壊滅した市街と消滅の町

著者: 渡邉 拓也 講演者:  /  カテゴリ: 東北地区  /  更新日時: 2012年04月24日

 

環境研究会 東北研修旅行 参加者報告

日 時:平成2432021
場 所:宮城県

壊滅した市街と消滅の町

技術士  渡邉 拓也 (建設、総合技術監理部門)

 

日本技術士会近畿本部環境研究会による平成24年度東北研修旅行の第一日目、320日午後、一行25名は石巻市を訪れた。
私はそこで第2班の女川班(18名)に参加、石巻漁港を臨む国道398号線を湾岸沿いに北上し、一路女川町を目指した。
 

復興はほど遠い再訪問の印象

東日本大震災後、私にとって石巻市訪問は二回目となる。
一回目は昨年8月上旬、財団法人 兵庫県園芸公園協会の職員や、私も含めた県認定の園芸活動家 “ひょうごガーデンマイスター”有志数名と当地へ、トラックやワゴン車で園芸資材を満載して来たのであった。

暑いさ中、私達は市内を走る三陸自動車道の内陸側にある社会福祉法人「石巻祥心会」を訪れた。ここは知恵遅れの方々を教育する施設で、すでに施設内には被災した関係者の仮設住宅が何棟もあり、私達ボランティアは持参した花苗などの資材を使って、住人に園芸プランタへの飾花などの指導やアドバイスを行った。

    説明: 社長石巻市 019.jpg  

国道398号線の中央分離帯。地元園芸団体による花壇に花は無く、荒涼として寂しい。
はるか向こうに巨大な「鯨大和煮」缶が無残に横たわる(石巻市内)

その後、石巻漁港周辺へ移動し、津波の爪跡を見た。道中、海水をかぶり茶色く枯れた高木スギ、ヒノキなどの屋敷林、無残になぎ倒された河川堤防敷の松林、広大な遺体安置所跡地、なおざりにされたままの、河口周辺に沈みかけた自動車の数々など生々しい光景が展開された。

そして港湾で停止したままになっているコンビナート設備を前に、案内人が「あの一番上てっぺんまで高さ15mの波が来たのよ」と指さした先を見て、私は思わず息をのんだ。 

被災荒地に再生希望の花壇づくり

私達女川班を乗せた小型バスは、丁度あの時のコンビナート施設を右手に見て、国道を走行した。昨年の夏以来、周辺の風景はほとんど復興しておらず、いっそう私の記憶は痛々しく脳裏によみがえった。

国道の左手、内陸部は傷んだ家屋が吹きさらしのまま、広々とした荒地にポツリポツリと残されている。住民はほとんど見当たらず生活感もなく、うち捨てられている印象が強い。まさに壊滅した市街なのだ。

国道の中央分離帯や路側帯に恐らくふんだんにあった立派なマツの群落は、海水でなぎ倒されて枯れたのであろう、根元から酷く皆ブツ切りにされていた。
その跡地に地元の園芸団体が、ささやかに花苗を植え速成の花壇としていた。再生への希望であろう。恐らく潮水をかぶった土は、雨水で浄化されるのに一年以上かかるはずで、園芸植物の満足な成長は見込めまい。こうした広大な荒地には、私の造園会社独自の“ワイルドフラワー緑化工法”が有効ではないか。
この造園工法は草花種子を二十数種類混合して春か秋に一度に播いて、市街地周辺にやがて花畑をつくるもので、雨水だけで育ち開花する利点がある。しかし塩気のある土壌で発芽生育するのだろうか。

私は漠然とそんなことを考えていると、突然目の前に、地元の缶詰会社の看板用の巨大な缶カラが、へこんでゴロリと中央分離帯に捨て置かれている光景が飛び込んで来た。映画に出てきそうなグロテスクな姿だ。 

消滅した町の無残さに立ち尽くす

バスは小一時間ばかりかけて、ようやく女川町市街の中心部に着いた。ここは入り江の漁港の町で、港を見下ろす高台に町営の病院が姿を残して建っている。
この高台からパノラマビューで見渡す女川町の風景は、本当に衝撃的だった。高さ17m級の津波が襲ったとされる中心市街は、この四階建て病院の一階部分まで水没したという。

沿岸にはゴロンと横倒しのままのビルが三棟“ころがって”おり、うち一棟は三階建てで、屋上が地面に垂直に立ち上がっている。なぜ取り壊し撤去しないのか案内者である岩渕善弘㈱復建技術コンサルタント顧問にたずねると、「世界遺産への登録を目指そう」という声があるとか。

   説明: 社長石巻市 031.jpg  大津波に押し流され、横倒しになったままの三階建てビル(女川町) 

津波が押し寄せた海水面よりたまたま上にあった住宅などの建物は残ったままで、山々の中腹にくっきりその爪跡のラインが残されている。そのラインから下の土地はがれきも撤去され、見渡す限り荒涼とした寒々しいばかりの更地に化していた。この町は壊滅ではなく、まさに消滅してしまったのだ。言葉さえ失う、ただ茫然と立ち尽くす、そんな光景であった。

   説明: 社長石巻市 029.jpg    女川町の市街は3.11で“消滅”した。


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