的な大気組成の計測は、ハワイのマウナロア山で行われている。

3.放射収支モデルと放射強制力

放射収支モデルとは、地球大気・地表(海も陸も)を1つのシステムととらえ、エネルギー収支をとる考え方で、収支が正の場合、温暖化にふれる、と判断する。このモデルでは、各項目(温室効果ガス、オゾン、水蒸気、大気エアロゾル・・・)ごとに、単位量当たりの収支に与える影響度合いの係数を設定し、各項目の絶対量を掛けてその総和をとるが、その係数(W/m2)を放射強制力という。この中で、エアロゾルは、実態量も、その中での人為起源の割合も、放射強制力がどの程度なのかも完全にはわかっていない。演者の研究はその部分の解明である。

4.大気中エアロゾルの測定と、放射強制力の研究

エアロゾルには、放射強制力的にはマイナスの作用となる「日傘効果」と、プラスの作用となる「毛布効果」がある。
エアロゾルは、土壌や海塩由来など、天然由来のものが9割を占め、人為的な由来のものは、1割に過ぎない。しかし、人為由来のものの方が小さく、光の波長にマッチングするため、放射効果でいうと、天然由来と人為由来のものでは同程度の影響になる。世界規模のエアロゾルの地上計測ポイント(NASA/AERONET)は、日本では、白浜、能登、東大阪があり、演者等が管理運営は東大阪の計測を担当している。エアロゾルの分布やその環境に与える影響は、地上計測、衛星計測、計算機シミュレーションを統合してはじめておこなうことができる。ごく最近では、探査衛星である「いぶき」に搭載された、全球的CO2測定を行うGOASTとの組み合わせで、CO2とエアロゾルの同時測定、解析も開始された。

      

 

第2講演

テーマ:地球から宇宙環境を探る

講師:向井 正氏  神戸大学名誉教授

 

1.われわれのいる空間(宇宙から見て)

ドップラーシフトの観測から、すべての天体が遠ざかっていることが判明。宇宙は膨張し続けていることに。また、宇宙の年齢は約135億年であることも判明。われわれの銀河は半径5万光年くらい。中心から3万光年くらいのところにわれわれの太陽系はある。日本地図をわれわれの銀河に当てはめると、われわれの太陽系は秋田県あたりにあり、銀河系全体の大きさからすると、われわれの太陽系は日本全体の4cm2程度の大きさとなる。

         

 

2.太陽系の話

地球の属する太陽系は、太陽の重力の影響のある範囲(太陽から1光年=6万3千天文単位くらいの距離)の球体とみなされる。この界面のあたりに彗星の巣のようなものが予言され、オールトの雲と名付けられているが、存在は実証されていない。惑星が存在するエリアは、この、オールトの雲で囲まれる範囲を東京ドームの大きさとした場合、握りこぶし程度の大きさになる。この、惑星が存在するエリアの外側は、カイバーベルトと呼ばれる、氷でできた天体が無数に散らばっているエリアになっており、冥王星は、このカイバーベルトにある、氷でできた天体のうちのひとつとみなされている。現在人類にとっては、このカイバーベルトから外の部分は、ほとんど未知の領域である。

カイバーベルトの内側に目を向けると、惑星は、火星までの地球型の小さい惑星と、木星から外側の、大きなガス惑星の2種類に区別できる。惑星形成時、木星から外側のエリアでは、氷が残っており、火星と木星を隔てる概念的な境界線としてスノーラインが定義できる。さて、液体の水が存在する天体は地球以外にあるのだろうか?その答えとして、木星の第二衛星であるエウロパの存在がクロースアップされる。

この星には、表面の氷の層に縞模様が確認されており、これは氷の裂け目ではないかと考えられる。この内部には液体の水の存在も推測される。推測される水の滞留層は、277K程度と見られ、有機物があれば・・・という期待がもたれる。

3.地球型惑星の発見を目指して

1995年に太陽系外で初めての惑星が見つかって以来、現在までに400個ほどの太陽系外惑星が発見された。これも、ドップラーシフトを利用して発見される。恒星と惑星の系の重心に対する恒星の運動からみつけるので、当然、小さい惑星は発見しにくい。地球型惑星の発見には、高精度の計測が必要である。現在までに発見されている系外惑星は、100光年程度離れたところで発見されることが多い。その程度の距離のところに、仮に地球型惑星があり、知的生命体の存在があったとしても、われわれがコンタクトするには、時間的な壁も存在する。今から送った信号が光速で伝わって、その信号に対する返答が返ってくるとしても200年後になり、人類の寿命より長くかかってしまう。また、恒星の生まれた時期には差があるので、その恒星の周囲に地球型惑星があったとしても、知的生命体が進化するまでの時間があったか、という問題もある。そのような時空の壁を越えて、知的生命体の存在する地球型惑星をみつけるための探索は続く。

    

コメント

向井ご夫妻のご講演後の質疑では、内容がワクワクするようで、大変楽しかったという意見などがあり、参加者は有意義な時間が過ごせ、満足感があった。

                (図は講演資料から転載)

                   監修:向井苑生、向井正 作成:宮西健次


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