東日本大震災と事業継続(リスク管理)について

著者: 竹内 修治 講演者:  /  カテゴリ: 東北地区  /  更新日時: 2012年04月25日

 

環境研究会 東北研修旅行 参加者報告

日 時:平成2432021
場 所:宮城県

東日本大震災と事業継続(リスク管理)について

竹内修治  技術士(建設部門)

はじめに

平成23年度 公益社団法人 日本技術士会近畿本部 環境研究会主催の研修旅行として、平成24320日と21日に宮城県を訪問し、東日本大震災の被災状況を肌で感じることができた。東日本大震災で失われた2万人近い人々の命に心から追悼を申し上げると共に、避難生活を強いられている方々に心からお見舞い申し上げます。

今回は、東北地方の限定された地域の視察であり、東日本大震災の全体について言及するものではありませんが、技術士としてこの大震災から何を学び今後どのように活かしていくべきか、事業継続(リスク管理)の観点から三つの事例について感じたところを述べ

 

事例1 石巻市経由女川町の復旧・復興

仙台市から石巻市経由で女川町へとバスで移動したが、海岸地域の市街地のほとんどは地震と津波で被災され、ガレキの処理が進められており、復旧・復興はまさにこれからと感じられた。街に灯りが点いている所を見るとホッとする状況であった。女川町では漁市場の再開が進められているとの説明を聞き、復旧・復興の第一歩が始まっていると心強く感じた。復旧・復興はハード面とソフト面が一体となって進められなければならないが、身近な生活基盤の整備も早急に求められている。

今回の大震災に対して、東北地方の企業で事業継続マネジメントシステム(BCMS)や事業継続計画(BCP)に取組んでいた企業がいち早く復旧に立ち上がり、効果を発揮していることが報告されている(第38回技術士全国大会参照)。ただし、多くの企業においてリスクの想定及びサプライチェーンの視点について課題を残しているが、企業の事業継続により、雇用を守り社会の復旧・復興に寄与しており、事業継続に対する取組みが必要であると感じた。

 

事例2 東北電力株式会社女川原子力発電所の取組み

女川原子力発電所の計画時、原子炉は敷地高さ13.8m(地震前14.8m)に設置されており、発電所の軽微な損傷はあったが致命的な損傷を免れている。これは、東北電力株式会社での検討委員会において敷地高さを検討するにあたって、貞観地震(869)等の過去の実績をもとに定められたとのことである。先人の経験・知識・知恵が活かされたと言える。リスク管理は、従来、過去の事象からリスク要因を抽出し、今起きている事象はそのどれに相当するかという同定作業を行ってきているが、常に新たなシナリオを想定しリスクを発見し続けることが大切である。

リスク管理において、新たなリスクを想定するにあたって科学的な裏付けが必要であるが、リスクマネジメントも有効な手段となり得ると思われる。さらに、技術の信頼を取り戻するためには、技術革新とともにさらに広く文化に根差した視点が必要である。

 

事例3 多賀城市のリスク管理

多賀城は724年創建され、貞観地震(869)により被災し再興されている。1143年前のことである。一方、明治・昭和における津波による被害は軽微であったとのことである。過去の津波に対して共有できる社会通念をいかに確立していくかが課題と思われる。今回の災害に対して、多賀城市は記録を整備し民に向けての情報伝達網を構築し、減災への情報の共有化に取組まれている。

多賀城市のガレキ処理については、他都市ではガレキ処理が進展しないなか、山形県米沢市で受け入れ先として推進されている。これは職員の日頃のコミュニケーションによって米沢市とコンタクトが出来た結果との説明があった。リスク管理の手段は日常の中にもあると感じた。

以上


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