工場エアの省エネシリーズ 第1回:心臓とコンプレッサの違い

著者: 岩佐 昌哉  /  講演者: カテゴリ: 省エネ技術  /  更新日時: 2008年11月04日

工場エアの省エネシリーズ【1】

【第1回:心臓とコンプレッサの違い】

岩佐 昌哉です。
工場エアの省エネ・コンサルと、エコアクション 21 の審査人をやっています。工場エアのコンサルとして私の講演の受講者は全国で延べ 6,000 名を超えます。
「工場エアの省エネ、7回シリーズ」をスタートします。

第1回目としては、「工場エアとヒトとの対比」ということで、工場エアは、ヒトとえらく違う部分とよく似ているところがあるな、と日頃考えていることから話し始めます。

第1回の目次:
1. 製造工場における「ユーティリティ」とは何か?
2. 「工場エア」とは何か?
3. 心臓とコンプレッサの違いは何か?

1. 製造工場における「ユーティリティ」とは何か?

 モノ作りをする、いわゆる製造工場では「ユーティティ」と呼ばれるものが必須です。携帯電話を作ろうとすると、プラスチック・鉄・アルミ・塗料等々「原材料」や「部品」などを仕入れて、加工および組立を行い出荷します。

 それ以外に、電気・水・蒸気・エア(圧縮空気)など「ユーティテイ」が必要です。ユーティリティは、ヒトのからだに例えると「血液」です。血液なくしてヒトが機能しえないように、ユーティリティなくして製造工場は全く機能しません。

 ユーティリティは出荷される製品にくっついていくものではなく、モノ作りの過程でエネルギーとして消費されるだけです。省エネによる CO 2 の削減が求められる分野です。これらのユーティリティのうち、「工場エア(圧縮空気)」が私の専門分野です。

2. 「工場エア」とは何か?

 ヒトのからだにおいて、血液を送り出すのは心臓であり、いわば血液ポンプです。血液ポンプが停まれば、臓器や手足に血液が行かず人体の機能が停まり、ヒトは死にます。

 製造工場でのエアは、その供給源である「コンプレッサ(空気圧縮機)」が停まれば、生産ができなくなり工場は死にます。

 ヒトでの血管に相当する「エア配管」が工場内に張り巡らせられ、エアを各装置・機械に供給し、モノ作りの機能を果たします。コンプレッサの場合、ふつう予備機を含む複数台を持ちますから、心臓の予備を持つようなもので、ヒトより有利です。

3. 心臓とコンプレッサの違いは?

 心臓は「流量一定制御」です。すなわち「ヒトはある一定流量の血液が流れなければならず、それは心臓から必ず供給するという制御」を行います。血管の内面にコレステロールが溜まり、血管が細くなり血液が流れにくくなり、足先への血流が悪くなることがあります。制御をつかさどる脳は、心臓に「血液の流量を上げろ!」という指令を出します。足先に血流がよみがえります。反面、流量が増えたために全身で圧力(血圧)が上がり、細い脳の血管が圧力に耐えきれずに破れることがあります。

 コンプレッサは「圧力一定制御」です。ヒトが圧力を設定(例: 0.6MPa )しますと、コンプレッサは設定圧力を維持しようとがんばります。(現実には維持は困難で、圧力は変動します。)血管に相当する「配管」の内面には、コレステロールに相当するもの、すなわちオイル分(油分)・ダスト(ほこり)・錆の堆積により内径が小さくなり、圧力損失(圧損)が発生し、下流にいくにつれて圧力が落ちていきます。工場現場のエアを使う装置では圧損の増大により以前よりも圧力が下がり、装置が動きにくくなり、モノ作りに支障を来す現象に至ります。 


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